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第109話 偽たくあん聖女23


 もう誰かどうにかしてくれ。

 

 ただひたすらそう願っていたようにも思う。

 それくらい道中の居心地の悪さといったらなかった。

 何かにつけてお互いに突っ掛かり合うし、それだけならまだしも私にまで意見を求めてくるし、何なんだあの2人。


 なんていうか、仲良すぎじゃない!?

 実は好きなの!?

 痴話喧嘩に巻き込まれてるの私の方なんじゃないの!?


 そんな気にすらさせられ、ただひたすら疲れた。


 だからだろうか。

 ベジタル王国でラズロフ様と別れた後が妙に穏やかで静かに思えたのは。

 ラズロフ様は元婚約者でも兄でもない、ライバルだと私の中での認識は大きく変わったような気がした。



 そして私は、数日ぶりに通い慣れた大きな木製の扉を開く。



「ただいま戻りましたぁー……」


「おかえりなさぁぁぁぁぁい!!」


 神殿食堂の扉を開け顔を覗かせると、ぬるっとすぐそばから巨体が目の前を陣取り、私の身体にぎゅうぎゅうと抱きついてきた。

 し、死ぬる……!!

 でもこの感じ、久しぶり。

 両極端な空気感を体験した後のクララさんの日常通りの様子に、何だか一気に力が抜けてきた。


「ただいまです、クララさん。お店の方、ありがとうございました」

「いいのよっ。レジィをこき使わせてもらったから、意外と大変じゃなかったわ」


 レジィ……ごめんよ。

 今度美味しいショコリエたくあん作ってあげよう。


「クラウス、よりにもよってラズロフ殿とリゼを2人きりで旅させるなんて何考えてるの? うちのリゼがケダモノ兄さんに襲われたらどう責任取ってくれるつもりだったんだ?」

「いや、誰よケダモノ兄さんて……」


 もはやラズロフ様=兄さん……。


「ラズロフ殿だよ!!」

「あぁ、ラズロフ? 大丈夫よ、ラズロフがリゼを襲うなんてことできないことはわかってたもの」

「どこからくるんだよ、その信頼……。俺は2人旅してきたって聞いた時心臓止まるかと思ったよ」


 普通は元婚約者と2人旅させようなんて思わないわよね。普通は。


「ラズロフがリゼのこと好きなのは昔から何となく気づいてたし、彼が実はものすごく真面目でお堅い子だっていうのも知ってたからね。だからまぁ、婚約破棄云々を聞いた時は驚いたものよ。大切に思ってるのは今もそうだろうし、リゼを無理矢理どうこうしようなんて考えないけど、リゼが危険に晒されたらきっと守ってくれるって思ったから、ラズロフを選んだのよ。ほーんと、ツンデレって厄介よねぇ。ま、そのツンデレのおかげでクロードにチャンスが巡ってきたんだろうけどっ」


 想いを寄せられていた本人すら気づいてなかったことを、そんな前から知ってたのか、この人。

 ていうかその気持ちを利用されてたラズロフ様が可哀想すぎる。

 今度美味しいショコリエたくあん作って送ろう。


「で、リゼ? 手、出された? 出した?」

「出されてませんし出してませんっ!!」


 疲れた……。

 何この疲れの上乗せ。


「なぁんだ、つまらない」

「つまらなくていいんだよ、全く」

 はぁ、とため息をつきながら近くの椅子を引いて座るクロードさん。

 彼もクララさんのこのペースにやられたようだ。


「で? どうだった? 偽たくあん聖女問題。当然解決させてきたのよね?」

「はい。……アメリアでした、偽たくあん聖女。今ブックデルの貴族牢に収容されていて、ベジタル王国でラズロフ様とカロン様の話し合いの後、処遇が決まります」


 もうラズロフ様とカロン様は話し合いに入っている頃だろう。

 私の評判を落とすことを目的としているとはいえ、ブックデルでも危害を加えていたのだから、ベジタル王国だけの問題ではない。

 カロン様にまた面倒をかけてしまうのは申し訳ないけれど、彼らに託すしかない。


「そう……。リゼ、大丈夫?」

 気遣うように私を覗き込むクララさんに「大丈夫ですよ」と気丈に返す。

 胸はもう、痛まない。

 だって、私の大切なものは、ここにあるから。


「ん。ならよかったわ」

「リゼさんの伝説がまたひとつ増えちゃったもんねぇ。その名もダークたくあん聖女」

「いやぁぁぁぁぁぁやめてぇぇぇぇぇえ!!」

「え!? なになに!? ダークたくあん聖女!? 何それ面白そう〜詳しくぅぅぅぅぅっ」

「ダメぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」



 こうして私の日常は、再び続いていく。


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