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【書籍化&コミカライズ】地味姫と黒猫の、円満な婚約破棄  作者: 真弓りの


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どうしましょう……緊張するわ

ヴィーに褒めて貰ってとっても元気がでたわたくしは、昨日、今日の二日間、また疲労回復魔法に集中的にとりくんでいる。


だって次にヴィーに会えるのは、お休みである無の曜日の夜になるのですもの。それまでに疲労回復魔法は完璧にしておきたい。


それにこの魔術で色々と試すことで、今後習う筈の防護壁の魔術だけでなく、他の攻撃魔術にも転用できるアイディアが生れる可能性があることも分ったから。


なにより、無の曜日はヘリオス殿下とお出かけする日でもある。魔術の鍛錬にでも集中しないと、あれこれ考えて緊張したり気恥ずかしくなってしまったりで、落ち着かなくて仕方が無い。


もう明日に迫ってしまったお出かけを前に、わたくしの心臓は情けないくらいにぴょこぴょこと不規則に跳ねてしまっている。


何をお話すればいいのかしらとか、用意した服は街を歩くに華美すぎず、歌劇に行くに地味すぎず、適切なものを選べているだろうかとか、考えすぎても正解が分らないことばかりが頭をよぎってちっとも落ち着かない。


そんな中でも疲労回復の魔術が切れなくなったことはある意味成果かも知れないけれど。


どうしましょう……緊張するわ。


無意識に指を組んだり離したり、気がつくと無駄な動きばかりしてしまっている自分に苦笑する。


頭を切り替えて、少しでも魔術の訓練に集中しないと。わたくしは手元のノートをパラパラとめくる。


ええと……そうだわ。これが気になっていたんだった。


疲労回復の魔術は、指南書によると効果を持続させながら体の一部だけに特に魔術を集中させることもできるのよね。


全身の疲れも癒しつつ、筋肉痛だとか肩こりだとか体の一部が特に疲労している時に、集中して治療するための技術ではないかしら。この技術はきっと、防護壁の時にも役に立つのではないかと思う。


攻撃を受けそうな一部分だけを強化できるなら、魔力も温存できて一石二鳥ですもの。


ええと……患部に力が集中するように、ですって。そのイメージが難しいならば、水が堰き止められるようなイメージでも可、とも書いてある。やっぱり魔術は術者のイメージ力がかなり重要なのだわ。


でも、肩の辺りに魔力を堰き止めるイメージも力が集中するイメージも試してみたけれど、今ひとつ瞬発力に欠ける気がして、わたくしは少し困ってしまった。


もちろん疲労回復ならば、瞬発力など必要ない。けれども防護壁を視野に入れると話は別だ。



「……」



考えて考えて、結局わたくしはため息をついて目を閉じた。


思い浮かばない……。


やっぱり、明日のことがどこか頭にあるみたいで、気がそぞろになってしまっているのかも。集中力が取り柄だと思っていたけれど、こんなになんにも浮かんでこないなんて。


今日はきっと無理だわ……。


結局その日は妙案も浮かばなくて、自分の精神力の弱さを思い知った一日になってしまった。



***




そして翌朝。


今日はいよいよヘリオス殿下と一緒にお出かけする日。


目覚めはいつも通りとっても爽やかだったけれど、起きてしまえば早くも心臓がドキドキし始めた。


これだけ緊張していれば、これまでだったらきっと眠れなかったのだろうけれど、今のわたくしには睡眠不足など無縁なのがありがたい。


寝る前に全魔力を注いで疲労回復魔法をかけるだけ。


体の疲れはスッキリとれてそのまま昏倒するのだから、寝つきが悪いなんてことすらありえない。おかげで目の下にくま、肌荒れもすごい、なんて悲しい状況でお出かけする、なんてことにならずに済むのが助かる。



「セレン様は近頃、本当にお肌も髪もぷるんぷるんのツヤツヤになりましたねぇ」



侍女のリンスが髪をとかしながら嬉しそうに褒めてくれた。確かに自分でも肌艶がよくなったと思う。


ヴィーから昏倒する方法を教わってからまだ十日ほどしか経っていないと思うけれど、それでもわたくしの肌や髪には如実に効果が現れている。地味な色合いはどうしようもないけれど、わたくし史上、今が一番状態がいい。



「やっぱりたくさん寝ているからかしら」


「妃教育が一段落ついて、セレン様もようやく寝る時間が確保出来たのですね。本当に良かった」


「……あら」



いつもはきっちりと巻き上げあげてしまうのに、なぜだかリンスは両サイドの髪を編み込んで後ろで纏めただけで、あとはふんわりとしたウェーブのまま背中に垂らす。



「今日は巻き上げないのかしら」


「ええ。いつもはセレン様が勉学に集中したいと仰るからひっつめておりますが、今日はデートですもの!」


「で、デート……」



そう言われるとそうなのかもしれないけれど、急に恥ずかしくなるような。



「髪もこんなに艶やかになったでしょう? 髪はふんわり可愛く揺れるように、そしてお肌の透明感を失わないように薄めにお化粧を施しておりますわ! 唇はプルンとした艶感と華やかさはあれど、清純さを損なわないチェリー。もちろん色落ちなどいたしませんのでお食事なども安心してくださいませ」


「あ、ありがとう……」


「最高にお綺麗です! 可憐で清純です! セレン様の侍女で良かった! セレン様、自信を持ってデートに挑んでくださいまし!」



リンスがわたくしを鼓舞するように、全力で褒めてくれる。


優しい侍女に恵まれてわたくしは幸せ者だ。リンスの努力が無駄にならないよう、わたくし、精一杯今日を楽しんでくるわ……!

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[一言] 見える…見えるぞ可愛くなった主人公を適当な褒め方をしてまた無意識のうちに主人公の自己評価を下げるヘタレ殿下の姿が…! 殿下は側近が馬鹿すぎてある意味可愛そうですけど不憫ではないですね。自分の…
[気になる点] ヘリオスのヘタレがひどい ただの青少年なら応援もしたけど、立場ある身ではダメですな 妻と側近という、一番に掌握して然るべしな身内相手にこの有り様ではねえ 側近に気を使うとか穏便とか、逆…
[一言] 不器用なヘリオス殿下に頑張ってほしいです。 だって、初っ端にやらかしたアレも、馬鹿な側近共を刺激しないように適当に合わせたように見えますもん。それで挽回も出来ずに、大好きな彼女に逃げられると…
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