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〈完結済み〉俺は善人にはなれない   作者: 気衒い
第14章 獣人族領

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第318話 連盟





「で?お前達は一体何者アル?」


バイラはクランハウスにある応接室にて、目の前に座る3人の客人?に問いかけた。


「は?まさか、俺達を知らないのか?」


「ふんっ。これだから、知性に欠ける者は」


「ガハハハッ!こりゃ、参ったな!」


バイラの問いに対して、三者三様の反応を示す者達。そこからは自分達の実力や名声が相当なものであるという自信に満ち溢れたものが感じられる。


「お前達みたいなのを知ってる訳ないアル。で?一体何の用アル?」


「くっ……………俺達を知らないだと?馬鹿にしやがって」


「誠に遺憾なことこの上ないな」


「俺達もまだまだだな!」


1人を除き、渋い顔をする男達。そんな男達の反応を他所にバイラは淡々と話を進め始めた。


「馬鹿にしているのはどっちアル?いきなり、3人でクランハウスへとやってきて、責任者を出せと……………お前達は使者としてやってきたアルよね?だったら、こちらも外交官であり使者の役割も担うウチが相手をするのが自然だとは思わないアルか?」


「うるせぇ!こちとら全員、副軍団長(レギオンマスター)だぞ!それが何だって幹部でもねぇ奴に相手されなきゃ

いけねぇんだ!」


「こんな奴と意見が同じというのは気に食わんが…………全くの同感だな」


「いや、"花棘(かきょく)"バイラも相当強いぞ?」


「こんな奴らが右腕なんて、軍団(レギオン)の底が知れるアルよ」


「何だと!」


再び、うるさく騒ぎ出す3人を見てげんなりとした気分になったバイラは思わず通信の魔道具を使い、ある者へと連絡を取った。


「お前ら、幹部ならいいって言ったアルね?」


そして、バイラのその発言から5分後、カグヤが応接室へとやってきたのだった。








「で?お前らがバイラの言っていたうるさいハエ共か?」


応接室に堂々と入ってきたカグヤは周りの視線もなんのその、バイラと入れ替わりでソファーにゆっくりと腰掛けた。


「おい!副軍団長(レギオンマスター)ですらねぇじゃねぇか!!」


「しかもハエとは失敬な」


「こりゃ一本取られたな」


何故か嬉しがる1人の男を除き、残りの2人は相変わらず不機嫌な表情で文句を言った。


「バイラ、お疲れさん………………で?お前らの用件は?」


そんな男達の反応を無視したカグヤは面倒臭そうに話を前へと進めようとした。男達はそれに対して不満げな表情をしつつも渋々、話をし始めた。


「ちっ……………まぁ、こいつでもいいか。実は俺達3人……………もとい3つの軍団(レギオン)から大事な話があるんだ」


代表して、最初に反応した男がカグヤの質問に答える。するとそれを聞いたカグヤは淡々と表情を変えることなく、こう言った。


「その前にまずはどこの誰なのか自己紹介しろよ。さっきのバイラの発言を聞いてなかったのか?こっちはお前らのことなんて何1つ知らないんだぞ」


「っ!?こいつ……………」


「本当に失礼だな」


「いや、"朱鬼(しゅき)"の言うことが100%正しいだろ」


「どっちが失礼なんだよ。そっちが用があるって言うから、こうして忙しい合間を縫って、お前らごときに時間を割いてやってるんだろうが。そっちから名乗るのがせめてもの礼儀だろ………………こんな常識のない軍団(レギオン)もあるんだな。ビックリしたわ」


