第41話:神社
「………………」
最後の金鎧がある場所は俺が元いた世界にあった神社と瓜二つだった。結界を通り抜けた直後、鳥居を潜り、長い石段を登り切ると目の前には参道が続いていた。その先には本殿があり、そこに辿り着くまでに手水舎・灯籠が脇を固め、他にも社務所や絵馬掛け、狛犬などが俺達を出迎えてくれた。本来の神社ならば、色々と作法があるのだろうが、そんなものは知ったことではない。俺達は他のものには目もくれず、真っ直ぐと本殿を目指した。そうして辿り着いた本殿だが、その目の前には賽銭箱があり、鈴のついた紐までもがぶら下がっていた。どうやら、ご丁寧に本来の神社をここまで忠実に再現してくれているらしい。まぁ、はっきり言って、ありがた迷惑だが。
「そなたらがお客人か……………久しいのぅ」
そんな中、本殿に座禅を組んで座っていた見た目が仙人のような爺さんが開口一番にそう言ってきた。
「カ〜ッ!!ワシはまだまだ爺さんと呼ばれる歳ではないわ!!」
「んじゃ、ジジイ」
「余計、酷くなっとるわ!!ってか、悪口じゃろ、それ」
変なジジイはそう言うと"よっこらせっ"と呟きながら、組んでいた足を元に戻そうとした……………その瞬間、
「あだぁ〜〜〜っ!!!ワシとしたことが!!」
「どうしたんだ?」
何故か、辛そうな顔でのたうち回るジジイを冷たい目で見下ろしながら、俺は質問した。
「あ、足が痺れてしもうたんじゃ!!そ、そなたら、誰でもいいから、肩でも貸してくれんかの?」
「「「「「あ、無理」」」」」
「そ、そんなぁ〜〜〜!!!」
こうなるのなら、何故座禅など組んでいたんだ?もしかして、カッコいい登場でもしたかったのか?まぁ、どちらにせよ……………
「あた、あた、あた、いで〜〜〜っ!!!」
変なジジイだ。
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「そなたらの狙いは分かっておる……………金鎧じゃろ?」
まるで先程のことなどなかったかのように振る舞うジジイ。生まれ変わってもこいつにだけはなりたくないが、その厚い面の皮だけは少しだけ羨ましいとも思った。
「随分な言われようじゃな」
そして、今更心の中が読まれていることぐらいでは驚かない。このジジイならば、そのぐらいのことはやってのけそうな気がしたからだ。
「分かってて何故、悪口言うの!?」
「おい、ジジイ。とっとと隠してるもん寄越せ」
「まるでやり口がチンピラじゃの」
ジジイは軽くため息をつくとこう言った。
「その前にまずは自己紹介からじゃ。ワシの名は"アカシック"。この本殿に住まう者じゃ」
「俺はシンヤ・モリタニ、冒険者をしている。そんでこいつらは俺の仲間達だ。よろしく」
「おぉ、よろしくのぅ」
「色々と無礼を済まなかったな」
「いいんじゃよ、反省しておれば」
「じゃあ、反省してるから、金鎧をくれ」
「そなた……………相変わらず、凄いのぅ」
初対面なはずなのにこの爺さん……………アカシック相手だとこれだけの冗談が言えてしまう。その理由は単純明快だった。
「凄くないだろ。なんせお前が俺達を受け入れてくれることは分かってた。たとえ俺がどれだけ失礼な態度を取ろうともな」
「ほぅ?」
アカシックは試すような顔で俺を見つめてくる。そんなアカシックへ俺は自信満々にこう言い放った。
「お前だろ?………………俺の夢に出てきた奴は」




