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〈完結済み〉俺は善人にはなれない   作者: 気衒い
第9章 フォレスト国

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第126話 道中





フォレスト国までの移動手段は車だった。この日の為に事前に創造しておいたもので外見からは全く想像できないのだが車内は空間魔法を使って、かなり広くしておりキッチンや風呂、ベッドなどが備え付けられている。ちなみに運転は交代ですることになっている。というのも車を創造した日に今回、一緒に向かうメンバーにはあらかじめ運転の練習をしてもらっていたのだが、あっという間にその技術を習得し終え、結果全員が運転を楽しいと感じた為だ。現在はじゃんけんに勝ったドルツが運転をしているのだが、他のメンバーは早く自分の番が回ってこないかとソワソワしている。スピードに関しては30kmでゆっくりと走行し、短い間隔での交代とすることにしている。リースとセバスは依頼主である為、運転をさせることはないし、そもそも練習さえしていない。ファンタジーな異世界において馬車ではなく自動車を使用すること自体が前代未聞であり、すれ違う人々は皆一様に驚いた表情を浮かべている。目の前に飛び出してくる魔物に至っては躊躇なく轢き、その死体を空間魔法にて収納していく。その結果、道中はとてもスムーズに進んだ。目の前に盗賊が飛び出してくるまでは………………






――――――――――――――――――――







「おい、止まれ!」


車内にいる全員がこの付近にいる盗賊達の存在には気が付いていた。だからこそ、俺の指示でわざとゆっくりと走らせ、盗賊達が近付いてこられるようにしたのだ。


「シンヤ、この後は?」


「当然、とっ捕まえる。俺達は運がいい。金のなる木が向こうの方から、やって来んだからな。お前ら、出るぞ」


「「「「「はい!!!!!」」」」」


エンジンは切らない状態で外へと出た。どうせ、すぐに事を終わらせて出発することになるからだ。


「お、出てきたな!お前ら、随分と珍しいもんに乗ってんじゃねぇか!ここを誰の縄張りと知っての狼藉か!ここは我々、盗賊団"グリフォンの翼"が占めている。さっさと持ってるもんを全部置いて……………」


「おい、どうした?顔が真っ青になってるぞ」


「お、お、お、おい。よく見たら、こいつらの乗ってるもんに付いてるマーク、今、話題のクランのじゃないか?それと服装も黒衣で間違いないだろ」


「どれどれ………………って、おい!本当だ!おそらく、本物だぞ!どうする?非常にマズイぞ?」


「お頭に報告するか?」


「その必要はないぞ」


「「っ!!」」


盗賊同士の会話に無理矢理、割り込んで話を中断させた。いくら、こいつらが作戦を練ろうとこの後、待ち受けている結末は決して変わることがないからだ。


「だいたい逃げられるとでも思っているのか?随分とおめでたい連中だな。全員、とっ捕まえてギルド送りに決まってんだろ」


「ちくしょー!こうなりゃ、やってやる!よりにもよって"黒天の星"に喧嘩をふっかけちまうとは」


「ってか、縄張りとか……………そういうことは自分の軍団(レギオン)を持ってから、ほざけよ」


「う、うるせぇ!こ、こ、ここでお前らを討ち取ったとありゃ、値千金だ!覚悟はできているんだろうな?」


「御託はいいから、早くかかってこいよ。でないと痺れを切らしたうちのメンバーが力加減を間違えて殺っちまうかもしれん」


「「ひぃっ!?」」


「まぁ、とは言ってもお前らと戦うのはこの中で一番の新人だけどな。あ、そうだ。もし、お前らがこいつに勝てたら見逃してやってもいいぞ」


「ほ、本当か!?」


「ああ。ってことで……………リース、いけるな?」


「うん!」


実はクランハウスに滞在していた1ヶ月の間、時間を有効活用する為に絶望の森でのレベル上げや訓練場での特訓をしていたリース。この華奢で線の細い身体にはその経験がしっかりと刻み込まれており、成果を発揮する場面をこのところ、探していたのだ。しかし、そう都合良く命をかけた対人戦などやってくるものではない。焦らなくても待っていれば、いずれはその時がやってくると信じていたのである。そして、今まさに目の前に格好の相手が現れた。これを活かさない手はない。リースも車から出た時点で一切警戒を怠らずに自分の出番を待っていたのだ。であるならば、選ぶべきものは1つしかない。


「馬鹿にしやがって!どう見たって、ただの小僧……………」


「"水の渦(アクア・ストリーム)"!!」


「なっ!?」


「これで30人中、12人も減ったね………………さぁ、どうする?」


「こ、小僧!!絶対に許さねぇぞ!」


「僕の実力確認に付き合ってもらうよ」


この後、結果がどうなったかは言うまでもない。









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