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〈完結済み〉俺は善人にはなれない   作者: 気衒い
第10章 セントラル魔法学院

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第162話 ギルドマスター






「ではこれより、ギルドマスター定例会議を始める」


議長であるブラウンの言葉は大部屋であるにも関わらず、隅々まで響き渡るほどのものだった。流石は本部のギルドマスターというべきか堂々たる風格と威厳を滲ませ、身体にいくつも刻まれた傷が歴戦の猛者であることを物語っていた。だが、それに驚くものはこの場にはいない。皆、毅然とした態度を崩さず、これから行われる会議に精一杯取り組もうとする意思が感じられた。そもそもギルドの長に君臨するほどの者が少々のことで取り乱したり、怖気づいたりなどはしない。皆が考えているのは解決しなければならないいくつもの議題を真剣に話し合うということのみであった。


「まずは先月、起きた邪神災害の被災地の復興であるがそれぞれ国の補助また周辺地域の支援により、滞りなく進んでいる。もちろん我々、冒険者ギルドも積極的に力添えをさせて頂き、それも一助となっていることは間違いない」


「皆が大変な時期を狙って悪さをする輩が出てくる可能性もありますからね」


「ああ。今回のようなことは繰り返してはならない。各地で少しでも不穏な因子が隠れて潜んでいるのならば、事前に察知し、早急な対処を期待する」


「でも被害が比較的少ないのが不幸中の幸いだわ」


「ああ。それもこれも全ては英雄シンヤ・モリタニとその仲間達のおかげであろう」


「ですね〜……………そういえば、彼らの主な拠点ってブロンさんのギルドがある街ですよね?」


「そうだったわ。あれだけの強さを有しているから、どこかの大きな国とかに拠点を置いているのかと思ったけど、まさかフリーダムとは」


「…………ブロン、彼らは一体何者なんだ?詳しくはまだ聞いていなかったと思うんだが」


「シンヤ達は……………ワシがマスターを務めるギルドの可愛い可愛い冒険者じゃよ。それ以上でもそれ以下でもない」


「ブロンさんって、いつもそれですよね?彼らのことを語る時のあなたの顔はとても幸せそうなんですよね〜」


「それを直接、本人達には言えないから、こうして裏で親バカ発揮しているんでしょ。何回も聞かされる、こっちの身にもなって欲しいわ」


「ブロン、私は詳しい素性などを聞いているんだが?」


「じゃから、彼らはフリーダムを拠点とする冒険者であり、お主達が耳にした数々の功績を打ち立てた者達と何度も言ったはずじゃ」


「いや、そんなことはその辺の冒険者でも分かる。私が聞いているのは具体的な人間性や細かいプロフィールなどだ。表に出ている情報をわざわざお前に聞く訳がないだろ」


「そこまでして何故、知りたいんじゃ?」


「いかに英雄といえども大きな力は時として、どこにでも牙を剥き得る。何も知らずにほっとけば、そのうち……………」


"バンッ!"


その時、部屋中に轟くほどの音を立てて、ブロンが机を強く叩き、立ち上がった。


「シンヤ達がワシらを脅かすと?世迷言は大概にせぇ!お主ら、一体誰のおかげでここにいられると思うとるんじゃ!恩知らずもいいところじゃろうが!邪神を相手した者がそんなスケールの小さいことをする訳がなかろうて!」


誰もがブラウンであってもその気迫にたじろぎ、言葉を発せずにいた。それほどブロンは怒っていたのだ。


「あやつらのことはこの中ではワシが一番分かっておる。そんなワシが断言する。シンヤ達ならば大丈夫じゃ。それでも伝え聞くことだけでは不安な者もいるかもしれん。それならば………………」


そこで大きく深呼吸したブロンは次にこう言った。


「直接、彼らと会って話してみるんじゃ。さすれば、ワシの言いたきことも分かるじゃろう」







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