「ぐわあああっ!むかつく!何でこんな奴にここまで言われなきゃならないんだ!」


「しかも発言の内容全てが我々に対する嫌味だ」


「仕方ないだろ……………なんせ俺達、常識ねぇし」


「で?お前ら、誰?」


「……………軍団(レギオン)"赤き剣群"の副軍団長(レギオンマスター)、クライだ」


軍団(レギオン)"殲滅連合"の副軍団長(レギオンマスター)、レインとは我のことである」


軍団(レギオン)"戦線騎士団"の副軍団長(レギオンマスター)、オーガニックだ。色々と悪かったな」


自己紹介を求めた張本人であるにも関わらず、彼らの発言中、カグヤはどうでもよさそうに欠伸をしていた。そして、自己紹介が終わるとほぼ同時に言った。


「へ〜………………で?用件は?」


「お前は名乗らないのかよ!」


「当たり前だろ。こんな非常識な奴らに名乗る名前なんてねぇよ。てか、そんなことはいいから早くしろって。いい加減用件を言わねぇとどっか行くぞ」


「っ!?わ、分かったから待てって!じゃあ簡潔に述べるぞ?俺達の話ってのは他でもない。お前らの軍団(レギオン)に対して、とある要求があるんだ」


「要求だと?」


クライの言葉を聞いたカグヤは鋭い目をして、3人を睨む。しかし、それに気付くことなくクライは話を続けた。


「こちらの要求。それは………………俺達の"連盟(ユニオン)"に入って欲しいというものだ」


「"連盟(ユニオン)"?何だ、それ?」


「"連盟(ユニオン)"とは3つ以上の軍団(レギオン)が集まってできる巨大組織のようなものだ。お互いの縄張りや財産に干渉することなく、有事の際は助け合う関係だ」


「ふ〜ん。でも"連盟(ユニオン)"なんて単語、今まで一度も聞いたことがないぞ」


「数が少ないから、それも当然だろう。加えて過去を遡ってもあまり事例がないのが実情だ。まぁ、有事の際とはいっても軍団(レギオン)があれば事足りるからな」


「だが、それでもお前らは手を組むと……………一体何故なんだ?」


「今後、より一層勢力を拡大していこうと思ったら、その方がいいと思ってな………………当事者を前にして言うのもなんだが"碧い鷹爪(あおいようそう)"や"紫の蝋"は欲を出しすぎてしくじった。だが、それはあくまでも軍団(レギオン)レベルでの話だ」


「それが"連盟(ユニオン)"となると話は変わってくると?」


「ああ」


「へ〜……………で、それにアタシらも加われと」


「そうだ」


「ちなみにそのメリットとデメリットは?」


「メリットは俺達とそういう関係になれることだ。それからデメリットだが………………これはデメリットになるのか?まぁ、いいか。お前ら"黒の系譜"が加入したら、持っている縄張りを全て差し出してもらい、それを俺達が共同管理する」


「は?」


「それから"連盟(ユニオン)"に入っている軍団(レギオン)同士は通常、立場が対等な関係であるがお前らは新米ということで俺達の軍門に下って………………」


「話にならん。帰れ」


「は?まだ話は途中だが……………」


「これ以上は聞くまでもない。そんな条件をアタシらが飲むと思っているのか?だいたいメリットが1つもないだろ。あ〜時間を損した」


そう言って腰を浮かせかけたカグヤにクライはさらに神経を逆撫でするような発言をした。


「分かってないな。お前らに拒否権はない。これは要求という名の命令だ。いいから俺達の"連盟(ユニオン)"に入れ。さもなければ……………」


「さもなければ?」


「俺達はお前らの軍団(レギオン)に対して総攻撃を仕掛ける」


クライの目は剣呑な光を帯び、殺気を飛ばしながら真っ直ぐとカグヤを見つめていた。それはつまり、彼の言っていることが本気であるということを表していた。


「……………なるほど。お前らの覚悟は分かった。ちなみに話は変わるんだが」


カグヤは浮かせかけた腰をソファーに再び戻すと足と腕を組んで座った。


「最初アタシが部屋に入った時にお前ら、言ったよな?副軍団長(レギオンマスター)ですらねぇ……………と。アタシじゃそんなに不満か?」


「そりゃそうだろう!俺達は軍団長(レギオンマスター)の右腕として看板背負ってきてんだよ!」


「我々とは立場が違う」


「お〜い。落ち着け〜。ヒートアップしすぎだぞ、お前ら〜」


男の制止も聞かず、不満を垂れる男達。それに対して、今度はカグヤの方が軽く殺気を飛ばし、こう言い放った。


「アタシもクランの……………そして軍団(レギオン)の看板を背負ってるんだが?しかも立場が違うだって?…………………お前らごときが一体いつアタシの上に立ったんだ?」


