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義理の兄妹になっても僕らは両想いなので、学園でも家でも隠れて付き合うことにしました。  作者: まさな
■第二章 僕らの内緒のデート

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●第三話 ホーンテッド・ハウスの真ん中で

 ――その場所はひっそりとした森の中にあった。それまで陽気でのどかだった雰囲気が一変し、何やら空気も重く淀んでいるように感じる。


「あの墓って本物かな?」


 真夜が指さした森の中に、傾いた墓標や倒れた墓標が散乱しているが、まあ、ここはテーマパークだしな。

 しかし、作り物ではなくあれは本物の石や土を使っているようで、質感が凄い。苔まで生えている。


「おお、見ろ、あの辺は霧が出てるぞ。どうなってるんだ、ありゃあ」


 父さんが感心するが、おそらくドライアイスを使っているのだろう。


「さあ、お待ちかねの、ホーンテッド・ハウスよ」


 真理亜さんがにんまりと笑顔で指さした先には――やや傾いた三階建ての洋館が霧の中に佇んでいた。屋根は尖塔となっており、庭には門のように松明が二本置かれ、炎が燃えさかっている。

 洋館の屋根の上にはずらりとカラスが並んでこちらをじっと見下ろしていた。


「あのカラスは本物かな?」

「作り物だろう。あっ、飛んだ」


 数羽のカラスが飛び去っていったが、ワイヤーで釣っていたのだろうか? 本当によくできている。

 そのとき、スッと森の中に人影が動いた。


「うえっ」

「どうした、悠真」

「いや、今、あそこの墓の上に人が、いたような……」

「ああん? いねーぞ、誰も。カラスと見間違えたんだろ」

「いや、そんなはずは」


 確かに人の顔だったはず。だが、あの墓がある場所は人が入るようなところではないはずで……


「あっ!」


 今度は葵が声を上げた。


「どうした」

「い、今、館の三階の窓に女の子の顔が」

「ハハッ、そりゃ中に人はいるだろ。アタシらも早く入ろうぜー」


 真夜は笑い飛ばしたが、どうにも不気味だ。作り物のはずだけど、ひょっとして――と思ってしまう。僕は非科学的なことは信じていないというのに。

 館に近づくと、大きな両扉が自動で奥に向かって開いた。ギィイイイという耳障りな音と共に。


「ほお、これはなかなか立派な作りだな」

「そうねぇ」

「おお、鎧騎士や銅像があるな!」


 父さん達はまったく平気なのか、物怖じせずに中に入っていった。僕と葵はおっかなびっくり、赤い絨毯のエントランスに足を踏み入れる。


『ようこそ、我がホーンテッド・ハウスへ。君たちを歓迎しよう。血の晩餐を心行くまで味わってくれたまえ。ヒヒヒヒヒ』


 と、正面の壁に掲げられていた肖像画の老人が動きながら笑い出した。さっきまでは普通の絵だったが、液晶画面テレビなのだろう。仕組みが分かっているから怖くないが、リアルさがハンパない。しかも額縁からはみ出したりと芸が細かいと来た。


「うう……、私、この先、ちょっと自信がないです」


 葵が力ない声で言う。


「僕もだ。もし、耐えられないようだったら、係員を呼んで、途中で出させてもらおう。非常口は必ずあるはずだし」

「そうですね」


 エントランスの正面にある一階両扉は太い蔦がまるで血管のようにこびりついて密着しており、通れないのが見てわかる。両脇の優雅に湾曲しつつ登る階段から、まずは二階へ向かう道しかないようだ。


「このダブルサーキュラー大階段から行きましょう」


 葵が言うが、へぇ、この豪邸によくありそうな階段はそんな名称だったのか。初めて知った。

 階段を上りきったところで、廊下の先からギャーという誰かの悲鳴が聞こえて来たが、彼女の前なのだ。僕は空元気を出し、なんともないぜというフリをしながら、行きたくない廊下の先へと進んでいく。


「参ったな、父さん達、どこまで先に行ったんだか」

「そ、そうですね……」


 最初の広間に二人で入ったが、もう父さん達の姿が見えない。葵と二人きりになるのを歓迎しないわけではないが、こういう雰囲気の場所は苦手だ。


「ヒーヒヒヒヒヒ!」


 突然、広間の真ん中にあったソファーから生首が飛び出してきたので、僕はビクッとしてしまった。


「うわっ!」

「きゃあっ!」


 葵も怖かったようで僕に抱きついてくる。

 とにかく一人でなくて良かった。誰かの体温を感じていなかったら、恐怖で動けなくなっていただろう。


「大丈夫だよ、行こう」

「は、はい」


 早く父さん達に追いつこうと、アトラクションはそっちのけで、ほとんど室内を見ずに次の部屋へと急ぐ。


「うわ、棺桶がある」


 部屋のど真ん中に棺桶が置いてある。


「ち、近づかない方が良いです。絶対、何か出て来ます」


 葵の言う通りだろう。僕と葵は、なるべく中央の棺桶に近づかないように壁際を歩いた。

 ――すると。僕らの背後の壁から……


「バァ~」

「ひぃ!」

「いやぁ!」


 壁から何かが出てきた。くっそ、棺桶が怪しいと思って、注意をそっちばかりに向けていたから、意表を突かれてしまった。僕と葵は必死でその部屋から逃げ出した。


「ふう、はあ、参った」

「うう、こ、怖かった」


 二人とも肩で息をして、呼吸と鼓動が収まるのを待つ。ようやく一息ついて周りを確認するが。


 ここは長い廊下だった。窓は夜の演出なのか、真っ暗になっており、時々、ペタペタと音がして、窓に白い手形がうっすらと現れる。映像の作り物だと分かっていても、滅茶苦茶怖い。

 なるべくそちらを見ないようにして、進みたくもない廊下を二人で抱き合うようにして怯えて進む。

 半分くらいまで廊下を進んだところで、異変があった。

 地の底から聞こえてくるような脈動。生ぬるい風。囁く声もスピーカーから流れている。マジ怖い。正直ちびりそう。


「ゆ、悠真くん」

「なに? 係員を呼ぶ?」

「いえ、それでもいいんですが、なんというか、さっき、後ろに変な音が聞こえませんでしたか?」

「え? 気づかなかったけど、どんな?」

「カサって」

「うわぁ」

「き、気のせいだと良いんですが、聞こえませんでしたよね?!」


 葵が必死な感じで聞いてくる。


「あ、ああ、聞こえなかったよ。でも、たぶん、それって――」


 次のアトラクションだろうと僕が言おうとしたら、カサカサッと音が聞こえた。

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