私が協力する話 パート②
明けましておめでとうございます!
キリヤたちは相も変わらず元気そうですね!
今年もよろしくお願い致します。
私はユリアーデに守られて、城の一角にいた。
部屋にはアトゥーロ様もいて、扉付近には一応バリケードが作られている。
リタはナーダとギル、ザクロに守られているはずだ。
また、ナクタさんやドーラさん、ルルやララなど、この城の戦力の殆どはリタを守ることに従事しているはずである。
時間は、昨日に遡る。
「協力しましょうか?」
私がそう言うと、アトゥーロ様はパアッと顔を輝かせた。
ユリアーデも目を輝かせ、嬉しそうにしている。
一人、ギルだけが不服そうな顔をした。
「協力するって言ったって何ができるんだ」
「…囮?」
「そうだな。キリヤ殿なら囮役は最適だろう」
「待て、危険すぎるだろう!」
「大丈夫。私と、アトゥーロ、で、キリヤ、守る、よ」
ユリアーデの発言に、ギルは考え込んだ。
暫く考え、ため息を吐く。
「…わかった。リタはナーダと俺とザクロで守ろう。魔王とユリアーデの二人なら何とかなるだろ」
そう言って、ギルは渋々とだが了承してくれた。
それから私たちは作戦を考え…
今に至るわけである。
作戦は至極簡単。
二手に分かれてぶっ潰せ、である。
主に狙われるのはアトゥーロ様らしいので、こちらは手薄だ。
アトゥーロ様の次に狙われるのは私とリタなので、リタの方は警備が厳重なのである。
昨日の話し合いが終わり、寝ていたら襲撃され、作戦通りに別れ、今は籠城戦だ。
流石に魔族を一気に相手するのはユリアーデもアトゥーロ様も大変らしく、窓から入ろうとする奴らを取りあえず殲滅している。
あー、痛そう。
あれきっと全治半年くらいだよ。
敵は半分はこちらに来た。
主にアトゥーロ様の首を狙い、たまに私を殺そうとするやつらがいるが、悉くユリアーデに半殺しにされている。
私はボーッと突っ立っているだけだ。
敵はあまり頭が良いわけではないらしい。
面倒臭い。
「ユリアーデさん、リタたちの方は大丈夫ですかねー」
「大丈夫、だよ。あの、三人、上位、8人に、入る、し」
「8人?えーっと、ナーダさんは5人に入るって言ってましたけど」
「うん、多分、一番強いの、アトゥーロ、で、次に、他種族、排他思考の、リーダーが、強い。ギルと、ナーダと、ゾーラが、次、かな?で、ザクロが次に、くる、よ」
「へぇ…ユリアーデさんは?」
「さぁ、ね。みんな、私と、戦って、くれなくて、よく、わから、ない」
…そんなに戦うの嫌がられるって、相当ですよ、ユリアーデさん…
ユリアーデの話では、8人の残り二人は他種族排他思考の魔族集団の中にいるらしい。
それは中々面倒だなぁ…
「キリヤ、そろそろ」
「そうですね…私も動きますか…」
ちょうど、扉付近のバリケードがぶち壊された。
…なんてこった。ぶち壊された椅子が飛んできたぞ。
「アトゥーロ!!」
ユリアーデが叫ぶのと同時に、アトゥーロ様に向かって魔法が飛んできた。
炎属性の魔法は真っ直ぐにアトゥーロ様に向かい、そしてアトゥーロ様があっさりと消した。
今の結構強い魔法だったんだろうに…
「くく…まぁ、魔王様には俺如きじゃ通用しねぇよなぁ」
その声は私の背後から聞こえた。
「ぐっ…」
「キリヤ!」
「キリヤ殿!」
声の主…ゾーラは迷いもなく私の腹に腕を貫通させた。
下を見ればゾーラの褐色の腕が私の腹から見えた。
…痛ってぇな…
「こんな魔力の欠片もねぇ人間なんざ食いたくねぇんだがよぉ。ザウロス様が消せって言うもんだからなぁ」
ゾーラは貫通させた腕を引き抜き、途中で私の肝臓を抜き取って行った。
ゾーラはそのまま肝臓を口に運んだ。
…ぎゃー、猟奇的!
そして咀嚼し、飲み込む。
「…どう、して…」
「あぁ?」
「私の、肝、臓を…」
「どうしてだと?んなの適当に抜いたのが肝臓だっただけ、…あ?」
「いやね、肝臓って苦くない?不味いと思うんだけど。まぁ、人間の肝臓なんて食べたことないけど…え、美味しかった?」
「な、なん…」
私は腹を押さえて普通に立っていた。
まぁ、痛覚は遮断してるし、直ぐに再生させてるし、問題は特にない。
ゾーラは平然と立つ私を見て茫然としていた。
信じられないのだろう。
ユリアーデやアトゥーロ様も信じられないような物を見る顔でこちらを見ていた。
「あぁ…そうだ、その肝臓だけど…多すぎる魔力が含まれてるんだけど…大丈夫だった?」
「ぐっ、ぇ、」
ゾーラは突然に喉と腹を押さえて倒れ、呻き始めた。
「やっぱり。食中毒だね、きっと。迂闊に人間なんて食べるもんじゃないよ。もし、相手が自分より強い場合、どうするの?」
私の準備といえば、攻撃されて、何処か食べられるシチュエーションになった場合、どうするかということだった。
え?そんなシチュエーションはない?
…いやでも…結果的にはそうなっちゃったじゃん!
最初は油断させたいから、無双するのはちょっとなぁ、と思いこうして攻撃を受ける結果になったわけである。
抜き取られる瞬間に、私の魔力をこれでもかと詰め込み、ゾーラの体内では私の魔力が暴れ回ってるに違いない。
他人に魔力を分け与える場合と魔力を叩き込む場合とでは、魔力の質が異なり、分け与えた場合は直ぐに馴染むが、叩き込むと死ぬほどの痛みを味わうことになる。
ゾーラが死ぬ寸前レベルの魔力を入れておいたので、死ぬほど苦しいが死にはしないだろう。
アトゥーロ様とユリアーデを見ると、それぞれ顔を青くしていた。
…味方にそんなことしないって。
「キリヤ殿、あの呪いは本当に温泉に入れないだけなのか?温泉に触ったら爆発するとかそういう呪いでは…」
「違います。至って普通の呪いです」
「キリヤ、お腹、もう、痛く、ない、の?という、か、怖い…」
「痛覚切ってましたから。怖いって…まぁ猟奇的ではありますけど…」
「うん、だから、他の、魔族、逃げて、行った、けどね」
そう言えばと思って周りを見渡して見れば、誰も居なかった。
…あらまぁ
「…この様子だとナーダたちの方にザウロスが行ってるな。儂らも向かおう」
「うん、賛成」
「そうですね…ちょっと、急ぎましょうか」
少し嫌な予感がしている。
その為にも、リタの元に早く向かわないと…