「っ!?」


「なっ、何だこの殺気は!?」


「おいおい……………だから、言わんこっちやねぇ」


3人はカグヤの殺気によって全く動くことができず、ただただその場で震えていることしかできなかった。すると、それを見たカグヤは通信の魔道具へと手を伸ばして、とある人物へと連絡をした。








―――――――――――――――――――――







それはシンヤ達がニーハの家でゆっくりと過ごしていた時のことだった。いきなり通信の魔道具が反応したのだ。実はこの時、既に滞在3日目となっており、ティアにニーハとガイドとの時間を楽しんでもらおうと思い、シンヤ達は未だ村を出てはいなかった。


「カグヤか?どうした?」


「今、とある3バカ軍団(レギオン)の使者が来てるんだけどよ、"俺達の軍門に下れ"とか、"縄張りを共同管理させろ"とか、いきなり無茶苦茶な注文をしてきてな。いい加減目障りなんだわ」


「なるほど。ちなみにお前はどうしたいんだ?」


シンヤの問いにカグヤはニヤッとした笑みを浮かべて言った。


「決まってんだろ」


「分かった。じゃあ、好きにしろ」


「いいのか?」


「ああ・・・二度と地上の空気を吸えないよう徹底的に潰してやれ」


「よっしゃ!流石はシンヤ!話が分かるぜ!」


「そういえば言うのを忘れていたんだが、俺達はまだこっちでゆっくりしていく。だから、その間の指揮はお前がとれ」


「えぇ〜そういうのはアスカに任せようぜ」


「これ以上、逃げるな。いい経験になるぞ。それにアスカが可哀想だ」


「ちえっ。分かったよ」


「それじゃあな………………あ、それとそいつらとの全面戦争の時に活躍した奴には報酬をやるって傘下のクランにも言っといてくれ」


「了解。じゃあ、シンヤ達はこっちのことを気にせず、ゆっくり楽しんできてくれ」


「ああ。悪いな、任せる」









「聞こえたか?」


静まり返った室内にカグヤの声が響く。男達は凄い形相でカグヤを睨みつつ、またしてもクライが代表して話し始めた。


「目の前にいるんだから、聞こえるだろ………………でも、本当にいいのか?」


「何がだ?」


「お前のその決断はつまり、俺達との全面戦争を意味する」


「そうだな。何かこんなことばっかだな。喧嘩を売られては買い、売られては買い………………そういえば、そのせいで滅んだ軍団(レギオン)もあったな」


「何が言いたい?」


「今回も全く同じ構図だろ」


「俺はあいつらとは違う」


「"碧い鷹爪"も"紫の蝋"も同じようなことを言っていたけどな………………まぁ、いいや。とりあえず、アタシらはお前らの要求には答えない」


「そしてその結果、俺達はお前ら軍団(レギオン)を再起不能になるまで総攻撃を仕掛けることになる………………今からでも遅くはないぞ?考えを改める気はないか?」


「その自信はどっから湧いて出てくるんだよ………………あ、言うの忘れてた。お前ら、そんだけの啖呵を切ったんだから逃げるなよ?」


「そんなことをする訳ないだろ!馬鹿にしているのか」


「ああ、じゃあ良かった………………まぁ、どこに逃げたところで」


そこから少し間を空けて、不気味な笑みを浮かべたカグヤは死の宣告とも取れるべき発言をした。


「アタシらに喧嘩を売った時点で逃す訳ないけどな。覚えておけ。どれだけ命乞いをしようが、お前らは他の果てまで追いかけて絶対に潰す。動き出した歯車は決して止まることはない」











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