表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢見がち令嬢と狼の牙  作者: 松原水仙


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/88

聖女との顔合わせ

 大広間ではベールを被った聖女が一人椅子に座っている。その周りに侍女と騎士が合わせて十名ほど、聖女を囲んで楽しそうに会話をしていた。




「お待たせしました。聖女様」


 エドワードが声を掛けると、侍女と騎士が一斉に後ろに下がり、頭を垂れた。厚い絨毯が足音を吸収し、気づくのに遅れたようだ。


「遅れて申し訳ありません。何より重要な案件がありまして…」

「いいえ。おかげで彼らと楽しい時間を過ごせましたわ」

「そう言って頂けると、心が軽くなります」


 聖女の声は、まるで鈴のようだった。


 聞き知った声に感じ、なぜか勝手に鳥肌が立った。


 まさか…ね。



「聖女様に、私の愛する后を紹介したい」


「ルキリア国から参りました。グレイヴィル侯爵家長女、ソフィー・グレイヴィルと申します。お目にかかれて光栄です、聖女様」


 たっぷりと時間を取った後、聖女が鈴のような声を響かせる。



()()()お目にかかります。オスベル帝国の聖女、エレーヌ・マクミランです」



 バサッとベールを後ろに流し、聖女が顔を晒す。


 彼女の動作がスローモーションのようにソフィーの目には映った。



 絹のような金髪に、青い瞳、ぷっくりした唇、上気した頬、誰しもを虜にする微笑。



 あの頃のままの美しさをたたえた彼女は、間違いなくソフィーが知っているエレーヌだった。



 驚きから瞠目するばかりで、声も出なかった。



 …エレーヌが、聖女ですって⁉



 驚くソフィーなどお構いなしに、エレーヌはエドワードだけを視界に捉える。


「エドワード様。先日はお茶会にご参加下さり、ありがとうございました!夢のような時間でしたわ。また是非いらしてください」

「ええ。その時はソフィーとともに伺います」

「…そうですわね。ソフィー様も是非」

「…ありがとうございます」


 ぎこちない空気が流れる。まだ状況を呑み込めずにいた。


 エドワードは、ちらりとソフィーを見やり、着席を勧める。


「さ、立ち話もなんですから、食事にしましょう」

「そうですわね。エドワード様が私の為にご用意くださったと伺いましたわ。テーブルのお花もとても私好みで、嬉しくて」

「何よりです」 



 食事中もこういった会話が延々と続いた。




 久しぶりのまともな食事にも関わらず、全く味がしなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