第46話:クニミツ
「どういうつもりなのか、説明してもらおうか?」
「どういうつもりとは?」
「まどろっこしい話はなしにして、単刀直入に訊くぞ…………お前、何者だ?」
「あれ?自己紹介って、したよな?…………まぁ覚えてないんなら、もう一度するぜ!俺はリック!ただの冒険者さ!」
「…………なるほど。あくまでもシラを切り通すつもりという訳か」
俺は静かにそう言うとゆっくり刀を引き抜いた。その間、リックはというと抜き放たれた刀が控えめに言っても名刀を遥かに凌駕する程のものだと気付いたのか、その視線は真っ直ぐと刀に釘付けだった。そして、俺が軽く刀を振るう動作で一気に現実へと引き戻され、今度は俺の放つ殺気に戦慄を禁じ得なかった。
「わ、悪かったって!別に揶揄うとかそんなんじゃ……………」
「言い訳はいい。とにかく、俺の質問に答えろ」
「……………」
リックは俺の雰囲気から、次に言葉を間違えれば自分の命が危ないことを悟ったようだった。そして、リックは数回の深呼吸の後に口を開いた。
「俺は……………」
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「ここでいいんだな?」
「ああ」
リックに案内されて辿り着いた場所は刀を始めとしたあらゆる武器が売られている店だった。ふと、中を見れば腕を組みながら椅子に座って眠りこけている爺さんが1人いるだけだった。
「ありがとう」
「いや、いいんだ。それよりもこちらこそ、ありがとう……………あのな、俺は」
「少しでも気持ちに迷いがあるのなら、外で話を聞いてろ」
「シンヤ……………」
「そういう気持ちって、とても大切なものだと思う。だから、感じていられる内は存分に感じた方がいい。別にそれ自体は罪でもなんでもないからな……………なぁ、ビオラ?」
「うん。シンヤと彼の話を聞いてから、動いても遅くはないと思うよ」
「……………」
「じゃあ、俺達は行くわ」
そう言って、店の中に入る俺達。店内を見回すと凄い数の武器が売られている。だが、そんなことよりも気になったのは俺達が店に入っても寝たままな爺さん………………いや、寝たふりを続けている爺さんだった。
「芝居が下手だな、爺さん。俺達が店に入った瞬間、眉毛が一瞬ピクリと動くのが見えたぞ」
「……………んんっ!これを芝居と言われちゃどうしようもねぇな。気配や動きを悟られないようにする技は冒険者にとっちゃ当たり前のことだぞ?」
「アンタは武器屋の店主であって、冒険者ではないだろう?それとも何か?………………過去に冒険者でもしていたのか?」
「妙な詮索はよしな。お前達は武器を買いに来た客で俺は武器を売る店主……………目的が違うだろ?」
「いや、俺達の目的はアンタだ」
そのタイミングで俺は何もない空間から、金のメダルを取り出してこう言った。
「初めまして。俺はシンヤ・モリタニ、冒険者をしている者だ。で………………アンタが稀代の天才鍛冶師、"クニミツ"で間違いないか?」




