●第十話 行き詰まり?と解決策
本日3話目の投稿です
休憩時間になった。教室ではゴールデンウイークの連休が近いせいか、生徒達はどこか浮かれ気分だ。
「いよいよ、明日からゴールデンウイークだな! くぅー、待ち遠しいぜ! ビバ、連休!」
僕の席にやってきた明智も浮かれ気味だな。
「ああ、連休だな」
「なんだ、テンション低いな。冬月はどこか旅行とか予定はないのか?」
明智に聞かれ、僕も返答に詰まる。
「うーん、いや、今のところ、予定は決まってないな」
「そうか。ウチもだな。どうせなら、どーんと海外へ旅行に行きたいよなぁ」
「まあ、それもいいかもな」
そう言ったものの、僕はあまりアウトドアが好きではないので、旅行にそれほど興味は無い。連休は海外に行くと言うゴージャスなクラスメイトもいて、話は盛り上がっている様子だが――。
それよりも、連休中に僕は彼氏としての責務がある。彼女の葵をどこに連れて行くべきか、それで頭を悩ませている。
「なあ、明智」
「あん?」
「仮にだ、お前に彼女がいたとしたら、ゴールデンウイークはどこへ連れて行く?」
「お前なぁ。そんな妄想はよせ、冬月。エア彼女なんて作ったところで、あとで猛烈にむなしくなるだけだぞ。経験者のオレが保証する」
「いや、別にエア彼女を作るってわけじゃないんだが……」
実際にいるし。とはいえ、本当の事は言えない。彼氏がいない明智がそんな話を聞いた日には、リア充爆発しろ!と怒りをあらわにするに決まっているからだ。
というか、僕の周りには彼女持ちの友達が一人もいなかった。これでは相談しようがない。
「困ったな……」
あとで本屋に行って、オススメのデートスポットみたいなガイドブックや攻略本でも買うか?
その前にネットに何か載っていないかと、スマホで検索してみたが、お台場の夜のイルミネーションが出てきた。悪くはないが、あまりにも狙いすぎているようでこれはハードルが高い。だいたい、僕と葵はまだ付き合い始めて一週間だ。それでムード満点のキスだの何だのと、いやいや、色々と飛ばしすぎだ。そんな提案をした日には葵にドン引きされてしまうかもしれない。
「そういうところはちょっと……」
などと目を伏せて嫌そうに言われるなんて、うあああ……耐えられない!
悶々と心の中で身もだえしていると、葵からメッセージが入った。
『放課後、二人で相談したいことがあります。悠真くんの時間は大丈夫ですか?』
『いいよ』
もちろん僕は二つ返事だ。
『良かった。じゃあ、文芸部の部室で放課後に』
『うん。でも、文芸部の部活は?』
『今日は無しにします。連休に入る前に、悠真くんと相談しておきたいので……』
むむ、何か葵は気になる事があるようだ。
――まさか、連休のデートはどうなっているのか、そういう催促だろうか?
「まだ、決めてないんだよなぁ……」
考えれば考えるほど、何が良いのかわからなくなる。
「……ハッ、ええ? もう放課後かよ」
時計を見て驚いてしまったが、とうとう何も思いつかなかった。それでも約束はしているので、仕方なく僕は席を立つと鞄を持ち、文芸部の部室に向かった。
部室ではすでに葵が一人でノートを広げて待っており、何やらシャーペンを持って書きあぐねていた様子。
「お待たせ」
「ええ……」
どうしたのだろう。いつもならニッコリ微笑んで出迎えてくれる彼女が、難しい顔だ。
……嫌な予感がする。
ひょ、ひょっとして、別れ話を切り出される、とか?
ええ?
「とにかく、悠真くん、そこに座ってください」
「あ、ああ」
「どうかしましたか?」
「い、いや。それで、相談って……」
「ああ、実は、連休中に二人でどこに行くか、ちょっと考えていたんです。その、デートのことで」
「ああ、なんだ、そういうことか」
「何だと思ったんですか?」
「い、いやぁ、はは」
言えない。
「その、私達、初めてのお付き合いにしては上手くやれていると思うんです。あっ、悠真くんからしたら不満だらけかもしれないですけど」
「いやいや、全然っ、そんなことはないよ。不満なんてあるわけないじゃないか」
「そうですか? ならいいんですけど、その、私達、なんというか、恋人になったのに、どうもそれっぽいことをあまりやっていないような気がして……」
「あー、まあね……実を言うと、僕もそれを考えてたんだ。ごめん、彼氏なのに、ゴールデンウイークの予定を立てられなくて」
「あっ、ううん、それはいいの。私も考えて、思いつかなかったし。ネットで検索したらお台場のデートスポットとか出てきたんですけど、悠真くんはこういうところはあんまり好きじゃないかなって」
葵も同じ所を検索したようだ。僕らは似たもの同士だな。
「まあ、そうだね。騒がしそうなところは、苦手だなあ。高校生が夜中のイルミネーションってのもねぇ」
「ですよね。私も、ちょっと、それはまだ早いかなって」
葵のこの言い方だといつかはやってみたいのかもしれない。でもまあ、付き合い始めて、一週間で行くような場所ではなさそうだ。
「それで、今、良いアイディアが浮かんできたんですが」
「えっ、どんなアイディアなの?」
「経験者の大先輩に聞く、というのはどうでしょう?」
「ふむ、良いアイディアだとは思うけど、そういう知り合いが一人もいないんだよな、僕は」
「いいえ、一人いますよ」
「えっ、誰?」
「一馬おじさんです」
「あー」
灯台もと暗しだな。二度も結婚したリア充男をすっかり忘れて認識していなかった。
「私もお母さんに聞いてみようと思います。二回も結婚してるんですから、デートの良い場所くらい、知ってると思うので」
「だよね。うん、分かった。じゃあ、家に帰ってそれぞれ、聞いてみようか」
「はい!」
ひとまず、良い結論が出た。
一時はどうなることかと焦ってしまったけれど、葵は葵で真面目に僕らの関係を考えてくれていたようだ。
そう、何も僕らは一人で悩んで一人で決める必要などないのだ。二人で協力してやっていけるのだから。
帰宅して、父さん達を待ったが、意外に早く帰ってきた。
「ただいま。今日はお前達に話があって、早めに切り上げてきたぞ」
「話? その前に、父さん、付き合って一週間くらいの彼女を連れて行くデートスポットって例えばでいいんだけど、どこがいいかな?」
「妙にピンポイントなところを聞いてくるじゃないか、悠真。ま、そうだな、付き合い始めたばかりなら、そんな遠出とかせずに、自分のテリトリーに相手を呼び込むか、相手のテリトリーでデートしたほうがいいぞ。なんせ、お互いまだ知り合ったばかりで、お互いを知ることが第一だからな。見栄とか、記念だとか、サプライズとか、余計なことにエネルギーを使ったてたらダメだ。手軽なところが一番だぞ」
「な、なるほど。これが二回結婚できた男の知恵か」
侮れない。
「なんだ、お前、父さんをバカにしてるのか、悠真」
「いやいや、そうじゃないよ。参考になった。ありがとう、父さん」
そうだな、どこか特別の場所じゃなくて、僕と葵が良く行く場所、落ち着ける場所のほうが良さそうだ。
僕は上機嫌で、葵の部屋に向かった。




