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〈完結済み〉俺は善人にはなれない   作者: 気衒い
第6章 裏切りは突然に

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第78話 宣戦布告






「アスターロ教の本部はどこにある?」


「な、なぜ貴様がその名を……………」


「ああ。それはだな…………」


シンヤがしたたった一つの質問から始まったのはアスターロ教のこれまでの悪事の暴露だった。"四継"によってダートがその場から引き離された今、彼らの行動を邪魔する者は他にいない。しかし、それも持って、あと数分だろう。その限られた時間の中で簡潔に分かりやすく、かつ確実に質問の答えを引き出す為に説明していく。なぜ、そんなことをもっと前にやらなかったのか、何もこんな衆人環視の中で堂々とやることなのか、それならば裏でひっそりと組織を潰してしまえば良かったのではないか……………と多くの者は思うかもしれない。もしかしたら、同じクランのメンバーからも回りくどいと思われているかもしれない。だが、わざわざこんなことをしたのには訳があった。それは……………


「とまぁ、これがお前らの企んでいたことの全てだが…………今までだったら、お前らみたいなのはすぐに動いて潰しにいっていたんだが、今回は訳が違う。お前らはやってはならないことをした」


「やってはならないこと…………?」


「よりにもよって、俺のこの世界での親父とも言うべき者を手にかけようとした」


「な………!?」


「だから、映像の魔道具が使われている中で世界中にお前らのことを発信してやろうと思ってな…………これ以上に苦しく、屈辱的なことはないだろ?」


「き、貴様!」


「で、本部はどこだ?」


「そんなこと教える訳ないだろ!」


「仕方ない……………アスカ、やれ」


「はい!」


「お、おい。この私に何をする!?や、やめてくれ!く、くそおおおお!こんなはずでは〜〜ー!」


直後、本部の場所もバレて用済みとなった"人猟役者"のクランマスターはシンヤの手によって葬られた。このわずか数分の間に起こった出来事はこれを見ていた者達を驚愕させ、ほんの少し前まであった不安を上書きした。一時はただの変な集団が気が狂って起こした暴動か何かだと思っていた人々も彼らの思想を聞き、危機感を覚えると同時に絶望しかけたのだ。しかし、ブロンを救い悪事を暴いたシンヤ達がこれから一体、何をするのか…………彼ならばもしかしたらという思いから、続きが気になってしまい、壇上を見つめることしか出来なかった。だが、そこでタイミング悪く、離れた場所にいたあの男がシンヤ達の存在に気付いてしまったのだ。


「へ〜どれどれ…………って、おい!お前、そこで何をしてる!」


これに対して、シンヤは何も答えず。時間を稼いでくれた"四継"に対してのみ、こう言った。


「よく言ったな、お前ら。見直したぞ」


そして、その後に続けて言った言葉はまたしてもダート個人に対してではなく、ここにはいない、ある者達に対してだった。


「おい、泥被り教!お前ら、覚悟しとけよ?俺を怒らせたら、どうなるか身を持って知れ……………ってことで今から俺達と全面戦争な?……………よし、お前ら。もういいぞ。やれ」


――――――――――――――――――――








「シンヤからの合図、聞いたか?」


「イヴ、落ち着きないから、心配」


「馬鹿にするでないわ!ちゃんと聞いておったわ!お主らこそ、大丈夫であろうな?」


「今更だが、人選はこれで良かったのか?イマイチ不安なんだが」


「何を言っているんデス!ミー達は部下を持つ立派な幹部デス!もっとしっかりしやがれデス!」


「エルが珍しくいいことを言ったの」


「あのさ、こんな無駄話している暇はないんじゃないの?こっちはもう動き出してるよ」


「そうよ!ワタシのところも奴らを発見したわよ!今から、叩くわ」


「そうか…………じゃあ、通信を切るか。ではそれぞれの武運を祈る!終わったら、落ち合おう!」




この時、世界の各地で黒衣を纏った集団が次々に現れ、アスターロ教を壊滅させる為に動き始める。それを見た人々はフリーダムで起こったことを完璧に飲み込めておらず、まだ状況の分かっていないところも多々あったが、これだけは理解していた。その黒衣の集団はブロンを助け、アスターロ教の悪事を暴き、圧倒的な強さで"人猟役者"のクランマスターを討ち取った男と全く同じ格好をしているということを。






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