私が協力する話 パート④
最近月に二回のペースで更新してるなぁ…と思ってます。
一週間に一回くらいにはペースを早めたい…
何となく構造は出来てるのに書けないという…
自分の力不足がつらいです…
キリヤが激怒です…(´・ω・`)
私はユリアーデの様子を少し見て、大丈夫そうだったのでリタのもとに走った。
「リタ!」
走り寄ってリタを見ると、リタも気絶していた。
抱き起こして頬をペチペチと叩くと、瞼が動き、ゆっくりと瞳が開けられた。
「…しす、たー?」
「うん、大丈夫?怪我は?痛いところは?」
「…ナーダ!」
私の問いかけにリタはぼうっとしながら頷き、突然すぐそばにいるナーダに抱きついた。
見たところリタに怪我はない。心配はいらないだろう。
「シスター、シスター!」
リタがボロボロと泣いて私に縋ってきたので、どうしたのだと思ってナーダを見た。
私は息を呑んだ。
ナーダの肩に大きな穴が開いていたからだ。
穴の傷は焼かれていて、そのせいで血が出ておらず、ナーダの傷に気付けなかった。
「…まずいな」
治すことはできなくはない。
だが、私がそんなことをしてしまえば世界の均衡が崩れる。
先程の再生は私だから良かったのであって、誰にでも使うわけにはいかないのだ。
均衡が崩れるとは言っても、動物の群が一つ壊滅する程度だろうが…
一つの命を助けるために幾つもの命を奪うわけにはいかない。
「…なら、あの方法かなぁ」
私は自分の服を破いて肩の穴を布で覆って塞ごうとするリタの手を止めた。
「ねぇリタ。ナーダを助けるなら自分が犠牲になる覚悟はある?」
「ある!」
即答したリタに私は思わず微笑んだ。
幼いときはこの素直さがいい。
「なら、私のあとに続いて詠唱しよっか」
「うん!」
私はナーダの額に魔術陣を指で描き、リタの額にも描いた。
描いたとはいっても、目に見えるわけではない。
但し、リタの額にはナーダの血を少し付けたが。
「私、リタは」
「わたし、リタは」
「賢者の娘の称号を持って」
「けんじゃの娘のしょうごうをもって」
「神を証人とし」
「神をしょうにんとし」
「魔族の才媛、ナーダと」
「魔族のさいえん、ナーダと」
「仮契約の儀を行ったことを此処に宣言する」
「仮けいやくのぎを行ったことをここにせんげんする!」
リタの宣言が終わると、ナーダとリタの額が金に輝いた。
どうやら、ナーダの属性は雷だったらしい。
で、リタの属性も雷だったようだ。
…え、二人とも雷なの?なんかイメージと違うぞ?
光ったまま、ナーダの傷が塞がっていく。
これは仮契約や契約をする時、精霊が干渉してくれた場合起きる奇跡だ。
ほんと、奇跡なんですよ。
五十年に一回あったらいいほうなのだ。
だって仮契約って結構いっぱいやってるけど、隷属と似てるし、精霊ってそういうの好きじゃないからさ。
今回は私が干渉してることもあって精霊は協力的に干渉してくれた。
まぁ、私がいなくてもこの場合なら勝手に助けてくれたとは思うけど。
光がおさまり、ナーダの傷が塞がった頃、リタがふわりと意識を失った。
私はリタを抱き留め、魔術で宙に浮かべて他の魔族の様子を見て回ることにした。
ナーダ以外はそう酷い怪我は負っていなかった。
お城の使用人じゃない人もいくらか混ざっていて、多分排他思考の魔族だと思うので、縛って隅に転がしておく。
「…リタ!!」
丁度最後の魔族を縛って手をはたいていた時、ナーダの声がした。
ナーダを見れば、浮くリタに抱きついていた。
「おはようございます、ナーダさん」
私が声を掛けると、ナーダはリタから顔を上げた。
「…キリヤ。リタは一体…」
「あ、私が浮かべました。危険はないので安心して下さい」
「そう…」
「それより身体に異常はありませんか?肩に穴が開いてましたけど」
「…そうよ、確か、あたし…」
「リタとの仮契約で奇跡が起きて治りましたよ。仮契約で魔力持ってかれてリタは寝てるだけなのでそう心配しなくていいですよ」
「…仮、契約?」
私はリタを指して自分の額をつついた。
ナーダはリタの髪を除け、額を見た。
「…薔薇…あたしの印だわ」
「一か八かの賭けでしたが、成功して良かったです。早く契約に、」
私が言い切る前に、雷が私の横を走って行った。
「キリヤ!貴方…何のつもりなの。賭けですって?もし奇跡が起きなければリタは死んでたのよ!」
ナーダの感情に引きずられて雷が城の中を駆け巡る。
周りに被害が出ないように結界を張ったが、それすらナーダは気づいてないようだった。
仮契約や契約をした場合、精霊の干渉で奇跡が起きる。
だから、愛しい人を助けるために仮契約を実行する例が少なからずある。
…もし、奇跡が起きなければ?
