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義理の兄妹になっても僕らは両想いなので、学園でも家でも隠れて付き合うことにしました。  作者: まさな
■第一章 そして僕らは家族になっていた

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●プロローグ 初顔合わせは突然に

完結まで書き上げています。

よろしくお願いします。

 まったく、人生は何が起きるか分からない。


 悪いこともあるけれど、いいことだって起きるのだ。

 たとえ、それがどれほど自分にありえそうにない未来だったとしても。


 放課後、僕は対戦ゲームをやろうと言ってきた友達の誘いを断り、学校から真っ直ぐ帰宅していた。


 何気なく空を見上げてみれば、ふわっとしたパステル調のいい天気だ。

 まだ朝方は寒いけれど、昼あたりから過ごしやすくなってきた感じで、柔らかな日差しが優しく僕を照らす。

 こういう日にはなんだか広い芝生の上でひなたぼっこをしたくなる。


 だけど今は3Dモデルの新しいプログラムを思いついたので、すぐ書いてみたかった。

 もともと僕はゲームが好きで、何か自分でも作れないかといろいろ試していた。さすがに店で売られているようなレベルではないけれど、いつの間にか市販のゲームをやるよりも熱中し始めている。自由に精密な世界が自分の手によって作り出せるのは感動モノだ。アニメキャラの可愛い美少女を作れるのもいい。


「あれ? 鍵が開いてる」


 自宅に帰ってきたところで、玄関の鍵がかかっていないことに僕は気づいた。今朝、学校に行くときには、きちんと戸締まりして確かめたはずなのに。それどころかドアの向こうではごそごそと誰かが動いている気配もある。ひょっとして泥棒? と思ったが、そうではなかった。


「おお、早かったな、悠真ゆうま

「父さん? そっちも今日は随分と早いね」


 いつもは深夜に仕事を終える父さんだが、今日はやけに早い。それに、ほとんどやらない家の掃除を本格的にやっていたようで床がピカピカだ。


「どうだ、綺麗になっただろう。ワックスもかけたぞ」


 父さんが自慢げに両手を広げてみせた。


「ああ、まあ綺麗になったね。でも、何もそこまで本気出さなくたっていいのに」


 この家にいるのは僕と父さんだけなので、二人が気にしなければ特に問題もない。


「なにおう? いいから、お前も自分の部屋くらいは掃除しておけよ、悠真」

「わかったよ」


 言われたとおり、自分の部屋の片付けをやって掃除機をかけておく。


「よし、こんなものかな」


 満足したところで夕食の準備でもしようと思い、キッチンに向かう僕を、父さんが呼び止めた。


「ああ、悠真、お前は今日はお客さんだ。飯は作らなくていいぞ」

「んん? 何でそんなに張り切ってるの、父さん」

「そりゃ張り切るに決まってるだろう。お前も、今日はきちっと挨拶するんだぞ? 手料理が毎日食えるかどうかの瀬戸際だからな」

「んんん? 何の話?」

「何の話って、お前……おっと、もう来たのか。はーい、今、開けるぞ」


 ドアベルが鳴り、出前でもまた頼んだのだろうか。でも、今、手料理って言ったしな?


「どうも。少し早かったかしら?」


 聞き慣れない女の人の声が聞こえた。父さんの知り合いのようだ。


「いやいや、ちょうど掃除も終わったところだし、早く顔会わせしたかったからな。ささ、二人とも上がって上がって」

「お邪魔します」


 そう言って別の少女の声も聞こえ、その人達がリビングに上がってきたが……。


「えっ、鈴崎すずさきさん……?」

「えっ、冬月ふゆつきくん……?」


 そこに鈴崎あおいの姿もあって、僕も彼女も混乱する。


「なんだ、悠真、葵ちゃんと知り合いか?」

「ああうん、クラスメイトだけど……」


 しかもタダのクラスメイトではない。彼女は僕にとって特別な存在だ。クラスでは全然目立たない感じだけれど、その細く長い濡れ羽色の髪は、ほのかに光を反射して上品な艶があり、腰まで綺麗にストレートで伸ばしている。知的で大人びた瞳と、ややあどけない小さな唇。その完璧に整った調和は見る者の目を惹く。ただし、僕が彼女を好きになったのはそんな容姿が理由ではなかった。


「おお、そうだったか、そりゃいいな、全然知らない子が家族になるよりはいいだろう」


 家族?


