早い祝杯
エレーヌ達は早くも祝杯をあげている。五十人ほどが集まる中に、エレーヌに票を投じた議員の姿もあった。
細長い長方形の机の上に、使用人がスープを並べていく。
エレーヌは上座の特等席にジェイコブと隣り合って座っている。他の者達は二人を斜めから見るような形で左右に分かれて座った。
高そうなボルドーのワインを飲んだ後、ジェイコブがエレーヌを褒めそやした。
「さすが我が聖女様。圧勝でしたね。スピーチも文句なしに素晴らしかった」
「圧勝だなんて、ソフィー様に失礼よ」
クスクスと笑いながら、思ってもいないことを口にする。
集まった信者達も今日の結果に喜びを隠せない。
「その金のネックレスはエレーヌ様がつけてこそ、輝きを増しますね」
「本当に。可憐さと清純さに加えて威厳まで身につけられて、もはや敵なしですな」
「あの女も相当悔しがっているだろうな。悔し紛れに違う宝石を取っていて、少し可哀そうなくらいだった」
「やだわ、そんなこと言っては駄目よ!ソフィー様だってよく頑張っていたわ」
エレーヌは笑みを絶やさずスープを口に含んだ。
「さすがエレーヌ様。お優しい。この国の皇后に相応しいのは、やはりあなただ」
「聖女様と魔女の戦いなんて、初めから結果が見えていたようなものだ」
「もう二次審査はいらないんじゃないか?」
「足掻くだけ足掻かせてやろうじゃないか。彼女だってもう勝ち目がないことは分かっているだろう」
エレーヌは気持ちよく、スープを平らげた。
ああ。最高の一日だったわ。邪魔なあの女をやっと潰せる。
でも安心してね、ソフィー様。私が皇后になったら、あなたを名ばかりの皇妃にしてあげるわ。私が泣きながら予言して、あなたを塔へ閉じ込めるの。
神道院なんてつまらないところへ送ってくれたお返しは、きちんとしなくてはね。
エレーヌは運ばれて来た子羊にナイフを突き刺した。




