私が帰す話 パート③
よーし!
一週間!
間に合った!
…あー、前回番外編的なの書く!と言いましたがまだ書けてません…
今回は普通に本編です。
キリヤのギルに対する扱いってちょっと雑ですよね…
私は軽く祈りを捧げて、サフラと共に神殿を出た。
「ありがと、キリヤちゃん」
「んー?何が?」
「長老の葬儀出てくれてさ。長老の魂はもうここには無いけど、多分喜んでるんじゃないかな?」
「えぇ?殺された相手なのに?」
「うん。長老はそういう人だったからさ」
…サフラは懐かしそうに笑った。
サフラが言うのなら、そうかもしれない。
「うん、私も出られて良かったよ。アルルさんがみんなから好かれてたって知ることが出来たしね」
「はは。長老可愛かったからねー。里のみんなは長老のこと大好きだったよ」
うん。私もアルルさんを嫌いにはなれなかったよ。
「あ、というかラーシュさんってサフラさんの親戚?」
「そうそう!ラーシュはオレの再従姉妹なんだよ!それが1ヶ月以上前から行方不明でさ。ラーシュの両親は泣いてオレに縋ってくるし、兄さんがあぁなっちゃってたからオレ仕事し過ぎで死ぬんじゃねぇかな」
「大丈夫でしょ、サフラさんだし」
「酷い…」
落ち込むサフラを無視して、私は魔族の国で起こったことを説明し、ラーシュが被害者であることを報告した。
「そっか…里出てからも大変だったんだね」
「まぁ。でも色んな人と知り合えたから楽しかったよ」
「キリヤちゃんは行動力あって恐ろしいよ…」
恐ろしいって失礼な。
「ラーシュを助けてくれてありがと。その魔族さんと獣人さんはまだいるの?」
「里の外にいると思うよ。挨拶行く?」
「うん。キリヤちゃんが帰る時着いてくよ。それでさ、そのキメラっていうのだけど。…それって、やっぱ人間が犯人なの?」
サフラの言葉に私は苦笑した。
確信を持っているらしいサフラは、私を心配そうに見ていた。
どうして確信を持つに至ったかは分からないが、私も犯人は人間だと思っている。
人間である私が人間に狙われていることが心配なのだろう。
「多分人間だけど、もう人間とは呼べない分類になってるかもね。私もまだ犯人は分からないよ」
「キリヤちゃんに分からないこととかあるんだなぁ!」
「いやだな。私は無知だよ」
とりあえず、必要なことを話した私たちは神殿から出てくる人たちを眺めつつ、レィティアのことやギルとローランドのことなどを話した。
しばらく雑談をして過ごしているとラーシュが男性に抱っこされて出てきた。
どうやらラーシュは泣き疲れて眠っているようだ。
その横を女性が、後ろをハウエルさんが着いてきていた。
「キリヤちゃん。久しぶりだね。今日は来てくれてありがとう」
「こんにちはハウエルさん。お久しぶりです。…来れて良かったです」
ハウエルさんは男女より先に来て私に挨拶してくれた。
私がそう返すとハウエルさんは嬉しそうに笑った。
美形の天然って需要高そうだなぁ。
男女はラーシュを連れて私の前にやってきた。
サフラは男女が誰か気づいて、私に紹介してくれた。
「あ、キリヤちゃん、この二人はラーシュの両親だよ。こっちが父親のルベルでこっちが母親のアメリ」
ラーシュの両親は紹介されると深々と頭を下げた。
私も頭を下げ、自己紹介しておく。
彼らには会ったことは無いが、話は聞いていたらしく、斎様と呼ばれた。
「王様、ラーシュは今までどうしていたのですか?ハウエル様は斎様が関係していると仰っていましたが…」
ルベルさんが不安そうにサフラに聞くと、サフラは具体的な話は避け、ラーシュが事件に巻き込まれ、私が助けてここまで届けてくれたのだと説明した。
それを聞いた二人は泣き出さんばかりに私にお礼を言った。
「いえ。私は殆ど何もしてません。彼女を助けたのは魔族の方ですから」
「…ま、魔族ですか…」
「はい。もし機会があればお礼を言ってあげてください」