 えっと……何を言ってるのかな? 父さん。


 |僕らが|恋人として(、、、、、)|付き合って(、、、、、)|いることは(、、、、、)話していないから知るはずもないだろうし、まだ高校生だから結婚なんて話が出るのもおかしい。いや、結婚……?


「あっ、再婚か!」


 僕は思い出した。鈴崎は母親が近々再婚する予定だと学校で僕に話していたのだ。今日は相手の家族との顔会わせだとも。その再婚相手がうちの父さんってことなのか!


「なんだ、悠真、前にオレが話してたこと、お前ちゃんと聞いてなかったのか?」

「いや、だって、あれは手料理を食べたいかって話じゃ……」


 ようやく先日の不自然な話の意味が理解できたが、あれで気付けというのも無理筋だ。


「手料理が食いたいだろう」

「うん」


 それだけだったし。


「まあ、あれだ、父さんも、そろそろ手料理が食いたいと思ってな。学生のお前に作らせるのも可哀想だし、いい人を見つけてきたぞ。真理亜まりあさんだ」

「初めまして。なんだか再婚の話があまり伝わっていなかったようだけど、大丈夫かしら? 鈴崎真理亜です。よろしくね、悠真くん」


 美人な母親だ。ちょっと派手な感じだが、確かに鈴崎の面影がある。


「あ、はい。どうも初めまして」

「ほら、葵、あなたも挨拶しないと」

「あ、うん。鈴崎葵です。初めまして」

「よく来てくれた、葵ちゃん。おじさんは冬月一馬かずま、今日から君のお父さんだ。悠真、葵ちゃんもお前と同じ高校2年だそうだ。生まれたのは悠真のほうがほんのちょっとだけ早いから、お前が兄貴だな。可愛い妹ができたぞ。やったな! 悠真」


 おいおい……父さん、話がいきなりすぎるんだけど。それに、再婚はまぁいいとして、鈴崎葵が義妹になると困るんだ。付き合い始めたばかりだけど、僕の彼女だし。


「冬月くんが兄妹……」


 鈴崎もショックを受けた様子で呆然としている。


「じゃ、挨拶はこのくらいにして、特上の握り寿司を頼んであるから、みんなで食べよう。特上五人前だぞ?」

「あら、二人ともどうしたの? 悠真くんはお寿司って良くなかったかしら?」

「ああいえ……」

「はは、そんなわけないじゃないか。悠真も寿司は大好きだよな」

「まあね」


 僕は力なく肩をすくめ、話を合わせた。


「そ、良かった。じゃ、私が何かお吸い物を作るわね。葵、あなたも手伝ってくれる?」

「うん、わかった」

「悠真、お吸い物ができるまで、先に食うなよ」

「それくらい、わかってるって」


 さて、どうしたものか……。鈴崎と僕が付き合っていると話せば、父さんも再婚を考え直してくれるかもしれない。ただ、それだと父さんの再婚話がパーになってしまう。

 さっきから笑顔で僕に親指を立ててウインクまで飛ばしてくる父さんは、真理亜さんとの結婚がよほど嬉しいのだろう。参ったな……。

 とにかく、今は言い出せるような雰囲気じゃないし、ちょっと後で鈴崎と相談しないと。


「冬月くん、これ、どうぞ」

「ありがとう、鈴崎さん」


 鈴崎がお吸い物を持ってきてくれた。


「ダメよ、葵、もう私達は家族なんだし、名字で呼んでいたら誰が誰かわからないでしょ。下の名前で悠真くんって呼ばないと」

「ええっ。そ、そうよね……じゃ、じゃあ、ゆ……ゆ……悠……ううっ、言えないっ!」


 真っ赤になった葵は照れてしまったようだ。


「悠真だぞ、悠真。葵ちゃん、兄貴の名前は覚えてもらないとな。はは」


 父さんは葵が名前を覚え切れていないと勘違いしたようだが、ま、そのほうがいいか。


「みんなお吸い物が行き渡ったかしら?」

「大丈夫だ」

「じゃ、いただきましょうか」

「「「いただきます」」」


 大変なことになってしまったが、とにかくまぁ、寿司は食べてしまおう。生ものだし、何と言っても特上だもの。

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