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夢見がち令嬢と狼の牙  作者: 松原水仙


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ジンジャーティーで休憩

 立て続けの晩餐会がやっと終わり、どっと疲れが押し寄せてくる。結婚式用に用意したドレスは二十着。多すぎると思っていたのに、全て着たのだった。




「疲れたー」


 そんなソフィーに用意されていたのは書類の束。オスベル中の団体からの支援依頼だ。


 二百、もっとか…。これに全部目を通して、団体を調べて、承認するか決めて…。


 あ、駄目、脳が拒否しているわ。



「ソフィー、クリームティーの時間だよ」

「テディ!折角だけど、今日は時間が…」

「そんなに根を詰め過ぎないで。休憩で脳を休めないとパフォーマンスが下がってしまうよ。エマ嬢も。今日はここで食べよう」


 ソフィーに与えられた執務室は、机と椅子とソファに本棚があるだけのシンプルな部屋。好きに変えていいと言われているが、時間がなくそのままだ。


 エドワードがベルを鳴らすと、ハリソンが紅茶を運んできた。赤薔薇の柄が映える白い磁器のティーカップは、結婚式用に特注したもの。このカップを見ただけで気分が上がる程、ソフィーのお気に入りだった。


 差し出された紅茶の独特なこの香りは、


「ジンジャー?」

「正解。今日はジンジャーティーだ。疲れから風邪を引かないようにね」


 こういう気遣いが有難い。


「今日はキュウリのサンドイッチも一緒だよ」

「サンドイッチも好き!」

「朝食をあまり食べてなかったってメイド達が心配していたと言うのでね」

「ああ…。朝は少し食欲がなくて…。でも今なら食べられそう」

「良かった。無理はしないで、早めに休むことも大事だから」

「ええ。ありがとう」


 気を遣わせてしまったわ。でも美味しい。こんなに美味しく食べられるってことは、きっと気疲れしていたのね。


 皇后としての公務は大変だけれど、この時間があれば上手く心をコントロールできそう。休憩って大事だわ。



 キュウリのサンドイッチと小ぶりのスコーン二個を食べ終える頃には、公務の細かい計画表を頭に思い浮かべるくらいに回復していた。


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