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〈完結済み〉俺は善人にはなれない   作者: 気衒い
〜After story〜

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第13話:不審者





「たのも〜〜〜!!!」


その元気な声は早朝のクランハウス全体へと響き渡った。そして、突然起きたこの事態に警戒を強めるクランメンバー達。今日が休みでまだ寝ている者もいるだろうに本当に迷惑なことこの上なかった。


「ティア、確認なんだが今日の早朝に誰かが訪ねてくるといった予定は?」


「ありません」


「バイラ、再度確認なんだが何か用があって、外部から訪ねてくる者は?」


「ウチが担当した者達の中で本日、こんな時間から、あんな馬鹿でかい声で訪ねてくるような不届き者はいないアル」


「だよな」


俺は側に控えるティアとバイラに確認を取った。そもそも何者かがクランハウスへと近付いてきていることは随分と前に分かっていた。しかし、相手からは害意や敵意、ましてや殺気など微塵も感じなかった為、クランメンバー全員に対し、こっちで何とかするから大丈夫だと通信の魔道具を使って伝えていたのだが……………やはり、あのような声を出されては流石にみんな反応せざるを得なかったようだ。ちなみに俺とティア、バイラはたまたま起きて応接室にて、紅茶でも飲みながら駄弁っていたところだった。


「あいつか」


「消しますか?」


「いや、いい」


「一体何を考えているアル?」


声の発生源は門の前にいる1人の女からだった。右半分が黒、左半分が白の短髪で右目が金色、左目が赤色という少し変わった容姿をしていた。そして何故か、身体全体を覆うローブを着ており、フードだけが唯一外れていた。そして、これまた何故か、ドヤ顔で立っていた。


「あいつ、あんな顔で突っ立ってるが俺達が出ていかなかったら、どうする気だ?」


「そんなことまで考えていないんじゃないですか?」


「は?俺達が出ていく保障なんてどこにもないだろ」


「単にアホなだけなのか。それとも……………外から来た者という説はどうアル?」


「何故、そう思う?」


「ウチらのことをよく知っていたら、まずこんなことはしないアル。ただでさえ、よく分からない奴は門前払いしているのに最近は入団希望者が多い影響でいちいち馬鹿には構っていないアルから」


「なるほどな。こんなことをしても無駄だと分かる訳か」


「だから、フリーダムの外から来たと……………でも、外とは言ってもどこでしょうか?別に自惚れる訳ではありませんが、私達の知名度は相当高いはず。それこそ、知らぬ者はいないというぐらい。特に同業者ならば、こんなことをして、どうなるか結果は見えているでしょうに」


「つまり、俺達のことを知らない上に冒険者ではない不審者と………………よし、無視しよう」


「「は〜い」」







「頼むよぅ!入れてくれよ!!やっと!やっと!辿り着いたんだから!!」


放置して5分後、問題の不審者が喚き出した。


「よし、入れよう。いくら近隣に人が住んでいないとはいえ、うざい」


「はい。入れましょう……………うざいですが」


「はい。入れるアル………………うざいけど」


そう言って、玄関から出ていき、門を開ける俺達。


「うぅ〜ありがとうぅ〜!」


すると、泣きながら礼を言ってくる不審者。俺達は若干、引きつつもなるべく距離を取って、クランハウスの中へと先導した。








「じゃあ改めて、ぼくの名はビオラ!よろしく!」


「その前にまずは謝罪が先だろ。今、何時だと思ってる」


「っ!?……………ご、ごめんなさい」


「それもアポなしで急に訪ねてくるとか、正気の沙汰とは思えません」


「ううっ、ごめんなさい〜」


「改めなくていいし、よろしくしなくていいアル。茶を飲んだら、さっさと帰れアル」


「ごめんなさい〜〜〜!!!邪険にしないで〜〜〜!!!」


俺達が軽く殺気を出して追い詰めるとまたもや泣いて喚き出す不審者……………おい、涙や鼻水を垂らすな。カーペットが汚れるだろうが。


「………………それ以前に聞きたいんだが」


「っ!?な、何かな!?」


俺が声色を変え、努めて穏やかに質問すると途端に食いつく不審者……………なんか、さっきから素直すぎる反応だな。まるで動物みたいだ。


「お前、ここに辿り着くまでに随分と時間がかかったようだが……………何でクランハウス周辺をうろちょろしてたんだ?」


「ぎくっ!?」


「フリーダムの住人に聞けば、一発で分かる場所だし、そもそもそんな分かりにくいところに建っていないはずだが」


「い、いや、その」


「もしかして、お前」


俺はそこで一呼吸おくと再び口を開き、こう言った。


「実はとんでもない方向音痴なのか?」


「………………はい。実はそうなんです」


この時から、俺は雲行きの怪しさを感じ取り始めたのだった。





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