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〈完結済み〉俺は善人にはなれない   作者: 気衒い
第14章 獣人族領

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第321話 全面戦争3






「では我らも向かうとするか」


軍団(レギオン)"殲滅連合"の副軍団長(レギオンマスター)、レインは仲間達へとそう呼びかけ、自身の武器を取り出した。"殲滅連合"のメンバーは親クランも傘下もみな、魔道具国家"マジック"の出身者で構成されている。"マジック"は魔道具の生産量・保有量共に世界一であり、各地から魔道具の研究者がこぞって集まり、日夜研究に明け暮れている国家として有名である。そうした場所で生まれた彼らは幼い頃から、魔道具に触れ、その造詣も深かった。そして、その魔道具に対する知識と技術が冒険者としての活動に大きく貢献するようになるのは必然といえるだろう。


「"魔装(マジック・ウェポン)"」


魔装(マジック・ウェポン)………………それは魔道具を改良し、武器・防具に組み込んだものであり、彼ら独自の技術力から生まれたものだ。これによって、攻撃力と防御力が格段に跳ね上がったのは言うまでもなく、それに加えて他では見られないある特徴まで兼ね備えていた。


「行くぞ」


それは低空飛行しながら戦場を駆け回り、敵を翻弄するトリッキーな戦術が可能であるということだ。さらに言えば、軍団(レギオン)の幹部ともなれば、低空だけではなく上空を飛行することもなんら問題はない。つまり、彼らは通常では考えられない戦い方と力により、今まで数多の強者と戦い勝ち進んできたのだ。


「我々の力を見せてやる」


そして、今回も今までの敵同様、この魔装(マジック・ウェポン)を駆使して、次々と敵を


「ぐはっ!?」


「な、なんだとっ!?」


「そ、そんな…………馬鹿な…………」


討ち取ろうとしたのだが、そう上手くはいかなかった。何故ならば、縦横無尽に動き回る彼らをそれ以上の速度で追い回して薙刀を振り回し、各個撃破していく者がいたからだ。


「き、貴様は……………"玄舞"アスカ!?」


「あら、私のことをご存知で?」


「当たり前だろ!」


カグヤに総指揮を任せ、久しぶりに大暴れできると喜んで戦場を駆け回るアスカがそこにはいた。しかもそれだけではない。


「く、くそっ!?なんなんだ、この子供達は!?」


「すばしっこい上に……………ぐはっ!?……………つ、強……………い」


「わぁ〜い!3人倒した!!」


「まだまだ!僕は5人だぞ!」


「それ〜!追いかけろ〜!」


彼女が率いる玄組(くろぐみ)のメンバーである子供達もまた元気に戦場を駆け回り、己の得物を使って敵の数を減らしていた。


「あらあら〜………………あなた達!あまりはしゃぎすぎないようにね!」


「ん?戦場に何故、修道女の格好をした奴が混じってんだ?」


「さぁな?だが、あの子供達よりはいけるだろ!」


すると突然、どこからか修道女のような格好をした者が現れ、子供達の方へと向かおうとしていた。それを見た彼らは良い獲物を見つけたとあからさまに満面の笑みを浮かべ、武器を手にしてその者に突っ込んでいった。


