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1-38 再びクエストへ

「ねえ、ブリちゃん。

 一緒にお風呂に入らない?

 こんな美女と混浴よ~」


「嫌っす。

 犬はお風呂が嫌いなんすよ。


 そういうところまでリアルな設定なんですから。


 それにミミさんは、俺の毛がお湯で濡れて、ぺったりとしたところが見たいだけっすよね。


 あと犬を洗ってみたいとか」


「あっちゃ、バレたか~。

 なんでわかるかなー。


 動物的勘?

 ああいうのってネットでは見た事あるけど、一回実物で見てみたいなと思って」


「もう!

 ご遠慮申し上げるっす。

 お一人でごゆっくりどうぞー」


「残念~」


 風呂に浸かってから、お部屋義でゴロゴロしていると美紅からフレンド通信が入った。


「おや、やっと返信が来たか。

 イーグルからも返事ないしな」


「いやー、こっちは今ゴタゴタしていてさ。

 バッファローバーガー、早く食いたいー」


「そうなん。

 こっちは円満そのものだけど。


 クエストは困難を極めているけどね。


 明日そっちへ行く予定だったんだけど、ヒントをもらっちゃったから、もう一回狩猟場で捜索よ~」


「そいつは残念」


「明日はまた別の獲物を狩るとするわ。

 本当は鳥系が欲しいんだよねー。

 あ、熊肉いる?」


「うーん、微妙?

 でも遊び人の美紅ちゃんとしては食っておくべきかな」


「ワニも捨てがたいよね。


 特に見かけてないけど、狩猟マップによると大河ゾーンあたりにいるみたい。


 オーストラリアとかで食べてくる人も少なくないし。

 もしワニがいたら狩ろう」


「そういうのもあったような気がするよね。

 あそこは何回も遊びに行ったけど」


「あんたって、そういうとこ本当にまめよね」


「リアルでも遊び人ですので」


 そのせいもあり、東京に残ったものらしい。


「そっかあ、じゃあまたそのうちにねー」


 そして美美はチワワを捕まえて、ヌイグルミ代わりにして寝床に潜り込んだ。


 ワンコはキャンと一言抗議したが、ガンスリンガーの剛腕に、たかが一介のチワワ風情が逆らえるはずもないので、即座に諦めて寝た。


 美美は彼を抱え込んで、とっくに寝てしまっているので。


 翌朝は、またバッファロー御飯(美美は野牛丼)にして、早めに出かけた。


 さすがの美美も昨日は歩き疲れたので、早々と寝たので朝は早かった。


「さってと、じゃあブリちゃん。


 手近なところで、ゲート付近のレンジャーの詰所にでも行こうか」


「もうちょい行くと監視塔があるっす。


 たぶん、入って握手の方向にちょっと大きな木のような物が見えたのが、たぶんそれっすね。


 確かに小屋もあった気がしますわ」


「よく見てるわねー。

 あたし、前しか見てなかったわ」


「ミミさんは前向きな人ですからね。

 でも、たまには周りも見た方がいいっすよ」


「そうしよ。

 あんたを連れてきて、本当に正解だったわー。

 じゃあ、そういうコースから」


「その後で一回、第二森林の森側の水生成プラントで覗いてみますか。

 採集なんかも兼ねて」


「いいわねー。


 食料もなるべく取っていかないと、あちこちがピーピー言っているから。


 生産系の連中の分も確保しないといけないんだから」


「じゃあ、ボチボチいきますか。


 索敵は俺がやりますんで、抱いていってほしいっす。


 さすがにチワワのままじゃ、ミミさんについていけないっすから」


「了解~」


 それから狩猟マップとマップコマンドの地図を照らし合わせて、レンジャーの小屋へと狩った。


「たぶん、誰もいな思うけどね」


「そうっすね。

 レンジャーはNPCがやっているのが普通すから。


 中には現実世界でレンジャーになりたかった変わり者がいるとか、動物好きで近くで毎日監視していたい人とかくらいでしょうが、そういう人はプレイヤーとして閉鎖施設から弾かれてしまっているんじゃないですかね」


 そして、レンジャー小屋へ辿り着いたのだが、案の定扉はガタつく程度で開かない。


 大きさは、標準のログハウスサイズで素敵なデッキも備えている。


 床下なんかも怪しいものだ。


「やっぱり駄目かあ。

 それ、犬の鼻の出番よ。


 あたしも探すから。

 あと、下からの目線でどこかにスリットが隠れていないか見てね。


 解除ボックスは、こういうところの方が隠しやすいもの」


「そういう安直なところにあるかどうかは、わかんないっすけどね」


「まあ、まずは手始めってところで」

「はいはい」


 そして、犬が周囲を嗅ぎまわっている間に、美美も怪しそうな部分は丹念に見て回った。


 おそらく、中に入るためにはまたスリットにカードキーを差し込まないといけないのだろう。


 もうスリットの現物は見せてもらった。


 なんというか、本当に薄くて目立たない物で、コンクリートの壁なんかにあったら見過ごすのが普通といった代物だ。


 通常ならばスリットの周囲にあるだろうベゼルさえ存在しない。


 スリットというよりも、単なる『切れ目』といった方が正しい。


 狩猟ギルドの人達も、クエストが発令され、探す範囲があのゲート限定であるのでなければ、到底見つからなかっただろう。


 ログハウスの部材と部材の隙間のよく見えないところにあっただなんていったら最悪なのだ。


 ただ、あのゲートのスリットも『探せばたぶん見つかる』レベルに収まっていた。


 そうでないと、難攻不落なクエストになってしまう。


 今回も、わざわざ二段階になっていて、順に追っていけば、なんとかこのようにチャレンジも可能だというものなのだ。


 元々、期間のないクエストには、こういう気の長い内容もあったりするのだし。


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