第142話 縁の下と力持ち
ここは第一王子派閥 国民・冒険者混合軍"縁の下"のアジトである。現在、全メンバーが招集されており、たった今の今までとある映像を魔道具を通じて見させられていた。その結果、現場には少し重い空気が流れ、誰もが口を閉ざすしかなかった。しかし、静まり返った空間において、5分ほど時間が経った頃、リーダーであるレンタルが徐に口を開いた。
「これは……………本当のことなんだな?」
「全て事実だ。偽る必要もメリットもない。信じるか信じないかはお前達次第だが……………まぁ、外に出てみれば、それもはっきりするだろう」
質問に答えたのはクラン"黒天の星"の緑組副長ライアンだった。ちなみにこの場には他にも緑組の組員や朱組副長のネネ、それと朱組の組員もいた。つまり、"黒天の星"メンバーが計4人。彼等に死角は一切なかった。
「…………………」
「お前達が何を思って今まで活動していたのか、知らないし興味もないがこれだけは言える。今日を以て、その活動は終わりを迎えた。また新しい日々が始まる。今はそのことを考えた方がいいんじゃないか?」
「勝手なことを言ってんじゃねぇぞ、部外者が………………無責任だろ」
「ああ、無責任だ。俺達にはお前達の責任を取る必要も義理もないからな」
「ふざけんじゃ……………っ!?」
「おっと、八つ当たりはやめてもらおうか。やり場のない怒りは各々が他人に迷惑を掛けない形で処理してくれ」
「てめぇ……………」
「人間はこうも変わるのか。最初に話した時と表情も言葉遣いも全然違うぞ?」
「そりゃ、お前達は冷静だろうよ。所詮、他人事。だが、俺達は違う!必死なんだ!それこそ、圧倒的格上なお前達にこんな態度をしてしまうぐらいにな!」
「………………だとよ、元第一王子さん」
「……………は?ど、どういうことだよ」
ライアンが目線をやった先。そこにも別の映像の魔道具があり、ここでのやり取りがどうやらどこかに映し出されているようだった。それが分かった途端、焦りだし、ザワザワとしだすレンタル達。しかし、それもどこかから流れてきた音声によって、ピタリと止んだ。その声が紛れもなく、自分達がよく知っているとある人物のものだったからだ。
「…………"縁の下"の諸君。俺だ。少し聞いて欲しいことがある」
「ディース様……………」
その声は第一王子だったディース・フォレスト本人のものだった。そして、これと時を同じくして、第二王子派閥 国民・冒険者混合軍"力持ち"の全メンバーにもアジトにて、同じようなことが起こっていた。これはシンヤとフォレスト王による余興が行われた後の出来事。間違いなく、何かがそこでは起きていた。




