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〈完結済み〉俺は善人にはなれない   作者: 気衒い
第7章 vsアスターロ教

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第98話 遭遇





私がそこへと辿り着いた時、一際強い魔力の波動を感じました。それは私やサラ、もしかするとシンヤさんにも匹敵する程の濃密で練度の高いものでした。そこら辺にいる魔法使いが何百、何千と集まり一斉に魔力を解放したとしても到底及ばない領域…………まるで人外な存在が放ったような感覚でした。そして、どうやらそれは当たりみたいです。


「お前が今世で我の前に立ちはだかる者か?」


私の目の前に立つ、一見するとただの魔族か竜人にしか見えないこの男こそ、おそらく邪神です。惜しいことにタッチの差で復活を阻止することが出来なかったようです。外見的な特徴を言いますと全身が真っ黒で頭からは2本の角が生えています。背中には大きな翼を携え、お尻には長く太い尻尾、不敵な笑みを浮かべながら鋭い歯を覗かせる様子からは自身の実力によっぽど自信があることが窺えます。ですが、それも単なる過信などではなく、その実力が本物であるということは私の肌を通して伝わってきます。先程から感じている殺気や魔力から、シンヤさん以外では感じたことのない程の圧力がかけられていることが分かります。これは相当な実力者です。


「そうだと言ったら?」


「ふむ、なるほど…………ではこうしよう……………とりあえず、最初の肩慣らしとしてお前を今から痛めつけることにしよう」


「っ!!」


「ちゃんと抗えよ?さっさと終わってしまっては興醒めだ」


その瞬間、感じたのは先程の比ではない程の圧力。これはハッキリ言って、かなりまずいです。大丈夫でしょうか?先程の通信で2人共、こちらに向かってくれているみたいですがそれまで保つかどうか心配です…………


「でも、いつまで経っても進展のない悪足掻きも冷めますよね?……………例えば、封印を解こうと必死になるのとか」


「安い挑発だな」


「流石に乗ってきませんか」


「当たり前だろう」


「その割には顔が怖いですが?」


「それは元からだ……………"断空斬"!!」


「いきなりですか…………!"柳銀盾(りゅうぎんとん)……………くっ!?」


「まだまだこんなものではないぞ!なんせ、長い間ずっと眠っていた訳だからな!」


「そのまま起きてこなければ良かったのに」


「ふんっ!挑発が安いと言っているだろう!………"散断手雨"!」


「これは…………空間ごと裂く魔力の刃ですか!?…………"護落"!」


「力が有り余っていてな。悪いがしばらく付き合ってもらうぞ」


「丁重にお断り致します。あなたみたいな大マヌケに使う時間など1分たりともありませんので」


「だから、挑発が安過ぎると言っただろう!このままだと安過ぎて買い手がつかんわ!」


「ご心配なく。売り物ではありませんので…………"銀狼耀撃"!!」


「ぬぅんっ!!…………本当に口うるさい奴だ!」


「ちょうど良いでしょう?今までずっと静かな場所にいたのだから」


「……………そろそろ終わりにするか?お前もその方がいいだろう?」


「まだ主役が登場していないのにですか?」


「主役?それなら、この場にいるだろう」


「誰ですか?」


「そんなの我に決まっているだろう」


――――――――――――――――――――







「着いたな」


「ええ、ここですわね」


ティアとの通信を終え、急いで研究所とやらに向かった俺達。あの後、何度か大きな魔力や殺気を遠くからでも感じた為、ティアの様子が非常に気掛かりだった。そこまで時間が経っていないとはいえ、その間に何か不測の事態が起こっていないとも限らない。俺は"ズボラ研究所"というネームプレートを確かめた後、部屋の中へと入った。すると…………


「ん?なんだ、お前ら?…………もしかして、お前らがこいつのほざいていた主役とやらか?」


「お前……………一体そこで何をしているんだ?」


そこには不思議そうな顔をしながら腕を組み考え込む男と


「す………みません…………シンヤさん…………私……………」


ボロボロになりながらもなんとか意識を繋ぎ止めようと頑張るティアが倒れていたのだった。






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