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〈完結済み〉俺は善人にはなれない   作者: 気衒い
第10章 セントラル魔法学院

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第163話 冒険者






「ん?お前、それ……………」


「お、分かるか?」


「ああ。特徴的なマークが入っているからな。いいな〜いつの間に手に入れたんだよ」


「ついこの間だ。長蛇の列に並んでやっと手に入れた代物だ。まだ試し斬りはしていないが少し持ってみた感じ、だいぶ手に馴染んでな」


「そりゃそうだろうな。なんせ、あの"銅匠"が店主を務める店だ。粗悪品を作り、売り捌くはずがない」


「ああ。しかも値段はピンキリで俺達でも手が届く代物もある。最近じゃあ、一般人まで護身用としていくつか買っていくらしい」


「みたいだな。やっぱり使われてる素材が良いほど高いのか?」


「ああ。流石にミスリルには手が届かなかったぜ。だから、これにしたんだ」


「これは……………鉄か?」


「ああ。だが、そんじょそこいらの武器よりは遥かに使い勝手がいいそうだ。これから、"鍛冶場ノエ"の装備を使う奴が増えてくるぞ。お前も早く手に入れろよ」


「ああ。にしても凄いな、"黒天の星"は。それぞれ幹部達が店を持っているなんて」


「やっていることが冒険者の域を越えているよな。そんだけ特技があるのって羨ましいよ」


「しかも最近は"黒の系譜"としての動きも活発だしな。どうやら傘下のクランも刺激を受けて、ますますやる気になっているらしいしな」


「AランクやSランクの魔物をバンバン狩っているんだっけか」


「ああ。この間、とある国を縄張りにしたことでさらにモチベーションが上がったらしいな。親の顔に泥を塗る訳にはいかないと思っているんだろうよ」


「縄張り?そんな話、どこで聞いたんだ?」


「各地を旅してる行商人からだ。この間、フォレスト国ってところにたまたま立ち寄ったら、"黒締"の銅像と"黒天の星"のクランマークが載った旗が立っていたらしい」


「マジかよ…………」


「ああ。だから、もしその国に手出しをしようものなら、そいつはタダじゃ済まないだろうな」


「ゴクリっ…………」


「とにかく、奴らは日に日に大きくなっていってる。俺達がこうしてくっちゃべっている今でさえ、きっとどこかで……………」


「あ…………」


「ん?」


「噂をすれば」


「お、本当だな……………ん?"黒締"と"銀狼"は分かるがあとの8人は一体、誰だ?」


「もしかして、新メンバーとか」


「あ〜かもな。にしてもやっぱり、とんでもないな」


「ああ。新メンバーですら、隙が全く見当たらない。その中でも特にあの爺さんと金髪の奴がやばいな。勝てる気が一切しない」


「この感覚は"十長"を初めて見た時と同じだな。あれで幹部ですらないのかと思った

な」


「いいな〜……………俺も入れてくれないかな」


「それは諦めろ」





――――――――――――――――――――





「全く…………せっかく、この僕がこんな田舎までわざわざ来てやったというのに何だ、この列は」


「本当だぜ。待たせるんじゃねぇよ」


「だりぃな」


「いっそ、やっちまうか」


「賛成だな」


「やろうやろう」


フリーダムの冒険者ギルド内。そこでは他所から来た態度の悪い冒険者パーティーにより、周りの者達が非常に不愉快な思いをしていた。ちょうど時間的にギルドが混み合う時にタイミング悪くやって来てしまった為、長い列に並ばなければならず、彼らは不満が募っていた。


「ん?ちょっとそこの君達!」


とそこへ新たにギルドの扉を潜って入ってきた者達に注目したリーダーの男はすかさず声をかけた。待たされている鬱憤晴らしと好みの異性がいたからだ。しかし……………


「結構、並んでるな……………登録は今度にするか?」


明らかに聞こえているにも関わらず、綺麗に無視された男達。周りではクスクスと笑いが起き、完全に醜態を晒してしまう形となった男は恥ずかしさから若干、声がうわずりながら再度、呼びかけた。


「お、おい!無視するなよ!」


ところが…………


「ここは一旦出直す方が得策かと。今すぐにしなければならないということでもないので」


またも無視されてしまう。そこで再び、笑いが起きる。これ以上は面子に関わる。そう感じた男は目的の人物達へと大きな足音を立てて、近付いていった。


「おい!これ以上、僕を馬鹿にするような態度を取るならば、こちらにも考えがあるぞ!」


「よし、じゃあ帰るか。悪いな、お前ら。登録は今度だ」


「…………もう我慢の限界だ。覚悟しろよ!僕を一体、誰だと思っているんだ!」


男は腰から剣を引き抜き、それを最初に無視した青年へと振り下ろそうとした……………が


「な、何だと!?」


傍から飛び出してきた少女の得物によって、受け止められてしまった。


「アンタが一体、誰かって?そんなの知らないわよ」


綺麗な赤い長髪を揺らし、武器であるレイピアを上手く扱っていた。男に力がない訳ではないが本来、テクニック重視で繊細な動きが求められるはずの武器によって、完全に止められ、どれだけ力を込めてもピクリともしなかった。そして、何より……………


「お、おかしい。こんなはずじゃあ!あの男から強引に君を奪おうとしたのに!」


「嫌よ、気持ち悪い」


「ぼ、僕はAランク冒険者だぞ!それが何で君みたいな華奢な娘に……………」


「……………シンヤ様、こいつらの対処は私に任せてくれませんか?」


「ああ。これはお前が買った喧嘩だ。カーラの好きにしろ」


「ありがとうございます」


そう言うとカーラは一旦、レイピアで男を後ろへと弾き、距離を取った。


「ぐっ…………絶対に許さないぞ!お前達、もうこの際なんだっていい!あの娘を手に入れるぞ!周りの者は殺ってもいい!」


「「「「「おお〜っ!!!!!」」」」」


男達は一直線にカーラへと向かい、各々の武器で以って制圧しようとした。しかし………………


「"隼斬り"」


「ぐはっ!」


「ぐべらっ」


「な、なにが」


「があっ」


「痛えっ」


男達がカーラの元まで辿り着く前に決着は着いた。目にも止まらぬ速さでカーラがレイピアを振るい、急所を的確に斬りつけたのだ。武器を抜き殺る気できていた相手を野放しにするほど彼女も甘くはない。まさか、殺られるとは思ってもいなかったのか、男達は驚きの表情でカーラを見ていた。だが、後悔してももう遅い。男達の身体からは血が止めどなく流れ、もう長くは持ちそうになかった。


「ふぅ〜緊張はしたけど修行の成果が出てる!やった〜!」


にこやかに笑う彼女はつい先程、慈悲のない鉄槌を下したのと同一人物だとは到底、思えなかった。そして、何よりも周りで見ていた冒険者達にとってはそのあまりの変わりようにただただ身体の震えが止まらなかった。






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