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【書籍化&コミカライズ】地味姫と黒猫の、円満な婚約破棄  作者: 真弓りの


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いよいよこの日が来たんだわ

いよいよ……この日が来たんだわ。


煌びやかな夜会の会場で、わたくしはしゃんと背筋を伸ばす。


いつもよりも明るい色調の若草色のドレスは、しっとりとした艶が美しいマーメイドライン。そしてその上にはふわふわとした白いレースが舞っていて、ウエストに可憐な生花もあしらってある可愛らしさや快活さを感じさせる、これまでにないドレスだ。


髪も緩やかなウェーヴでいつもよりもボリュームをもたせ生花を編み込んで華やかに仕上げてある。リンスが言うにはメイクもオレンジを基調にした顔が明るく見えるものらしい。「パールも盛っておきました!」と楽しそうに言っていたから、きっと肌が綺麗に見えるようにと気遣ってくれたのだと思う。


これは、わたくしなりの決意を表す装いだった。


わたくし自身が派手な装いが苦手だったこともあるけれど、夜会の主催者や主だった方たちよりも目立たないように、わたくし自身よりもお父様が見つけてくる美しい素材に目がいくようにと、これまではいつも大人しく控え目に仕上げてきた。


けれど、今日はわたくしが「変わった」事を知らしめる必要がある。


わたくしが公爵家から離脱して特級魔術師になること、ヘリオス殿下の婚約者ではなくなることが、この夜会で発表されるのだ。


主だった貴族達には本日の夜会で、そして明朝には国の内外に広くこのことが発表される手筈になっているらしい。


魔獣討伐の時にわたくしに勇気をくれた、若草色の冒険服。


あの軽やかな気持ちを纏いたくて、今日は若草色のドレスをチョイスした。これまでのわたくしらしい、シンプルなマーメイドラインのドレス。けれどそれにレースと生花をあしらえば、ぐっと華やかな印象になる。


もうヘリオス殿下の夜会服には馴染まないかも知れないけれど、それで良かった。


夜会の始まりを告げるように、楽隊が緩やかに音楽を奏で始める。


それに合わせるようにヘリオス殿下がダンスフロアの中央にゆっくりと歩を進めた。わたくしもそれに倣ってフロアへと踏み出す。二人の距離が少しずつ近づくほどに楽隊が奏でる音も音量を増していく。


手を伸ばせば届く距離に近づく頃には周囲のざわめきも消えて、楽隊が奏でる音楽だけが鮮明になっていた。


本日はヘリオス殿下が主催を務める初めての夜会。


男性であるヘリオス殿下が、しかも単独で主催を務めるのは近年では珍しい事で、周囲も先ほどまではその噂話で持ちきりだった。主催であるヘリオス殿下とわたくしが最初のダンスを踊り終えたら発表の時間だ。


これが婚約者だったわたくし達のラストダンスとなる。そう思うと感慨深い。


目前に迫ったヘリオス殿下が乞うように右手を差し伸べてくれた。いつ見てもお手本のように優美で洗練された動きだわ。それに応えることが出来るよう、わたくしも出来るだけ淑やかに、優雅に見える動きで誘いを受けた。


微笑みあって、しばらくは互いに無言のままステップを踏む。


音楽とステップが混ざり合い、自然と周囲の注目も気にならなくなった頃、頭上から囁くような声が降ってきた。



「当然のようにセレンと踊れるのは、これが最後なんだな」


「……ふふ、そうですね。これからは争奪戦のお相手で大変かも。これまでもヘリオス殿下と踊りたい令嬢達が引きも切らなかったのですもの」



そう言って笑いながら見上げれば、苦笑するヘリオス殿下と目が合った。見慣れてもなお華やかで美しい金色の髪、澄んだ紫の瞳。この精悍なお顔をこんなにも近くで見ることはきっともうないだろう。


微笑んだまま、わたくしは進行方向へと目線を戻した。



「その……セレン」



目線を外して数秒で、またヘリオス殿下が小さく声をかけてくれる。これが最後と分かっているだけに、ヘリオス殿下もわたくしを気遣ってくれているのかも知れない。



「はい?」


「今さらこんなこと、言うべきではないのかも知れないが」



そこまで言って、ヘリオス殿下は困ったように口を閉じる。わたくしはただ黙ってヘリオス殿下を見上げていた。あえて聞き返したりはしない。わたくしだって、言うか言うまいか迷うことなんていくらもあるのですもの。微笑んで、ヘリオス殿下の口元あたりにさりげなく目線を落とす。


しばらくそのまま身を寄せ合ってステップを踏めば、頭上で小さく息をつく音が漏れた。



「……いや、やめておこう」



見上げたら、ヘリオス殿下はわたくしを見ながら困ったような笑みを浮かべていた。


ヘリオス殿下のためにと思ってとった行動は、結局はわたくしが先走ってしまっただけだった。それが分かっても、今のわたくしはもう、何もなかったように婚約者の位置に戻る事なんてできない。


わたくしが勝手にあんな行動をとった事も、相談すらしなかった事も……きっとヘリオス殿下だってわたくしに言いたいことがたくさんあったに違いない。それをこうして飲み込んでしまうのが、なんともヘリオス殿下らしいと思った。



「……ごめんなさい」


「なぜ謝るんだ」



本当に困ったようにヘリオス殿下が笑う。わたくしも、何に対して謝ったのかは定かではなかった。

さすがに話が長くなりすぎるなーと思って、思い切って切れるところをバスっと切ったら驚かれてしまった(笑)

ちなみに切ったのは本試験とマリエッタ視点とサロンのアレコレとおやつタイムです…。


「この時の、誰視点が読みたかった!」というのがあれば、感想欄にでも書いておいてください!


そのうちSSとしてアップするかもですよ(^^)


あっ、今日はコミカライズも更新されてます!

めっちゃ可愛いからぜひ読んで♡♡♡

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 本試験の描写がないから読み飛ばしたかと思ってしまいました。数行でいいから欲しかったなーチラッ なんにせよどうやら無事合格できている様子なので良かったです!
[良い点] 婚約者としての最後のお仕事。セレンが選んだ勝負服が、魔獣討伐できていた冒険服の色というのが素敵です。 これまで彼女が好み、一番似合うであろうシンプルなマーメイドラインのドレスが、「年齢の割…
[一言] サレン...元々思い切ってそれくらい着ておけば(´;ω;`) 読んできた感じ元々自分で行動できるんで出来たとは思うんですよね〜 殿下はしばらくは女に興味なくなりそうw どうせはじめ来るのは『…
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