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義理の兄妹になっても僕らは両想いなので、学園でも家でも隠れて付き合うことにしました。  作者: まさな
■第三章 紫陽花の季節

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●第四話 W誕生日

「悠真くん、ちょっといい?」

「いいけど、何?」

「来週は私の誕生日なんだけど、悠真くんの誕生日っていつですか? もう過ぎてる?」

「ああいや、あれ? 僕の誕生日も来週だよ。六月六日なんだけど――」


 父さんは葵より僕の方が誕生日が少しだけ早いと言っていた。


「えっ、私も六月六日なんですけど」

「んんん? じゃあ、僕が午前で君が午後に生まれたとかそういう話なのかな」

「ああ、なるほど、たぶんそうですね」


 ま、この際どちらが先でもいい。葵が姉でも僕は別に構いやしないのだ。


「でも、誕生日が同じだなんて……」

「ああ」


 運命的だ。

 その言葉を口に出してしまうのは、なんだか運命的なものを本当に信奉しているみたいなので、僕は口には出さない。葵がそういうタイプの人間を嫌いだったら困るからだ。葵も同じことを考えたのか、その言葉は口にしなかった。けれど、僕らはお互いの目を見て、相手がそう思っているというのは確信できた。

 一年はうるう年を除けば365日、確率としては何百分の一なのに、同じ日に生まれたなんて。

 葵と同じ日というだけで、僕はうれしくなってしまった。


「あ、そうだ、葵、プレゼントは何がいい?」

「ええっと……それは内緒がいいんじゃないでしょうか」

「えっ、そ、そう」


 葵が欲しいものをプレゼントとして渡すのが一番だと僕は思ったのだけれど、葵は違うみたいだ。


「それだと、私がおねだりしてるみたいになるので。きっと悠真くんが選んでくれたものなら、何でも嬉しいと思います」


 そう言ってハードルを下げようとはしてくれているけれど、僕が間違った地雷の品をプレゼントしたら微妙な空気にならないだろうか? 凄く心配になってきた。


「ちなみに、葵は僕のプレゼント、もう決めているの?」

「ええ、喜んでもらえるかちょっと自信はないですけど……でも、私、悠真くんが何をプレゼントしてくれるのか、楽しみで仕方がないので、悠真くんも私のプレゼントを楽しみにしてくれたらな……って」


 なるほど、何がもらえるかわからないから、サプライズを楽しめるってことか。

 葵の考え方はわかった。


「なるほど。じゃあ、僕も君が喜びそうなものを考えてみるよ」

「はい。お互い、いいプレゼントを選びましょう。来週だけじゃなくて、来年もまたありますから」

「うん」


 そうだな。たとえ今回が微妙でもまだチャンスはある。ただ、葵は堅実なタイプだと思っていたので、プレゼントを内緒にするという提案はちょっと意外だった。まぁ、葵のことだから、きっとそれほど欲しくないものでも、笑顔で受け取ってくれて拒否はしないはず。

 兄妹として、誕生日プレゼントを渡す、ということなら、それでいいと思う。それでも僕としてはやっぱり恋人である彼女に渡すつもりだから、喜んでくれるものがいいのだけれど。


 そのあと部屋で一日中考えたり、ネットを検索した僕は勉強机に突っ伏していた。


「ダメだ、何にも思いつかない。葵って何が好きなんだろう?」


 猫のシロが好きなのは知っているが、あれはウチのペットだからプレゼントにはならない。ぬいぐるみが好きかな? でもどのぬいぐるみが良いのかそれは全然わからないときた。


