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義理の兄妹になっても僕らは両想いなので、学園でも家でも隠れて付き合うことにしました。  作者: まさな
■第二章 僕らの内緒のデート

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●第三話 ホーンテッド・ハウスの真ん中で(2)

「…………」

「…………」


 お互い、黙り込んでしまう。僕は彼女の手を力強く握り、決意して言う。


「葵、後ろを見ずに走ろう」

「はい」


 それでダメなら、もう係員を呼ぼう。決めた。


「じゃ、行くよ」

「はい!」


 二人で廊下を走る。だが、後ろのカサカサという音も次第に大きくなり、しかも、すぐ後ろ・・・・から聞こえる。数も一つや二つではなさそうだ。


「くそ、何なんだよ!」

「な、何か付いてきてますぅ!」


 僕と葵は後ろを振り向くことなく走る。だって、後ろを見たら、絶対怖いのがいるに決まっている。ここのディスティニーランドは紛う事なき本物だ。心から賞賛しよう。これだけ金をかけた本気の作りだからこそ、僕らは後ろを絶対に振り向けない。


 作り物だと分かっていても恐怖に支配されるのはもう決定事項だ。

 だが、心憎い演出なのか、廊下が先で曲がっており、そこに大きな姿鏡があった。


「うわ、蜘蛛だ。しかもデカい!」


 直径は一メートルはありそうなデカ物が何匹もわらわらと僕らの後ろを追いかけている。


「ひーん、私、蜘蛛は苦手なんですぅ!」


 葵がすでに泣きながら言う。彼氏なら、ここで蜘蛛を蹴散らして「先に行け!」と言うべきところだが、すまない、葵。僕もあんなに大量で大きい蜘蛛は無理だ。せめて彼女の手だけは放さないようにしっかりと握りながら、力の限りに走る。ひたすら逃げる。

 だが、世界は残酷だった。


「きゃっ」

「えええっ」


 葵が途中で転んでしまった。

 すでに汗で濡れていた僕らの手の絆はあっさりと滑って離れてしまう。

 最悪だ。

 僕はどれほどこのまま走って逃げてしまおうと思ったことだろう。だが、泣いている葵を置いて進むなど、できるはずもない。


「葵! 早く立って!」

「ダメ、腰が抜けて、立てません~。ごめんなさい~」

「くそ」


 僕は勇気を振り絞り、蜘蛛の群れと葵の間に立つ。

 来るなら来てみろ。ここで僕を食ったりしたら、後で絶対裁判に訴えてやる。

 震える足で立ち続けていると、凄い動きでカサカサと追いかけてきた蜘蛛達は、以外にも僕らをすーっと避けて廊下の先へと通り過ぎていった。


「ふう、助かった。あれだな、ロボット掃除機の仲間なんだ」


 センサーか何かで僕らを感知して当たらないように最初から設計されているのだ。しかも、追いかけるところまでプログラムに入っているのだろう。


「そ、そうみたいですね……」


 ほっとして落ち着きを取り戻した葵の手を取って立たせてやる。


「ありがとう、悠真くん。私、さっき、置いて行かれたらどうしようって」

「まあ、仕方ないよ」


 僕が葵の立場でも、「私のことはいいから逃げて!」なんてセリフは言えそうにない。ああいうのは映画やアニメの中だけだ。だいたい、私を捨てて逃げてなどと彼女から言われたらそれこそ困ってしまう。


「お客様、お怪我はありませんか」


 係員の人がやってきて心配してくれた。


「あ、はい、大丈夫です」


 葵も怪我はないようだ。


「怖がらせたようで申し訳ありません。こちらの非常口から出口まで直通になっておりますが、どうされますか」

「「出ます!」」


 僕と葵はハモって力強く言い、係員と一緒に出口へ出た。


「遅いぞ、二人とも」


 出口では真夜達三人が待っていてくれた。


「やあ、ごめんごめん」

「ごめんなさい」

「何かあったのか?」


 父さんも心配してきたが。


「いや、怖くてなかなか進めなかっただけだから」


 僕は肩をすくめて苦笑する。


「そうか。ならいい。じゃ、ホーンテッド・ハウスの土産コーナーだけ見て、次へ行こう」


 正直、このアトラクションはもうお腹いっぱいで先に外に出て待っていようかとも思ったが、お土産コーナーはファンシーな雰囲気になっており、どうやら大丈夫そうだ。


「わぁ、カワイイ!」


 などと葵が興味を示したのは、彼女があれほど怖がっていた蜘蛛ロボットのぬいぐるみ版だ。まあ、作りや見た目は全然違うのだが、僕はぬいぐるみであろうとノーセンキューだ。あの一帯には近づくまい。


「あっ、この首輪、シロちゃんにどうですか」


 葵が指さすが、そちらはペット用に鋲が打ってある黒いベルトが売られていた。


「首輪かぁ。嫌がらなきゃ付けておいてもいいかな」


 ウチのシロには何も付けていない。今はあまり心配していないが、迷子になって誰かに保護されたときには、首輪があるほうがいいのだが。


「要らないと思うぞ。猫に首輪なんて。だって犬と違って散歩したりしないだろ」


 と、真夜は反対の様子。

 値段もやっぱりディスティニー仕様とあって、三千円とちょっとお高めだ。一応、お年玉のへそくりも今日は持ってきたから、買えないこともないんだが。


「ほう、首輪か。せっかくディスティニーに来たんだ。留守番してるシロにもお土産を買って帰ってやらないとな」


 そう言って父さんが購入した。


「シロちゃん、喜んでくれるといいな……」


 葵がちょっと楽しみにしている。頼むぞ、シロ。まあ、本人というか、本猫が嫌がるなら仕方ないが。


「真理亜さん、次はどこだ?」

「次は、ファンタジーズ・ダンジョンよ!」

「おお、あそこか!」

「ええ? 私、あそこは苦手……」


 経験者の真夜と葵が違うリアクションを見せたが、真理亜さんがチョイスするからには人気アトラクションなのだろう。しかもディスティニーランドはすべてが最先端で本格的だ。さらに、ホラーっぽくない名前のアトラクションである。これは楽しめるかなと思って、僕も期待して次の場所に向かった。

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