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〈完結済み〉俺は善人にはなれない   作者: 気衒い
第9章 フォレスト国

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第136話 フォレスト王の想い





「何とかならんもんか……………」


ワシは天を見上げ、そう呟いた。この世に生を享けて50年。これまでの人生を振り返ってみると王族であるという一点を除いては比較的順風満帆にやってきた。人に恵まれ、才能に恵まれ、さらには運にまでも恵まれ……………自画自賛をする訳ではないがワシは他と一線を画す存在だった。当然、そうなると周りからの期待やプレッシャーが半端ではないがそれすらも全て己が身一つで乗り越えてきた。だからこそ、信頼や地位も獲得し、王として相応しい貫禄まで手に入れた……………がしかし、そうなると次の問題が発生した。今までワシに向けられていた期待が今度は生まれてくる子供達に向けられるようになってしまったのだ。人々は血筋やこれまでの流れから勝手に次の世代にも期待をしてしまうのだ。そして、一番怖いのがその期待にそぐわなかった時、失望されてしまうことである。勝手に期待して、思ったものと違った場合、勝手に失望する……………最初から敵だったものよりも好意から嫌悪へと変わってしまった者の方がよっぽど酷い状況なのだ。今までのこちらに対してのプラスな感情の分が全てマイナスへと変わり、同じ濃度での手のひら返しが待っているのである。これに耐えられる者など、ごく僅かであろう。幼い頃はまだそんな目では見られないかもしれないが大きくなってくるとそうはいかない。当然、大切な子供達をそんな目に遭わせる訳にはいかなかった。そこで考えて出した結論が後継者を3人の中から選ぶという方法だった。期間は約2年。選定方法など詳しいことは伝えず、各々が自分磨きを忘れぬようにとだけ言った。こうすることでそれぞれが王に相応しいだけの自信や教養を身に付けようとするだろうし、周りの者も頑張っている本人達を見てガッカリすることなどはないと踏んでいた。そして、思惑通り、息子達はやる気を出して頑張り、周囲もこれには好意的であった………………最初のうちだけは。少ししてから長男と次男が王を目指そうとするあまり暴走し、取り巻きをどんどんと増やしていったのだ。それに伴って2人の仲は段々と悪くなっていき、気が付けば思想も非常に物騒なものとなっていた。さらに最近ではあまり良くない噂も耳に入ってきている。


「どうしたもんか……………」


ワシはただ子供達に重荷を背負わせたくなくて、傷ついて欲しくなくて、あのような発言をしたのだがそれが却って子供達を苦しめているのではないだろうか……………特にリースには随分と苦労をかけさせている。あの子には頭が上がらないことばかりだ。


「ワシは余計なことをしてしまったやもしれん」


昔のようには戻れないものだろうか?あの3兄弟で仲良く和気藹々としていたあの頃には…………今では城内の空気が重いものとなってしまっている。だが、後悔はしてもここで発言を取り消す訳にはいかない。それは子供達だけではなく国民を含めたこの国の者達全てへの裏切りである。一度動いてしまえば、もう止まることなどできないのである。けれども……………もし、もしもこの問題を解決できる者がいるとするのならば……………いかんいかん。あり得ない妄想、それも完全に人任せなど言語道断である。これは是が非でも自分達で解決せねば。


「…………よし、では行くか」


ワシは重い腰を上げる。相変わらず、よく晴れた空を背に城内へと歩を進める。本日、最初の仕事がこの後には控えていたのだった。






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