第四十一話 火の守り番 3
死体の描写があります。閲覧注意。
早苗と豊子は駅の方へと向かった。
家々の塀の間や、小学生くらいの女の子を見かけるたびに、かつ子ではないかと立ち止まって確認をした。
「このまま、駅じゃなくて、橋を歩いて向こうにまで行ってたら、どうしよう。」
「その時はその時よ。今は先ず駅の周りを見てみましょう。」
早苗は強ばった顔で答えた。
空は半分が雲に覆われ、半分からは星が見えた。夜になると雪になるのかもしれない。
寒さで凍えるかつ子を想像して、早苗は足を早める。
もしかすると、自分の産むはずだった子ども。
それはかつ子と同い年だ。
普段は考えていないことでも、かつ子を見た後は、当て所もなく考えてしまう。
ぎゅうっと手を握ると、柔らかな手袋。
珠代の手袋だ。
普段が普段なので、珠代の行動は信用していないが、早苗に対する情については信頼しつつある。
家で早苗と豊子が帰るのを待っているはずだ。もしかすると、かつ子が家に帰りにくいと早苗に泣きついてくるかもしれないと、珠代が留守を引き受けた時に言った言葉が思い出される。
遊びに行って遅くなった。
それならどれほど安心だろうか。
何人もの子どもの死体を見た。
親に縋り付いたままだったり、ぐったりと横たわったままだったり。
珠代も豊子も何も言わないが、きっと同じようなものだろう。
人が居なくなるのは辛い。
早苗は残照の中、豊子と一緒にかつ子を探しまわった。
日が暮れて、一時間以上は経っただろうか。
早苗と豊子は橋の方から戻って歩いていた。
夜になった河川敷からは風が吹き、寒さで体が震えた。その上、夜目が効かないので、女二人だけで探すことは容易ではなかった。
おそらくもう夜の七時に近い。
一度、家に帰って久間木たちに様子を聞こうということになった。
駅に戻り、そこから家に向かっていると、寒さに震えながら豊子が言った。
「子どもが出来るって、どういう感じなんでしょうね。」
早苗に言っているようで、ただの独り言だった。
早苗は黙って豊子の手を握ると、ずんずんと歩みを早めた。
雪の降りそうな雲になってきた。
どこまでも鈍く重い。
星はひとつも見えなかった。