「うがー!」

「よう、悠真、なんだ、そんなにイライラして」


 真夜が部屋に入ってきた。


「お前、入るときにはノックしろよな」

「いいだろ、そんなの。で、何を悩んでるんだ」

「ああ、葵が来週に誕生日だっていうから、そのプレゼントだよ」

「ああ。そういえば悠真も来週が誕生日だったな」

「ああ。午前と午後で、同じ日だった」

「ええ? 面白いな、それ。兄妹で一緒って」

「まあな」


 恋人だけどな。


「じゃ、何かプレゼントを買いに行こうぜ。まだ、決めてないんだろ?」

「そうだよ。どれを葵にプレゼントしたら喜んでくれるか、全然思いつかない」

「そんなの、何だっていいだろ。プラモでも、ラジコンでも、チョコでもさぁ」

「それ、全部、お前が欲しいものだろ」

「アハハ、ま、そうだな。でも、悠真、何かを選ぶなら、店とかに行って自分で見ながら選ばなきゃ、選びようがないぞ。今から駅前のデパートに行くぞ」

「ふむ、一理あるな」


 真夜は彼女の経験則なのか、何も考えていないように見えて、たまに良い事を言う。本当にたまに、だけど。

 二人で駅前のデパートにやってきた。


「んじゃ、百円ショップのコーナーから見てみようぜ。アタシも葵のプレゼント、何か渡してやらないと」


 真夜は予算が厳しいようで、デパートの百円売り場を提案した。


「葵が喜ぶもの、か……」


 僕は必死で考えるが、難易度が高い問題だ。なにせ、僕はまだ葵をよく知らないのだ。

 教室で授業中にノートを取る彼女は知っているし、文芸部でお昼にお弁当を作ってきてくれる葵も知っている。だがそれだけで、プレゼントになりそうな彼女の好きな物が思いつかない。それくらい、彼氏ならすぐに思いつけよと自分に言いたくなるが思い浮かばないのだから仕方ない。


「お、やった、猫のぬいぐるみがあったぜ。すみませーん、これ、ラッピングってできますか?」

「ええ、百十円追加になりますけど、できますよ」

「ぐぐ、まあ、いっか。じゃ、それで」


 真夜は即断で早くもプレゼントを決めた。僕は百円ショップをあちこち見回す。


「高校生に大人気のブランドコスメか……」


 化粧品のコーナーのポップが目に付いた。


「いや、違うな」


 葵はこういうのはすでに自分用のを持っているだろうし、普段の彼女はメイクをしているようには見えない。化粧品の素人である僕が選んでも、良いチョイスはできないな。すっぴんがデフォルトの真夜に聞いてもダメだ。


「これかな……」


 モフモフのスマホ用ハンドストラップを見つけた。可愛らしいし、小物だし、お手頃だ。


「おい、悠真、そろそろ決めろよ」

「わかったよ。でも一度、本屋に寄ってもいいか?」

「おう、アタシもちょっと見たいマンガがあるからな。寄っていこうぜ」


 ストラップをラッピングもしてもらい、本屋に向かう。これで向こうにいいのがなければプランB、ストラップの保険ができた。


 本命のプレゼントは――文芸部に所属している葵なら、やっぱり本がいいのではないか。


 そう思った僕は、文芸の文庫本の棚に向かう。

 葵には悪いけど、ハードカバーの本は予算的に厳しかった。それに、もしも葵がすでに同じ本を持っていたらという心配もある。文庫本なら、そこまで邪魔にならないし、葵がいらないと言えばさっきのストラップを渡して本は僕の部屋においておけばいいのだ。


 著者は有名どころがいい。芥川龍之介なら、文芸部員でも小馬鹿にしたりはしないだろう。

 そしてタイトルは――僕が知っている『蜘蛛の糸・杜子春』に決めた。きっと葵もすでに読んで内容は知っているに違いないが、二度読んでも面白そうなものだし、著作権が切れていて多く出版社によってたくさん種類が出ているから、同じ本になってしまうことはないだろう。別ヴァージョンを楽しんでください、という趣旨だ。よし。


「これ、ラッピングをお願いできますか?」


 葵が喜んでくれるといいのだけれど。僕はちょっぴりの不安と、喜んだときの葵の顔が楽しみで明日が早く来ればいいのにと願った。

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