勝利の美酒
主皇ファビアーノは、自身の為に建てた荘厳な教会で、十人の枢機卿と食事をともにしていた。黄金の室内は、壁一面に宗教画が描かれ、シャンデリアとの相性もあってか、とにかく眩しい。
その光に負けず主皇の首には大ぶりのダイヤモンド、カトラリーを持つ手には中指以外、幾重にも指輪が嵌っている。枢機卿も同じようなセンスをしていた。
牛、豚、鴨、雉、サーモン、卵、チーズ、果物。赤白のワインにシャンパン。まるでパーティーかと見紛うばかりの豪華な食事だが、彼らにとってはこれが常だった。
「オスベルの人間は私達が直接攻め込んでくと思っているでしょう」
「ああ。国境に騎士の姿が目立つようになった」
「ご苦労様と言ってやりたいですな」
「はは。本当に。無駄な努力でも努力は努力」
「ここまで想定通りだと少し物足りない気もしますが」
「まさか領地に海のない我々が、船を使ってくるとは思いますまい。港を貸してくれたタズマ国に感謝をせねば」
「オスベル占領の暁には、彼らにも領土を分け与える約束だ。狸のような男だが、まあ便利に使わせてもらおう」
「あれだけの武器があれば、勝利も同然よ」
室内に笑い声が広がる。既に勝利の美酒に酔いしれていた。




