私が帰す話 パート②
ついこの間、更新がんばるぜ!と言ったのにも関わらずこれです…
有言実行っていう言葉が私の辞書にはないのだろうか…
ストックが…!
ストックがほしい…!
お気に入り登録が300を超えました!
ありがとうございます(^^)/
300超えたら何か番外編的なの書こうかな…とか考えてたんですが…
何書こう…
ローランドの指摘に、ラーシュが私に少し怯えを見せた。
ギルは話の成り行きを見守っている。
「…服従の首輪を知っていますか」
私の唐突の質問にローランドはムッとしたが、頷いた。
「7歳の私はそれを付けられました」
「…!」
獣人は人間が嫌いだ。
なぜなら、人間は獣人たちを服従の首輪で奴隷にしようとするから。人間は獣人を亜人と蔑むから。
そして、人間は人間を虐げるから。
私の一言に理解を示したのか、ローランドは沈黙した。
え、理解しちゃうの!?
嘘である可能性とか指摘しなくていいの!?
ラーシュだけがよく分かっていないらしく、怯えの表情から困惑の表情を浮かべた。
「服従の首輪っていうのは付けた相手の命を握る魔具なんですよ。痛みも支配できますから、逆らえば苦痛を与えられます。大体奴隷に付けられます」
「…え…じゃあ…」
「はい。私は7歳から10歳までの三年間奴隷でした。そして暗殺者として育てられてました」
ギルも驚きだったのか驚愕の表情を浮かべている。
全く、美味しいご飯の最中にこんな話させるなんて空気読めない奴め。
ついでに、同情してもらいたい時はこの話の時に無理矢理明るく振る舞い、空笑いをして、最後に少しだけ顔を俯かせることが大切である。
あるいは困ったような顔をして淡々と話すか。
「いやー、あの三年間は楽しかった…賢者様も捕まってて、監視がいないことを良いことにいろいろやりました…」
ほんとあの基地よかったなぁ…
せっかく作った畑を出て行く時潰したのは本当に勿体無かった。
まぁ今の孤児院のほうが綺麗だからいいんだけど。
「…おい、キリヤ」
「ん?どうしました?」
「楽しかったのか…?」
「もちろんですよー。訓練はつらかったけどみんないい人たちばっかりだったし、弄ったら弄ったぶんだけ反応返してくれるあたりあの人たち面白かったですから!」
「…そうか」
特に教師陣は本当に面白かった。
ミゼンとかセロンとかなんであんなに面白いんだろうなぁ…
私の感想に呆れたらしい三人は心配して損した、みたいな顔をした。
「早く食べちゃいましょう。エルフの里までまだ大分距離ありますから」
雨の降った日以外は空を飛び、三日ほど旅を続けた。
ローランドとラーシュが思いの外仲良くなったことが少々驚きだった。
転移せずに里を訪れるのは初めてなので、ラーシュの案内のもと里を探す。
里を守る結界は透明で、加護の無い者は触れることすらできないので、ギルとローランドは近くの森でお留守番してもらうことになった。
「…ローランドさん、ギルさん、ありがとうございました。短い間ですが、お世話になりました」
「里まで送れなくてすまない。良ければまた国に訪問してくれ。その時は最高のもてなしをさせてほしい」
「ありがとうございます!」
「…獣人の国にも来てくれ。歓迎する」
「はい!」
うむうむ。種族間の友情が芽生えて私はとても嬉しいよ。
これでいろんな種族が交流を深めていってくれるといいな。
「あ、そうだ」
「どうした?」
私が唐突に声を上げたことにギルが反応した。
「これ、良かったら使って下さい。試作品なんですけど」
私は薄く魔術陣の書かれた紙を取り出した。
三人は不思議そうにその紙を眺める。
「なんですか?」
「紙なんですけど、その紙に伝えたいことを書いて送りたい人の名前を書くと勝手に飛んでいってくれるという便利品です。仲良くなったんですし、これ使えば文通できますよ」
「すごい…!下さるんですか!」
「試作品ですから。この部分に送りたい人の名前書けばその人のところに飛んでいってくれるはずです」
「…すごいな」
「あ!」
「…またどうした」
「…すみません、この紙にみなさん血を垂らして貰えますか?私の魔力が使われているから魔力を込める必要はないんですけど送り先は登録が必要だったんでした…」
「…便利なのか不便なのか微妙なところだな」
まぁ試作品ですから!