どちらかが死ぬか、両方死ぬか。
片方が死ぬ場合、魔力の弱い方が死ぬ場合が圧倒的に多い。
ナーダはそれを分かっていたからこそブチギレしているのだ。
「そうかもしれませんね」
「分かっていたのならなんで…!」
「リタに覚悟を問いました。あなたを助けるなら自分を犠牲にできるかと。リタは迷いませんでした。だから私も迷わなかった」
「迷わず止めるべきだわ!あたしなら死なない可能性もあった!」
そうかもしれない。
ナーダは魔族だから人間よりも自然治癒能力は高いし、魔力も多いから死なない可能性もあっただろう。
ただし、ナーダの属性が癒しと関わりの近い水か光だった場合は、だ。
結論からしてみれば、ナーダは死んでいた。
それに、
「正直に言わせて貰うと、ナーダさんを助けるためにリタに仮契約を勧めたわけではありません」
そうだ。ナーダを助けるためだけなら私がその傷を治せばよかったのだ。
ちょっとだけ均衡が崩れるが、私が対価を払うことでどうにかなっただろう。
「契約は対等でなければいけない。ナーダさんに覚悟があってもリタに覚悟がなければ私は契約なんてさせません」
リタは私の問いかけに応えた。
リタがナーダを本気で助けたいと思ったから。
いい加減鬱陶しかったので私はナーダの暴走気味な魔法を打ち消した。
「リタの覚悟を受け止められないなら仮契約を取り消して下さい。そして、今後一切リタに関わらないで」
その程度の覚悟ならいらない。
契約とは、そういうものでしょう?
そう微笑めばナーダはぶるりと震えた。
「…そうね。ごめんなさい。気が動転していたわ。リタがそれほど私に心をさいてくれていたことに私は感謝するべきだったわ。…キリヤ。契約することを認めてくれるかしら?」
「リタと相談して下さい。私は二人なら良いパートナーになれると思いますよ」
「…ありがとう」
その時、丁度リタが目を覚ましたので、ナーダは半泣きでリタの無事を喜び、リタは泣いてナーダの無事を喜んだ。
「ふむ。キリヤ殿、この芋虫たちは何だ?」
「あー、なんか見たことない人達だったし、排他思考の魔族かなと思って芋虫に…」
隅に寄せて山にされた魔族の芋虫たちを私たちは眺めていた。
ザクロとギルもあの後すぐに目を覚まし、城の皆さんは反対側の隅で丁寧に寝かされている。
ユリアーデは魔力の使いすぎで相変わらず寝ているが、アトゥーロ様に横抱きにされたままだ。
起きたときが楽しみである。
ナーダはリタを抱き上げて私の斜め後ろで芋虫たちを警戒していた。
「むー!!むんー!!」
芋虫の一人が猿轡を噛ませてあるのに叫んでくるので、黙れと威圧を掛けてみる。
その瞬間は黙るのだが、また叫び出すので仕方ないから物理的にどうにか…
「キリヤ殿、頼むから楽しそうな顔でハンマーを取り出さないでくれないか?それとそのハンマーはどこから出したのだ?」
「あはは。ハンマーは遠くから転移術で取り寄せたんですよ。いえ、煩いから黙ってほしくて。物理的にどうにかすれば黙るかなぁって」
勿論ハンマーは異空間から取り出している。
「殺すつもりか!?」
「いやですね。殺しはしませんよー。厄介そうだし。というか、これは何ですか?」
「あぁ…」
私の様子がちょっと変なので、ザクロとギルは、あれ誰ですか?知るか、というやり取りをしていたりする。
「これは…多種族排他思考の魔族のリーダー、ザウロスだ」
これ…ザウロスは私たちを睨んで相変わらず叫んでいた。




