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第88話 偽たくあん聖女②

 ピカッ!!

 ぽんっ!!

「本当に置いていっちゃうなんて!!」

 ピカッ!!

 ぽんっ!!

「あんな伝言ひとつで!!」

 ピカッ!!

 ぽんっ!!

「昨日の今日の突然に!!」

 ピカッ!!

 ぽんっ!!


「リゼ、出しすぎよ」

「ぁ……」


 クララさんの言葉で我にかえると、いつの間にやら目の前の調理台の上は私が出したたくあんで埋め尽くされていた。

 デジャブ。


「にしても急ねぇ」

「噂の話をした後、すぐにクロードさん、王太子殿下に話してみるとかで城に出かけたんです。で、割とすぐに帰ってきて『なんとかなりそうだ』とか言ってたと思ったら、朝にはもう出発していて……。残されていたのは『ブックデルでリゼの汚名を晴らしてくるから待っててね』という伝言のみ!! アホなんじゃないですか!?」

「お口が悪くなってるわよぉ、リゼ」


 クロードさんがそうさせるのよ!!

 ふんすっ!!


 ピカッ!!

 ぽんっ!!


「リゼーいるー? って何このたくあん臭!!」

 バンッ!! と勢いよく食堂の扉を開けて入ってきたのは、巨大なうさぎのぬいぐるみを抱えた少女レジィだ。


「まぁた殿下……、あぁ、もう殿下じゃないのか。えっと、クロード様と何かあったの?」

 鋭い……。

 自分より8つも離れた女の子に見透かされた私は、彼女から視線を逸らしながら「ま、まぁ……」と答える。


「やっぱり。で、今回は何? また長期の出張から帰ってこない、とか?」

「うっ……!!」

 当たらずしも遠からず。

 長期、かはわからないけれど。


「リゼの寝てる間にブックデルに行っちゃってたんだって」

「ナニソレ家出?」

「出張ですっっ!!」

 結婚して約2ヶ月。

 関係も良好だし、喧嘩をしたわけでもない。

 それに、出張とはいえ、私のためでもあるのだ。

 きっと心配させないように、さっと行ってさっと解決してさっと帰ってこようと思ってのことなんだろうけれど……。


「余計に心配するわ馬鹿たれぇぇえ!!」

 私の突然の叫びにビクッと肩を跳ね上がらせるクララさんとレジィ。


「リゼがここまで怒り狂うところ初めて見たわ」

「まぁねぇ……。心配させたくなかったあいつの気持ちもわかるけど、リゼからすれば心配以外の何者でもないし、むしろ置いていかれた感万歳だものねぇ」


 クララさんはどうどう、と私の頭をぽんぽんと撫でながら言うと、思い立ったように「そうだ」と声を上げた。


「あんた、ブックデルに行っちゃいなさい」

「「エェッ!?」」

 唐突なクララさんの提案に私とレジィの声が重なった。


「え、で、でも、食堂は? 少し前に1週間もお休みいただいたばかりなのに」

「大丈夫よ。たくあんは今あんたが大量に出したやつでしばらく賄えるだろうし、ちょうど今日からレジィも学校は長期休暇でしょう? こき使ってやるつもりだから、あんた1人抜けるくらいどうってことないわよ」


 さらりと言ってのけたクララさんに、「レジィのスケジュールが海坊主に監視されてる……」と身震いするレジィ。

 長期休暇のたびに手伝いをさせられているレジィは、もう立派な料理人と言えるほどに料理の腕も磨いている。

 昼間の忙しい時間帯に働きに来てくれているレジィの母親であるセレさんと同様、神殿食堂の戦力とも言える存在だ。


「てことで、午後から行ってらっしゃいな」

「今日!?」

 そんな急に……。

「ただし、1人じゃ危険だから、強力な護衛も用意しておいてあげる」

「強力な護衛?」


 誰だろう?

 ジェイドさんかな?

 いや、ジェイドさんは今西の森の魔物討伐に行ってるって聞いたからそれはないか。

 じゃぁ一体……?


「あの、強力な護衛って?」

 私が尋ねると、クララさんは口髭をくいっとあげてにっこりと笑った。


「それは、午後からのお楽しみよ♡」


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