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義理の兄妹になっても僕らは両想いなので、学園でも家でも隠れて付き合うことにしました。  作者: まさな
■第二章 僕らの内緒のデート

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●第五話 願い星のパレード

 僕らは洞窟を進むボートや、異世界ドラゴンと対決したり、水路を進むジェットコースターのアトラクションをこなし、ディスティニーランドを思いっきり遊びまくった。


 初めは子供だましと思っていた僕だったが、しっかりと計算され洗練された本格派テーマパークだけあって侮れない。何より、葵と一緒なので何をやっても楽しかった。真理亜さんが何枚も写真や動画を撮ってくれたけれど、良い思い出になりそうだ。


 海賊船のバイキング風レストランで、マンガ肉やビッグサイズのハンバーガー、そしてチーズフォンデュの豪華なコース料理を腹いっぱい食べて、まったりとした時間を過ごす。スマホを出してみたが、時間はもう夜八時を過ぎている。細かい予定は聞いていないが、そろそろお開きで、今日はホテルに戻るはずだ。


「はー、食った食った」


 横綱ばりにポンポンとお腹を叩く真夜に、無言で眉をひそめる葵。


「うまかったな。じゃ、真理亜さん、そろそろホテルに――」

「待って、一馬さん。まだ今日のメインディッシュが終わってないわ」

「ええっ? いや、真理亜さん、さっきのがデザートじゃなかったのかい? さすがにこれ以上はオレも食べられないぞ?」

「ふふっ、食事の話じゃないわよ。ディスティニーランドの名物、イルミネーションナイトパレードがちょうど始まる時間なの。さ、みんな、行くわよ」

「待って、お母さん。私、さすがにちょっと歩き疲れちゃって」


 葵が困った顔で言う。僕も正直、もっとここで休みたい。


「安心して。パレードの終着点になるアヴァンチュリエ城はすぐそこだし、そんなに歩かなくていいから。これを見終わったら、ホテルに直行で今日全部はおしまい」

「パレードかぁ。そんなもん見ても面白いかなぁ?」


 真夜は気乗りしない様子だが。


「あなた達はまだナイトパレードは一度も見てないでしょう。絶対にオススメなんだから」

「ふうん、真理亜さんがそこまで言うなら見てみるか」

「そうだな」


 少し気合いを入れて、みんなで席を立つ。

 外はすっかり暗くなり、街灯と建物の明かりだけが頼りだ。中世風の路地に敷き詰められた石畳を道ぞいに進んでいく。道ばたにはかなり大勢の人がいて、ちょっと油断すると真理亜さん達を見失いそうだ。

 僕は振り向いて、少し遅れている葵を待った。


「ごめんなさい。少し、足が痛くて」

「大丈夫? 父さん達に言って、もうホテルに向かう?」

「いいえ、あんまり心配させたくないし、ただの筋肉痛だから、平気」

「うん……」


 平気と言いつつ顔をしかめた葵は少し無理しているようだが、本人が大丈夫だというのだから、それ以上は僕も言えない。できることと言えば、こちらに向かってくる人が葵にぶつからないように風よけになるだけだ。


「さ、ここでいいでしょう。ここがベストポジションよ」


 なんとか真理亜さん達に追いついたが、ここは大きな広場になっている様子。しかし、街灯で照らされてはいるものの、かなり薄暗くて遠くは見えない。


「「「おおっ」」」


 周囲から興奮した声が上がり、街灯がゆっくりと明るさを落としていく。街灯は最後にはすっかり消えてしまい、辺りは真っ暗になった。


 すると今度はどこからか音が響いてくる。


 ダッダン♪ ダッダン♪ ダララララララ、ダッダン♪


 そんなリズムの良い打楽器の音だ。道の向こうから光の塊と共に音がにこちらに近づいてきた。


「来たわね」

「見て見て、来たわよ」

「あれだ!」

「ミーミー!」

「ムームー!」


 人々が一斉に騒ぎだし、その光を見つめる。やがて光の塊は近づいてくるにつれ、大きくなり、それがパレードの一団だとわかった。光のイルミネーションを纏うカボチャの馬車、光の制服を着た楽団員、そして着ぐるみのキャラクター達。彼らが楽しそうにこちらに向かって手を振ると、キャアキャアと歓声が沸き起こる。まるでアイドルを待ちわびたファンのようだ。


 もっと前で見ようとする人がいるようで、後ろからぐいぐいと押されてしまうが、道に出てしまってはパレードの邪魔になるし、あの大きなカボチャの馬車に踏まれては怪我をしそうだ。僕は必死で踏ん張った。

 ――しかし。


「きゃっ」


 隣にいた葵は後ろの圧に耐えきれなかったようで、倒れ込むように道の前に押し出されていた。


「危ないっ!」


 僕はとっさに葵の手をつかむ。彼女の指は細く柔らかく、そして冷たかった。力いっぱい引く。たとえ何があろうと、この手を放してはいけない。


 絶対に。

 僕は彼女の手をしっかりとつかんで全身全霊、力の限りに踏ん張る。他の人も手伝ってくれて、なんとか歩道に彼女を戻すことに成功した。ふう。


「大丈夫? 葵さん」

「え、ええ、ありがとう。ちょっとびっくりしちゃって。怖かった」


 首を縮めて胸を押さえた彼女は、まだ息が荒い。よほど怖い思いをしてしまったようで、まだ僕の手をしっかりと握りしめている。


「もう大丈夫だ。でも、もっと後ろに行こう。ここは危ないよ、葵」

「そうですね」


 はぐれたりしないよう、僕はまだ葵の手を握っておくことにした。彼女も握ったままだ。恋人同士なのだから、いや、たとえ恋人でなくても、今この手を放す気にはなれなかった。


 僕が彼女を守るんだ。


 僕だけは何があっても彼女の騎士ナイトでいたい。

 いつの間にか、彼女が大切な宝石のような――いや、もっと重要な、かけがえのない存在になっていることに僕は気付かされていた。


「見て、城が!」


 誰かが叫ぶと、突然、夜空に巨大な建造物がライトアップされ、光の城が浮かび上がった。レーザーを使っているのか、七色の光の線が空を自由自在に駆け巡る。


 ――と、その線の一つが、青い星を描き出し、それが城の壁の上を移動していく。


 流れ星だ。

 本物の流れ星ではないけれど、僕はその星に密かに願った。


 このままずっと、葵と一緒にいられますように――と。

 前みたいに家族がバラバラになりませんように――と。


 隣の葵を見ると、彼女の瞳の中に青い星が反射して見えている。彼女はすぐに僕の視線に気付いたようで、こちらを見た。彼女の僕の手を握る力が強くなる。


 騒がしかった歓声がどこか遠くに聞こえ、まるで時間が止まったような、そんな感覚になる。きっと葵も今、僕と同じ気持ちでいてくれるはず。


 僕はそう信じた。

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