第43話:呪い
「ワシは…………神によって生み出された存在だ」
「っ!?」
「しかも最初に生み出された人や魔物と違い、ちゃんとその自覚もある。おそらく、それはこの世界でワシだけだろう」
「それは……………金鎧を守る守護者として、神が?」
「ああ。この世界に神にとって都合の良い融通の効く存在が必要だったのだろう」
「つまり、お前は神側の存在という訳か………………だが、いいのか?そんなにベラベラと大事な情報を喋って」
「お前さん達はあれだろ?いわゆる、神に対して敵意を持つ者達……………だろ?」
「…………もし、そうだとして、だったら尚更まずくないか?この状況はお前からしたら、敵に塩を送っていることになる」
「……………ワシはな、もう疲れたんだ。確かに最初のキッカケは神なのかもしれない。だが、今は今を一生懸命生きている者達がいる。それを神の機嫌一つでどうこうするのはあまりにも報われないだろう?だからもう、こんなことは終わりにしたい」
そう言って、何もない空間に手を翳すアカシック。この光景はここ最近に見た為、この後の展開は容易に想像がついた。
「これを受け取ってくれ」
それは案の定、俺達の求める最後の金鎧……………その脛当てだった。
「……………本当にいいのか?これを巡って、また争いが起きたらどうするんだ?」
「お前さん達ならば、安心して託せる。現に他の守護者達も託しているんだ。それはシンヤに並々ならぬものを感じたからに他ならない」
「確かにそんなようなことを言われたな」
「お前さんは特別だからな」
「特別……………それで思い出したが、お前が夢で言っていた"異世界に渡った背景と呪い"についてはどういうことなんだ?お前はそれらについて、何か知っているのか?」
「そうか。それについても話しておかなければな」
アカシックは深呼吸をするとゆっくりと語り始めた。
「まず、シンヤをこの世界へと送り込んだのは神だ。それもワシを生み出したのと同じな。理由はこの世界の改革の際にちょうどいい手駒が欲しかったのだろう。それに他の世界の異分子が混じることでこの世界全体に刺激を与えることも狙っていたと思われる。なにせ、前任者は失敗してしまったのだから」
「前任者?」
「お前さんの父親だ」
「っ!?………………いや、そんなはずはない。親父は言っていた。"とある王国に勇者召喚をされた"と」
「その王国に色々と吹き込む存在がいたとしたら?」
「っ!?まさか」
「ともかく、"キョウヤ・モリタニ"は失敗した。しかし、そもそもそれ自体が神にとって可能性の低い賭けだったのだ。改革を試みる度に異世界人を取り込む。それを何度試しても結局、神の思うようにはいかない。それほど異世界人にとって、この世界は生きていくには厳しい環境だったからだ」
「……………俺やアスカもその被害者だってことか?」
「そちらにいるお嬢さんもな」
「っ!?サクヤもか」
「だが、そんな神による転移もシンヤが最後となったのだ」
「俺が?」
「ああ。シンヤは神の理解の範疇を超えていた。シンヤがこの世界にやってきてから、起こった数々の出来事は全て本来起こり得ないはずのイレギュラーなものばかりだった。神はそれに恐怖し、シンヤを手駒にするのはやめた。その代わり、自分に牙を向けないよう、抑止力としてシンヤに呪いを掛けたのだ」
「呪い?」
「ああ」
アカシックが放った次の言葉は俺の想像の遥か上をいくものだった。
「シンヤに掛けられた呪い。それは………………シンヤに対して、一度でも敵意を向けた者が死んでしまうというものだ」