みんなそれぞれ血を垂らし、手紙として使えるようになった。
ううむ…名前だけで飛んでいってくれるように改良が必要だけど、同じ名前を持つ人が世の中にはたくさんいるからね…
だからこうやって本人に届かせるには血や魔力の登録が必要なのだ。
まだギルとローランドとは旅を続けるが、二人にも渡しておく。
それからラーシュと共に里の結界へと入って行った。
結界を通る時は違和感がする。
振り返ったが、ギルとローランドの姿は見えなかった。
この結界はエレンが弱っている今、ハウエルさんと精霊たちが維持しているはずだ。
なので、誰かが通過したことがハウエルさんに伝わっているはず。
「…わたし、事件に巻き込まれてからの記憶がないのでどれだけ時間が経っているか分からないんです。ちょっと不安です」
「大丈夫ですよ。ラーシュさんって今50歳くらいですよね?」
「42歳になります!」
「それなら王様はサフラさんですよね」
「はい!」
うん、なら大丈夫でしょ。
私はラーシュに案内され、森を通り抜けていく。
と、急にラーシュが声を上げ、駆けだした。
私もその後に続く。
「…着いた…!」
「…そうみたいです、ね」
少し前に訪れた里が変わらずに目の前に広がっていた。
ただ、雰囲気がどことなく暗いのは気のせいだろうか?
「…どうしたんでしょうか。何だか、暗い…」
ラーシュがそう呟いたので、気のせいではないらしい。
私たちは街の中に足を進めた。
街中はどこか活気がなかった。
私とラーシュを見た一人が大騒ぎを始め、沢山の人が集まってきた。
「ラーシュちゃん!帰ってきたんだな!」
「斎様じゃないですか!」
「え?ラーシュちゃんと斎様!?」
「おい誰か王様呼んで来い!」
とても大騒ぎする彼らは、皆一様に真っ白な服を来ていた。
ラーシュはみなさんの服装を見て顔を真っ青にした。
「…誰か…誰か亡くなったんですか…!」
「ラーシュ!キリヤちゃん!」
人垣の外から私たちを呼ぶ声を聞いた。
その声を聞いたみなさんはさっと分かれて声の主、サフラを通した。
「王様!」
「どうして2人が一緒に…いや、それよりラーシュ。今までどこに…」
「王様!っ、誰が、亡くなったんですか…っ」
サフラはラーシュの問いかけに息を詰め、チラリと私を見た。
それだけで、私は誰が亡くなったのかを知った。
「…長老が今朝息を引き取ったよ」
ラーシュはそれを聞いて、どこかに向かって走り出した。
何人かが引き止めようとしたが、ラーシュは全く聞いていないようだった。
私は異空間から黒い外套を取り出し、上から羽織った。
「サフラさん」
「…キリヤちゃん。ごめんね、来てくれたのにさ」
「大丈夫。詳しいことは後で話すよ。とりあえず、私もアルルさんに挨拶させて貰ってもいいかな…?」
「…うん」
サフラはぎこちない笑みを浮かべ、私を案内してくれた。
着いた先は神殿だった。
大勢のエルフが集まり、様々な花を持っている。
周りが全て白い服の中、私の黒い外套はよく目立った。
サフラと私に気づいたみんなが挨拶をしてくれた。
私もそれに頭を下げて返事を返す。
「…ハウエルさんはどう?」
「兄さんは神官として長老の葬儀に立ち会ってるよ」
「そっか…アルルさんは私を恨んでいたかな?」
「…それはないと思う」
「うーん…ならいいんだけど。というかこの黒い外套目立つね」
「…オレたちエルフの喪服は白だからね。人間は黒だよね」
「そうなんだよ。人間も白にすればいいのに」
などと話していると、神殿の入口に到着した。
私とサフラは自然と口を閉ざし、先を譲ってくれるみなさんに頭を下げながら進んだ。
泣き声が、進む度に大きくなる。
この間ヴェルトが捕まっていた?場所に、アルルさんはいた。
部屋は白い花で埋め尽くされ、アルルさんの眠る棺の中だけが様々な色の花で飾られていた。
並ぶみなさんが次々に持っている花を棺に納めていくので、あの鮮やかな花たちはみなさんが入れて行ったもののようだった。
少なくない人数が泣いていたが、一際大きな泣き声がした。
私たちはアルルさんの棺のすぐ側まで来た。
棺に縋るように、ラーシュが泣いていた。
棺の向こう側にはハウエルさんがいて、私を見つけると頭を下げてくれた。
私も頭を下げ、棺の前に跪く。
「…お久しぶりです、アルルさん」
アルルさんの身体は服で覆われていたため分からないが、きっとその身体は陶器のようになっているのだろう。
私は異空間から虹雨花を取り出して、一輪棺の中に入れた。
…アルルさんの葬儀に来れてよかった。
私がしたことは間違っているとは思わないけど、ちゃんと彼女の最期を見送ることは私の責任だと思うから。




