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〈完結済み〉俺は善人にはなれない   作者: 気衒い
第8章 動き出す日常

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第110話 レベル上げ





「ほれほれ!この程度のことで音を上げるでないわ!」


「だ、だが……………」


「言い訳無用じゃ!魔物の餌になりたくなければ、キリキリ動け!」


「ひぃ〜」


フリーダムの街を散策し、一度クランハウスに戻った俺とリースは少し休んでから絶望の森へとやってきた。というのもリースが他の拠点や戦闘訓練をしている場所を見たいと言ったからだ。であれば、それにうってのつけの場所があった。そう、絶望の森である。ここには俺達の拠点があるし、レベル上げをしている場所でもある。さらにちょうどこの時間、レベル上げを行っており、間近で見れるチャンスなのだ。


「な、なんか凄いな…………」


「どうやらイヴが傘下のクランのメンバーを扱いているみたいだな……………よし、ちょっくら挨拶するか」


「え!?ち、ちょっと待って!」


「いや、待たない」


「そんな〜」


俺は躊躇うリースを無理矢理引きずってイヴのところまで向かった。するとちょうどこちらに振り向き、目が合った。


「お疲れさん、イヴ。調子はどうだ?」


「お、シンヤか!お疲れなのじゃ。調子か?どうもこうも…………見ての通りじゃ。今、こやつらを鍛えておるのじゃが妥協ラインまではまだもう少し時間が掛かりそうじゃの。それに自分で言うのもなんじゃが、こうして見るといかに妾達が規格外か分かるの」


「だな。ある程度のところで切り上げていいぞ。何でもかんでも手助けするだけが本人達の成長に繋がるとは限らないからな」


「了解なのじゃ……………そういえば、先程からチラチラ見えておる、そこの少年は一体何者じゃ?」


「紹介しよう。こいつはリース。1ヶ月程、フリーダムのクランハウスで生活を共にすることになった。よろしく頼む」


「リースです!よろしくお願いします!」


「イヴじゃ。よろしくの…………訳アリか?」


「指名依頼を受けてな。こいつはその依頼人だ」


「なるほどのぅ……………とりあえず、了解じゃ。リースとやら、何か分からないことがあれば何でも訊くがよい」


「は、はい!じ、じゃあ早速いいですか?」


「何じゃ?」


「普通に暮らしていたら、まず出会うことのない伝説級の魔物がそこかしこにいるんですが…………どういうことですか?というよりも大丈夫なんですか?襲われたりとか…………」


「ん?あぁ、グリフォンとかドラゴンのことかの?あやつらは大丈夫じゃよ。なんせ、仲間じゃしの」


「へ?」


「それに妾達を襲うなどということもありえん。組長レベルならばともかく、幹部には到底勝てんからの」


「……………」


「ん?どうしたんじゃ?」


「どうやら驚きすぎてフリーズしたようだな」


「こんなことで驚いておってはこの先、やっていけるのかの」


「実は俺とカグヤの模擬戦を見た時も同じようになってた」


「それは仕方ないじゃろ。あんなの異次元の戦いじゃからの。下手したら、高ランク冒険者ですら腰を抜かすわ」


「そうなるといけないから、さっきはだいぶ力を抑えたぞ。訓練場が壊れてもいけないからな」


「そうじゃのぅ。いくらダメージ吸収の結界があるとはいえ、妾達であればそんなもの関係ないからの」


「だな。この間だって、危うくクランハウス自体が壊れるところだったしな」


「確か…………カグヤとラミュラのやつだったか。2人とも若干、戦闘狂らしいからのぅ」


「あれで若干か?」


「本人達、曰くじゃ。自分自身のことは案外、見えないものと言うが…………恐ろしいのぅ」


「まぁ、いずれ気付くだろ。それよりもさっさとリースを正気に戻して、レベル上げの様子と拠点を見せてやりたいんだが…………」


「それもそうじゃな。では…………」


その後、とある方法によってリースの意識を無事戻すことに成功した俺達は色々と見て回った。幻獣達との触れ合い、様々な魔物達との戦い、また豪華な拠点……………それらを目の当たりにする度、驚いたり笑ったり叫んだりと大忙しなリース。これだけのリアクションを見せてもらったからにはもっと色々と見せてやりたい。自然とそういう気持ちが出てきた。さて、次はどこへ行こうか。俺は明後日の方角を見ながら、軽く考えに浸り始めたのだった。







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