前菜その2
「言われた通りにかけたが?」
「もう一周ですね」
「そんなにか……」
躊躇う気持ちはわかる。
でも、俺を信じろっての。
……俺って言うか、俺が信じる、動画投稿者の言葉を信じろ。
「よし」
「では食べよう」
という事で、みんなで一斉にエスカルゴを口の中へ。
「あっふ」
「む! 美味い!」
「ニンニクの香りが強烈ですわ!!」
「歯ごたえ良く、噛む度に旨味がジュワッと広がる」
「貝とかに似た感じじゃな」
この人ら、こんだけグツグツのエスカルゴをよく当たり前に食えるな。
俺とか口内火傷しちゃったんだけど……。
「オリーブオイルの香りもまたいいな」
「カケルがびしゃがけにしろと言っていた意味がよく分かる」
さいですか。
まぁ、分かって貰えたなら良かったよ。
「フォッカチオになります」
「ありがとうございます」
丁度いいタイミングでフォッカチオが来たわね。
と言う訳で、
「これを千切って、ソースに浸して食べるんですよ」
俺が最初に行かせて貰う。
雑に千切ったフォッカチオの断面をエスカルゴのソースにシュウウウウゥゥゥゥッ!!
超! エキサイティンッ!!
「うめぇ……」
はい優勝。
エスカルゴの旨味と野菜の旨味、ガーリックの香りとオリーブオイルの香りの暴力パンチが、フォッカチオの生地に乗って殴りこんで来やがる。
しっかり味わい呑み込んで、流し込むコーラがまた美味いんよ。
「これ最高ですわ!!」
「白ワインと格別な相性だな」
「赤にも合うぞ」
「たまらんのぅ」
へへへ、そうだろそうだろ。
こんな安価で美味いエスカルゴが食べられるのはここだけだからな。
ここしか勝たん。
「ムール貝もいくか」
「数が一つ足りませんわね」
「あ、俺大丈夫です」
「いいのか?」
「皆さんを楽しませるために連れて来たので」
四つ入りのムール貝を取り合うわけにもいくまい。
それに、あんまり何でも食べてると俺はすぐお腹一杯になっちゃうからね。
「ムール貝にもオリーブオイルか?」
「もちのろん。あとはホットソースもかけると美味いです」
某動画投稿者曰く、ガルムソースを抜いて、レモンと塩で食べるのがおススメらしい。
レモンはドリンクバーの紅茶の所に置いてある奴ね。
「どれどれ……」
しっかりオリーブオイルとホットソースをかけて、パクリ。
そう言えば、ホットソースが個装のに変わってたんだよね。
いつの間にやら。
「肉厚でしっかりと噛み応えがありますわね」
「乗っている野菜ペーストがいい味を出しているな」
「食感も野菜のおかげで変化がある。飽きさせない味だな」
「ホットソースもよく合うわい」
それぞれ感想を言って、同じタイミングで白ワインをグビリ。
「合うなぁ……」
「魚介には白ですわね」
「正直、本当にこの安さで飲めていいワインではない」
「このボトルのサイズも、わしらの世界にあれば嬉しいんじゃがのぅ……」
異世界にマグナムサイズって無いんだ?
まぁ、ありそうかと言われると無さそうとしか思わんけど。
「そろそろ肉にいこう」
「チキンか羊肉か」
「カケル的にはどちらからとかあるか?」
「う~ん……辛みチキンの方が先ですかねぇ……」
「ではそうしよう」
と言って、四人が辛みチキンを手に取る。
アロスティチーニは特製スパイスもあって、結構味が濃いからな。
……それを言うなら辛みチキンもだけど。
でもまぁ、食べた後にワイン飲んでリセットするでしょ、多分。
「……? 辛みという割にはあまり強く無いな?」
「ちょっとピリッとする程度ですわね?」
「ホットソースと……ブラックペッパーをかけよう」
「これくらいくる方が美味いわい」
あー……。
まぁ、分かるな。
意外と辛くないんよな、辛みチキン。
――だからと言ってホットソースやブラックペッパーを追加しようと思った事は無いけど。
でも、それはそれで有りよな。
「チキンにも白だな」
「赤は単体でも美味い分、肉の旨味や風味を消す感じがする」
「なまじ肉に臭みやらが無いせいじゃがな。ここまで質のいい肉でなけりゃあ赤の方が合っとるわい」
ほへー。
俺の知識だと肉には問答無用で赤ってイメージだから、異世界組にそう言われるとそうなのかとしか言えん。
でも、確かに日本で臭い肉ってのはあまり出会わないな。
ジビエとかだとそりゃあ癖のある肉なんだろうけれども。
「アロスティチーニは……スパイスをかけるんですのね?」
「みんなに行き渡るよう、考えた上でたっぷりかけてください」
これも某動画投稿者の受け売り。
でも、間違いないよね。
「私はまずはそのままだな。肉本来の味を見たい」
「じゃあその分のスパイスは私が使いますわね」
……リリウムさんの有無を言わさぬ感じに全員が小さくため息をついた……ように思う。
でも、特に何も言わずそのままアロスティチーニにかぶりついて……。
「美味い」
「脂身が美味しいですわ」
「スパイスがいいのぅ」
「これは確実に赤!!」
四者四様の反応。
なお、共通項として『美味しい』があるもよう。
「肉本来の味もしっかりしている」
「そこにあのスパイスですわ」
「赤も合うが白も合うぞい?」
「スパイスのニュアンスがあるとより赤が合う」
とかなんとか言いつつ、あっさりとアロスティチーニを平らげ。
ワインもサクッと飲み干されまして。
即座に注がれる、マグナムボトル。
残らないんだろうなぁ……この量のワイン。
既に半分減ってるし……。