魔物は自分たち以外を捕食の対象とするのでラーシュの両親には他種族を助けたことが信じられないのだろう。
半信半疑の様子で頷いていた。
「お二人もお疲れだと思いますし、ラーシュさんも疲れているみたいですから、私のことは気にせずに休まれて下さい」
「すみません…お気遣い感謝します」
彼らはまた深々と頭を下げて、ラーシュを連れて去って行った。
何故かこちらをとても見てくるハウエルさんに私は視線を移した。
「どうしたんですか?」
「ん?あぁ。そういえば私はキリヤちゃんをちゃんと見たことがないと思ってね。キリヤちゃんってこんな感じだったんだね」
そういえば確かに。
ハウエルさんの目が戻ったのは最後のほうだったはずだから、私のことはまともに見ていないはずだ。
実際私も復活したハウエルさんをちゃんと見たのは今がはじめてかも。
「兄さん、あんまり見過ぎると賢者が殺しに来るよ」
「え?賢者が?何でなんだい?」
「もちろん賢者がキリヤちゃんのこと愛してるからだよ」
「…なるほどね」
ハウエルさんはなにやら納得したらしかった。
「それで、今の話だけれど。私は詳しく教えて貰ってもいいのかな?」
ハウエルさんにどうしても教えるわけには…!と言うわけではないので、私はサフラにしたような説明をもう一度した。
キメラの襲撃が二回、禁術の使用が一回…
しかも早いスピードで次々と事件が起こっている。
あ、禁術は五年前からか。
「まぁ何か分かったらまた連絡しますね」
「あぁ、念話かい?」
「あとラーシュさんに手紙送ることもできますし」
「ずるい!オレにも連絡!」
「じゃあサフラさんにも念話するから」
待たせているギルとローランドが心配になってきたので、そろそろ戻ることにした。
それを伝えると二人も見送ると着いてきた。
私は歩きながらハウエルさんに里の結界の状態を聞いてみた。
あの後、急にエレンの気配が消え、訝しんでいると闇の精霊王と光の精霊王がやってきたらしい。
エレンが力を使えない状況になったと説明され、ハウエルさんに結界を維持して欲しいと頼んできたそうだ。
精霊たちが手伝ってくれているらしいので結界の維持には問題ないらしい。
しかも、その他の精霊王たちがやってきて、それぞれ結界を張っていってくれたらしいので当分は安全らしい。
良かった良かった。中々気が利くじゃないか精霊王たちよ。
私たちは街を抜け、結界の端に来ていた。
やはり向こう側にはギルやローランドがいるはずなのだが見えない。
本来の結界はただ無色透明なだけなのだが…
「なんでこれ向こう側見えないの?」
「あぁ…精霊王たち曰く光を屈折させているからとか何とか…私にはよく分からないんだけどね」
光を屈折か。
まぁ原理は分かるけど、実際見せられると怖く感じるよね。
人体に悪影響ないならいいかな、うん。
私はさっさと結界を通り過ぎた。
すると目の前にギルとローランドが現れ、何やら私の背後を見てポカンとしている。
二人の視線に釣られ私も後ろを見るとサフラとハウエルさんがちゃんと着いてきていた。
なるほど、確かに絶世の美形二人を見ればポカンともするよなぁ。
「お待たせしました。何か問題はありませんでしたか?」
「…あぁ、平気だ、な…うん。それよりキリヤの背後にキラキラした人物たちが見えるんだが俺の気のせいか?」
「まさか。こちらのお二人はエルフの王、サフラさんと王兄のハウエルさんです」
私の説明にギルとローランドはお互いを見合い私を手招きして呼んだ。
サフラとハウエルさんに少し待つように言って、ギルとローランドについて離れた場所に固まった。
「…王と王兄?何の冗談だ」
「いや事実ですって。ラーシュさんはお二人の再従姉妹だそうです」
私の説明に納得したようなしていないような顔をした二人を立たせ、サフラたちの前に戻った。
サフラたちはニッコリと笑った。
「はじめまして、外界の方々。わたしはエルフの王、サフラと申します」
…ん?
…すみません、これ誰ですか。




