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〈完結済み〉俺は善人にはなれない   作者: 気衒い
第10章 セントラル魔法学院

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第182話 回想





私達が指導を受ける際、ティア先生から、まず言われたのは"己の常識を捨てて、新たな知識を受け入れろ"でした。クラン"黒天の星"のNO.2であり、クランメンバーの教育責任者でもあるティア先生は流石、周りから"鬼教官"と言われるだけはありました。彼女の指導は主に学院のグラウンドではなく絶望の森という場所で行われました。そこはカンパル王国からずっと南下していった先にあり、奥に行くほど危険が増す森でした。とは言っても入り口付近の段階で既に危なく、よっぽどの事情がなければ人が寄り付かない場所らしいです。そんな森で何をしていたのかというと実戦訓練でした。まず、1人1つずつ武器を与えられ、ひたすら素振りを行いました。一応、今までの授業で習ってはきたので少々自信はあったのですが、そんなものは先生から言わせれば児戯に等しいそうでもっと実戦向きの振り方を学びました。それを1時間続けたところで今度は弱った魔物にとどめを指すように言われました。どうやら、私達が素振りを行っている間に他の先生が全員分の魔物を弱った状態で捕らえたらしいのです。私達にとって初めて相手にする魔物はブラックウルフでした。全身が真っ黒で唯一、眼だけが真っ赤でギラギラとしており、刃先を突き立てようとするとこちらを物凄い形相で睨みつけてきました。その瞬間、背筋が凍る思いをしましたが絶対に生徒達には指一本触れさせないというティア先生の安心する一言により、身の危険はなくなりました。しかし、今度は生命を奪うという行為に対しての忌避感が湧き上がってきました。私達はあくまでも学院の生徒であり、授業ではそこまで踏み込んだことは学んでこなかったのです。その為、ほとんどのクラスメイトが躊躇ってしまい、手が震え、武器がカタカタと音を立てていました。と、そんな時でした。私達の後ろから猛烈な殺気が飛んできたのは。振り返ってみるとそこには満面の笑みを絶やさないティア先生がおり、一言こう言ったのです………………"やりなさい"と。私達は慌てて武器を持ち直し、覚悟を決めてから魔物へ向かって振り下ろしました。もしも言うことを聞かず、いつまでも躊躇っていたら、後でどんな目に遭わされるか分からない。それほどのプレッシャーをその時に感じたのです。正直、それは魔物自体の怖さや殺生に対する忌避感をも圧倒的に上回っていました。そして、それが終わると今度はシンヤ先生によって、全員が武技スキルと魔法をどれか2つずつ与えられ、それがスムーズに扱えるよう、だいたい2時間程特訓しました。そこから、クラスを5人1組のパーティーとして分裂させ、それぞれ先生達が付いて森の中を歩き回ることになりました。目的は体力をつけることとメンタルの向上、それから魔物の討伐です。ノルマは出会った魔物全てで1匹でも逃がすことは許されませんでした。ところが2時間前にやっと1匹を仕留めたばかりの私達にそこまでのことができるとは到底思えません。ましてや、次に現れるのは先程と違って弱っていない、とても危険な魔物。いくら先生が同行してくれているとはいえ、不安は募るばかりでした。周りを見てみるとやはり、皆どことなく顔色が悪そうでした。とはいってもこれは授業の一環。やらないという選択肢は存在しませんし、先生が同行してくれている。万が一にも命の危機に陥るなんてことはないだろう…………この時の私達はそう思っていました。






















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