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最強な賢者様と私の話  作者: 天城 在禾
事件、もしくは秘密
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私が帰す話 パート④

 

 

 

 

 

私が引きつった顔をするとサフラに苦笑された。

苦笑したいのはこっちですけど!


「はじめまして、私は神官長のハウエルと申します。こちらのサフラ様の兄にあたります」


ハウエルさんは相変わらずの柔らかな物腰で挨拶をした。

ギルはあまりの大物の登場に慌てて挨拶を返す。


「はじめまして。私は魔族のギルディアスと申します。ギルとお呼び下さい」

「…獣人族のローランドと言う」


どことなくローランドも緊張した様子だ。


「ギル殿が我らの同胞を助けてくださったのですね」

「いえ…魔王陛下の側近であるユリアーデという者がラーシュ殿をお助けいたしました。私などはラーシュ殿を送る役目を頂いただけに過ぎません」

「外から見えない我らの里を探すのは大変でしたでしょう。本当ならば里にお通しして、もてなすべきなのですが…」

「勿体無いお言葉です」


二人が話す中、私は手持ち無沙汰なローランドに話を振った。


「ローランドさんはエルフに会ったことあります?」

「…ラーシュが初めてだ」

「獣人って普段はあまり国から出ない種族ですもんね」

「…あぁ」


…長続きしないなこの会話。

ローランドは元々寡黙であるのに、今回はサフラとハウエルさんという大物が現れて緊張してしまっているので、余計に無口になりつつあるようだ。


「キリヤちゃん」

「あ、ハウエルさん」


同じ蚊帳の外状態だったハウエルさんがこちらに混ざってきた。


「ローランド殿。ラーシュをこちらまで送って下さってありがとうございます」

「…いや…」

「キリヤちゃんからローランド殿がラーシュと仲良くしてくれていたと聞いています。我らエルフは箱入りばかりなのでご迷惑をお掛けしたと思います」

「…ラーシュはいい奴だ。迷惑なんて思ってない」

「そう言っていただけてよかった。ラーシュとは今後も関係を保ってくださると嬉しいのですが…」

「あぁ。俺もそのつもりだ。連絡をとる手段はキリヤから貰ってるしな」


何かよく分からないが、ローランドとハウエルさんは仲良くなりつつある。

お陰で私一人はぶられたけどな!

仕方ないのでぼーっと新しい魔術を考えることにした。

それから少しして話が終わったのかサフラとギルがハウエルさんとローランドに話しかけ、何故か4人で盛り上がり始めた。

…酷い。


「キリヤちゃん何してるんだい?」


私がいじけて地面に落書きしていると、話が終わったらしいハウエルさんが落書きをのぞき込んできた。


「終わりました?」

「うん。相変わらずキリヤちゃんはすごいことをしていると聞いたよ。…それは魔術陣かな?」

「落書きですよ。新しい魔術考案してました」

「…私は魔術に詳しくないからどうか分からないが複雑だね」


まぁ踏んだら滑るっていうくだらない魔術陣だからね。

見えないようにもしなきゃいけないからちょっと複雑にはなるが、。

魔術はエルフには使えないし、ギルは使うの禁止されてるので多分これがどういうものか分かっていないだろう。


「多分もうすぐ出来ますから試しましょうか」

「え?もう出来るのかい!?」


私は足りない部分を二つ三つ書き足し、魔力を込めた。

魔力を込めると魔術陣が見えなくなり、ちゃんと起動したことが分かる。


「出来ました。えーっと誰がいいかな…」

「ちょっと待て。なんだ誰がいいかなって。自分で試すだろう普通」


ギルが私の発言につっこんできた。

なので、ギルにすることにした。


「ギル。ちょっと来て貰えますか?」

「…俺で試すのか」

「はい」


私が素直に答えるとギルは呆れた顔でこちらに来た。そして、上手い具合に魔術陣を踏み、すてん、と尻餅をついた。


「…」

「はい、こんな感じです」


男四人からの視線が非常に痛かったが、まぁよしとしよう。

それからサフラとハウエルさんにわざわざ来てくれたことを感謝し、ラーシュによろしくお願いしますと頼んで、私たちはエルフの里を後にした。







獣人の国はセェルリーザの南西にある。

とはいえ、セェルリーザとは大きな森を間に隔てているため、人間が獣人の国へ行くのは大変なのだが。

それでも人は獣人を奴隷に、と望む者もいるため、この森には罠やらなんやらが沢山あったりする。

そんな労力使うくらいなら他で使えよ!とツッコミたい。

今回はセェルリーザの上を飛び、森は徒歩で行くことにした。

森の上空には鳥の魔獣が多いのと、ローランドが森の中は歩きたいと希望したためである。

セェルリーザの上空は見つかると怒られるため、透明マントを出してそれをかぶっていくことにした。

これはローランドに魔力を使うわけではないのでちゃんと発動してくれた。


「…なんだ、コレは」

「透明マントって言って、かぶると透明になれる魔具です。ただし実体が消えるわけではないので何かにぶつかったりはします。あと絶対防御の魔術は掛けれなかったので攻撃も食らいます。破いたりすると魔術が効かなくなって効果が無くなるので気をつけて下さい」


本当は最強の透明マントを作ろうと思ったのだが、魔術を込めすぎることはできないと分かってしまったので諦めた。

最高で10個魔術を付けられること、一緒に付けられない魔術とかも有ることが分った。

うむ、勉強になるね!

ギルは自分の魔法でそれくらいやると言い張ったのだが、残念ながらギルは光を持って居なかったため、無理ですよと教えてあげた。

水を持っていればもしかしたら出来たかもしれないが、ギルの属性は闇と風だったので無理ですね、ということになった。

ローランドは普段魔術や魔法に触れる機会などなかったので透明マントを渡すと少し楽しそうだった。

…尻尾がパタパタしてたからね…

多分空飛ぶっていう体験も楽しかったんだろうなぁ。






大体3日かけてセェルリーザを横断?縦断?…斜断かな?して森へたどり着いた。

特に問題は起きなかったが、レィティアがセェルリーザにいる気配がなかったので、どこへ行ったのかが少し気になった。

この森に名称は無いのかとローランドに訪ねたところ、獣人は「断絶の森」と呼んでいるらしい。

外界と隔ててくれているからとのことらしい。

前述したとおり、この森には罠が沢山敷かれている。

人間が獣人を捕まえるために仕掛けたものもあれば、獣人が人間を捕まえる、あるいは殺すための罠もある。

獣人であるローランドはその罠の在処が分かっているため私たちの道案内をしてくれるそうだ。

とは言っても、私もギルも罠の在処は大体分かっている。

気配というか、機械的な殺気を感じるのだ。

さすがにそれを口には出さなかったが、今度ローランドに伝えておこうかなとは思った。


そして、私の目の前で、ギルの身体が崩れ落ちた。




 


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