「おりゃ〜!」


「残念だったな!俺達に目をつけられたのが運のツキ!!」


「ば、馬鹿!そいつはやめとけ!そいつは副長の……………」


「あら?……………そう。あなた達も救いを求めているのね」


仲間の制止を気にも留めず、突っ込んでいった男達は果たして


「「くぼおぁっ!?」」


いつのまにか、アーミングソードを手にしたその者によって宙を舞っていた。


「っ!?こいつが玄組(くろぐみ)副長、"聖女"テレサの力か」


「い、一瞬で2人が…………」


そして、まだまだこんなものではなかった。驚きで動けない彼らにさらなる恐怖が襲い掛かる。


「私達もいることをお忘れなく」


「っ!?玄組(くろぐみ)組長"剣姫"リーゼ!?」


「それだけじゃない!"豪雷"ロード、"羅針盤"トンパス、"漏電"ブレカ………………クラン"雷神"の連中もいるぞ!」


そんな慌てふためく彼らに対して、その場を代表したロードは一言こう言った。


「何を今更。"黒の系譜"に喧嘩を売ったとなれば、俺達がいるのも当然だろう」


「それはそうだ。お前達、一体何を慌てている」


そうロードに答えたのは"殲滅連合"の幹部だった。彼は数十人を引き連れて、いつのまにかアスカ達の部隊を包囲していた。よくよく見てみれば、先程からアスカ達に驚き慌てていたのは"殲滅連合"の中でも一部の傘下クランの者達だけだった。他は依然として、勢いよく敵へと突っ込んでいる。


「狼狽えるな。最初から分かっていたはずだ。奴らと戦うということはこういうことだと」


「っ!?は、はい!!」


「まぁ、見ていろ。お前達の抱えるちんけな不安などすぐに吹き飛ばしてやる」


幹部の男はそう言うと魔装(マジック・ウェポン)を使い、一気に上空へと飛び立った。


「す、凄ぇ!!」


「流石だ。幹部の方は一味も二味も違う」


「こうなりゃ、後は一網打尽だ!!」


幹部の男の行動に奮い立つ仲間達。そんな中、上空を見つめたテレサは何かを考え込んでいた。


「あらあら。どうしましょう…………………そうだわ。これを投げればいいんだわ」


「「「……………へ?」」」


連中が沸き立っている最中であってもその声は自然とよく響いた。テレサは周りのことなど意に介さず、腰を低くすると柄頭を手の平の真ん中に置いて、愛剣を立たせた。そして、次の瞬間………………


「……………それっ!!」


一気に腕を振り上げて、愛剣を上空へと勢いよく放った。


「「「ええええぇぇぇ〜〜〜!?」」」


今まで驚くことなく戦況を見守っていた"殲滅連合"のメンバーもこれには流石に驚きを隠さず、ただただ剣の向かう先を見つめていた。一方の幹部の男だが………………


「くっ!?なんて無茶苦茶な…………………だが、こんなもの」


最初は苦虫を噛み潰したような反応だったが段々、剣が近付いてくるにつれ、それはニヤリとした笑みに変わった。


「ふんっ!これでどうだ!!」


幹部の男は剣が刺さる紙一重の瞬間を狙い、横へと動いて回避した。


「我々の力を甘く見るな!魔装(マジック・ウェポン)はこのような動きも可能なのだ!そして……………こちらに牙を向いた貴様がどうなるか思い知れ!!」


幹部の男はそこから地上にいるテレサ目がけて一直線に急降下をし始めた。


「あらあら……………凄い代物ね、それ」


「ふんっ!今更、関心しても遅いわ!貴様はもう……………」


「じゃあ………………それ〜い!」


「え……………」


またもや間の抜けたような声を出したテレサ。それが合図だったのか先程、男が避けあらぬ方へと向かった剣が急速な方向転換をするとまたもや目標目掛けて、今度はさっきとは比べ物にならない程の速度で動き出した。


「く、くそっ!だが、持ち主をさっさと倒せばいいだけの話!あと少し、あと少しで………………ぐばあっ!?」


それは男の予想を超える速度だった。地上から約8m上空にて、男は背中から剣に貫かれた状態のまま、落下してきた。そして、そのまま身動きが取れず、剣は地面へと突き刺さった。


「「「…………………」」」


当然、幹部の男は衝撃に耐えられず死亡。仲間達はその光景をただただ唖然とした顔で見ていることしかできなかった。


「よいしょ…………っと。さて」


そんな中、悠然と男の元へと歩いていったテレサは剣を引き抜くと"殲滅連合"の者達へと振り向いて、こう言った。



「次は一体どんなものを見せてくれるのかしら?」



彼らが一斉にその場から駆け出したのは言うまでもない。


















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