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夢見がち令嬢と狼の牙  作者: 松原水仙


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真の目的


 エドワードはここに来た最大の目的を果たした。




 聖女という存在がいる限り、ソフィーは心穏やかに暮らすことができない。何より、ソフィーに毒を盛ったこと、万死に値する。


 しかし、聖女というのは厄介だった。


 偽者の聖女だと指摘しても信者は信じないだろうし、下手に処刑をすれば皇室への批判が強まる。


 かといって事故死ではいけない。それでは骨が残ってしまう。聖女の骨は神遺物として信仰の対象となり、教会に力を与える事になりかねない。何よりソフィーを殺しかけた魔女が崇められる等、耐えられない。それは避けねばならない。


 海に落とすことも考えたが、それも駄目だ。再び偽の聖女が現れ、「エレーヌの骨だと神が伝えてきた」とでも言えば、適当な骨を信仰の対象にできてしまう。



 皇室への批判を避けつつ、もうこの世にエレーヌの骨はないと国民全員に信じ込ませる必要があった。


 ベンズル蛇はまさに救世主と言えた。チャーリーに「骨は完全に溶けていた」と言わせればよいのだから。溶けていなくても後でこっそり灰にすればよい。


 聖女を庇って重傷を負ったのも、私は聖女を大事にしていたと国民に思わせる為だ。これで意図的に殺したと疑う者はいないだろう。



 馬鹿な女だ。


 聖女だなどと(のたま)わなければ、骨くらいは残してやったものを。



 ああ、これでやっとソフィーの元へ帰れる。




 隣でチャーリーが残念そうに呟いた。


「彼女、実験に使いたかったのに…。彼女の言葉の虫は誰より強かったから秘密を探り出せたかも。それに彼女が食べていたお肉はこの島で取れた魔物の肉だよ? 食用かどうかいい実験台だったのに…」

「全部美味そうに食べていたぞ。兎肉だと思い込んでいた」


 肉の正体を実際に目で見てみたら卒倒したかもしれない。


 ソースがなければ気づけただろうに…。やはり味付けはシンプルに限るな。


「ベンズル蛇も勿体ないよ。あれだけ大きくなったってことは何百年も生きた証だよ? ベンズル蛇に噛まれると脳や内臓も全部、出血するんだ。あれだけ大きいとやっぱり毒素も幼体より強いのかな? 彼女は丸呑みされたように見えたけど、どっちの方が、苦痛が少ないかな?」


「これから存分に調べればいい」

「そうだね!」


 パッと花が咲いたように笑った。


 結局、こいつは最初から最後まで楽しそうだったな。


 無事にここまで辿り着いたのは、歴代の科学者が独自に島の研究を続けてきたおかげだ。

 変人達は論文の発表すらすることなく、ひたすら研究に没頭し続けている。この島で命を落とした科学者も少なくない。


 命じられた訳でもないのに、好奇心と探求心が危険へと勝手に足を進ませるらしい。



 まったく、科学者ってやつは——。

 狂っているな。




 騎士よりずっと命知らずな彼らに、エドワードは最大の賛辞を贈った。


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