第132話 魔物使い
拙者の名はグリフ。クラン"黒天の星"の従魔部隊の隊長を務めているグリフォンである。実は最近、困ったことがあるのだ。それは………………
「え〜ではもう1度問うぞ。一体、誰がこの任を全うする?」
「だから、さっき言ったであろう。与えられていようがいまいが私が全てやると!」
「おい、ラギア!貴様、自分だけ抜け駆けして手柄を独り占めしようだなんて、そうはさせんぞ!そこまでしてシンヤ様によく見られたいか!」
「こらこら…………はしたないですよ。ギャアギャアと喚いて……………つべこべ言わず、私に任せていればいいんですよ」
「いや、それ後半部分が本音なだけじゃろ。まぁ、結局、皆思うことは同じ。であれば、ここは1つ。この老いぼれにその任、譲ってくれんかの?」
「黙りなさい。相変わらず、抜け目のない……………老いぼれだと言うのなら、若いもんにチャンスを与える余裕はないのですか!」
会議を開くといつもこんな感じになるのだ。やる気があるのはとても良いことなのだろうが皆、我が強くそれぞれが優秀な為、拙者だけでは抑えが効かず、とてもじゃないが手に負えないのだ。しかも厄介なことに全員の想いは一致している。だからこそ、余計にタチが悪いのだ。
「全く………………これでは帰ってきたシンヤ様に愛想を尽かされてしまうぞ。どこかにいないものか……………彼等を説得し、1つにまとめ上げる者が………………」
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「お、リース。そのスライム、どうしたんだ?」
「ん〜なんか、いじめられてたっぽいから、助けたら、ついてきた」
「そうか。流石だな。どうやら珍しい種みたいだし」
「うん。だから他のスライムにいじめられてたんだと思う。自分達とは違うからって……………ローズとかの実情を目の当たりにしたばっかりだから、そういうことがあってもおかしくはないと思ってたけど、まさか魔物の中でもあるとはね」
「人だろうが魔物だろうが異質と感じたものは弾きたくなるもんだ。出る杭になる、悪目立ちをする、標的になりやすい……………こういった者は必ず存在する。そして、それによって環境のバランスが保たれているんだ。加害者はそんなことには一切気が付かないがな……………いわゆる理不尽な方程式さ」
「……………決めた。僕はこの子を手放さない!ずっと一緒に居たい!」
「そうか。良かったな。いいパートナーが見つかって」
そもそも何故、リースが魔物をすんなりと手懐けることができたのか。それは彼女のステータスに答えがあった。
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リース
性別:女 種族:人族 年齢:15歳
Lv 60
HP 4000/4000
MP 4000/4000
ATK 4000
DEF 4000
AGI 4000
INT 4000
LUK 4000
固有スキル
テイム・等価交換・限界突破
武技スキル
剣術 :Lv.8
体術 :Lv.8
魔法
火魔法 :Lv.MAX
水魔法 :Lv.MAX
土魔法 :Lv.MAX
風魔法 :Lv.MAX
装備
山吹色のシャムシール エ・ゾモロドネガル(上級)
称号
創造神の加護・魔物使い・逆境を跳ね除ける者・諦めない者・恋する乙女・魔物キラー・盗賊キラー
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テイム
魔物を手懐けることができる固有スキル。成功確率は自身のレベルに比例し、成功した場合は魔物に紋様が現れる。
等価交換
HPを半分削り、全ステータスを2倍にする。1日に1回しか使用できない。
魔物使い
魔物に好かれやすくなる称号。固有スキルであるテイムに補正がかかる。
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俺がリースのステータスを見させてもらい、そのスキルがあることを確認したのは大浴場での一件があった後だった。俺は基本的にクランメンバーや敵以外のステータスは勝手に覗かないようにしている。プライバシーの為にだ。だから、彼女の本当の性別にも気が付かなかったし、また珍しいスキルを有していることも知らなかった。
「おいで〜プル」
手懐けたスライムに名前をつけ、仲良く戯れる彼女を見て、非常に和んだ時間を過ごしたがいつまでもそんな気分ではいけないだろう。なんせ、もうそろそろフォレスト国に着く。俺は1つ息を吐くと椅子から立ち上がり、リースを伴って車の中へと戻った。途端、静寂が訪れる。後に残ったのは夜の森の中で焚き火の爆ぜる静かな音だけだった。




