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最強な賢者様と私の話  作者: 天城 在禾
事件、もしくは秘密
80/134

私が困惑する話

…遅くなってしまってすみませんm(_ _)m


 

 

 

 

 

セェルリーザから帰ると、暇を持て余していたらしい子供たちに生き埋めにされた。

ごめんね、そんなに寂しい思いさせて。

一人一人抱きしめてやると、ものすごい力で抱きしめ返された。

それをエレナさんが笑って見ていたけど 、ごめん、笑い事じゃなく死にそうなんだ!

それからいっぱい遊んだ。

私が学園に通ってしまったのもあって、子供たちと遊ぶ機会は本当に少なくなってしまっていたのだ。

…うーん、学園行くの週2くらいにしようかな…


「シスター!」

「うん?」

「見てー!」

「うんうん…ん?」


一昨年来たリタという少女がにこにこしながら私に動物を見せてきた。

…あれ、これ魔獣じゃん!?


「リタ、これどこで拾ってきたの?」

「んーと、直ぐそこの森!」

「…あぁ、そこの森か…」


リタが拾ってきていたのは栗鼠に似た魔獣で、怪我をしているのか大人しい。

毒も持ってなかったから特に制止はしないことにする。


「…けど、ちょっと危ないかな…」


孤児院の隣の森は魔物が住む。

魔獣なら孤児院の敷地内に戻れば襲われる心配はないが…

もし、魔族に会った時、ここまで逃げてこれるのか、という問題がある。

私はとりあえず子供たちに森に入るのを一週間禁止し、その一週間で森の開拓をしよう、と決めた。







おはようございます。

みなさん、翌日です。

というわけで、森の開拓を始めようと思います。


「…はー、思ってた以上に子供たちが入り込んでたんだなぁ…」


森の中には獣道が縦横無尽に巡らされていて、木の根元にできた穴や木の上に子供たちの基地が作られている。

動物や魔獣たちはそれも森の一部であるかのように特に気にしている様子はない。

…これはすごい。人と魔物が調和しているところなどそうそう見れるものじゃない。

折角なので、私は森全体に効力の低い結界を張ることにした。

その効力というのも、普段は森に全く制限を掛けず、子供が襲われた時のみ襲った相手を拘束し、子供を孤児院に飛ばすという何ともチートな効力である。

あー、こんなチートで本当に大丈夫なのだろうか…

私が結界を張り終え一息ついていると、圧倒的な魔力が森に顕現した。

…どうやら、魔族が現れたらしい。

私は川のそばで一息ついた格好のまま、魔族が来るのを待つことにした。

魔族が探しているのはやはり私…結界を張った主らしく、魔族はそのまま私の方へ向かってきている。

しばらくして、やっと魔族は私の前に現れた。


「…結界を巡らせたのはあなた?」


魔族は清楚系美女だった。

…あ、なんかこれ字面可笑しくない?

魔族は女性で、サラサラの深い青の髪に赤い目をしていて、服も華美ではなく、かと言って地味でもない、黒のワンピースを着ていた。


「えぇ、そうですよ?何か問題が?」

「…結界が巡らせられたと知って来てみたらあたしたちに害のあるものじゃなかったわ。何でそんな結界を張ったの?」

「あー、保険です。子供たちに万が一のことがあった時の為の」

「…今まで無関心だったくせに…」


…それは心外である。

子供たちが森に入って何かあったらいけないからと森に入るときには私とヴェルト特製の腕輪かネックレスを身に付けるように言い含めているし、孤児院には必ず大人が三人はいるようにしていて、子供の数も一時間に一度は必ず私に報告がされているくらいの徹底ぶりだ。


「無関心?どうしてそう?」

「リタが寂しがっていたもの。シスターが出掛けてしまうって。…シスターってあなたでしょう?」

「…リタが…」


ううむ、やはり大分寂しい思いをさせてしまっていたみたいだ。

やっぱり学園には週1で通うことにしようかな…


「ナーダ!」


その時幼い声がして、小さな影が私と魔族の間に入り込んだ。

小さな影…リタは私に背を向け、私を守るように両腕を広げている。


「リタ!」

「だめ、シスターに攻撃したら!」

「リタ…どうしてそいつを…」

「リタを助けてくれたのはシスターだもん!」


リタはちらちらと私を見ながらナーダと呼ばれた魔族に話しかける。

私は苦笑して、リタを手招きした。

リタは即座に私に走り寄ってくる。


「シスター、シスター。ナーダはね、リタを助けてくれたの、くまさんに食べられそうだったの、助けてくれたんだよ!」

「そっか。でもリタ、どうしてその事を隠してたの?」

「…だって、人間は魔物と仲良くしないんでしょ?バレたら、ナーダが…」


リタの行動は全てナーダを守るためのもののようだ。

別にナーダを殺すつもりも捕らえるつもりもないんだけどなぁ…


「ナーダさん、リタを助けてくれてありがとうございます」

「ふん、当たり前のことをしただけよ」


ナーダは悔しそうな顔で私を睨んでいる。

リタが私に走り寄ったのが相当悔しいらしい。

それにしてもナーダは珍しい魔物だ。

魔物は自分たち以外のものは捕食対象だ。

その中でも人間などは好んで食べられる。

捕まえ易く、かつ歯ごたえも柔らかい。

…いや、私は食べてないよ!?あくまでも魔物の中での一般的な見解だからね?!

魔物は魔の物というだけあって、魔力を欲っするため人間を食べる。

逆に言えば、魔力が宿っている生物なら好んで食べるということである。


「リタ、安心して。ナーダさんをどうこうするつもりはないから」

「…本当?」

「うん。それにくまさんから助けて貰ってからも何度か会ってるんでしょう?」

「うん…ナーダはいつも遊んでくれるの」

「そっかそっか。でも森に入る時はちゃんと腕輪かネックレスして入るんだよ?」

「あっ…はーい」


今何もしていないのを指摘するとリタは決まりの悪そうな顔でそっぽを向いた。


「…ヒト如きが、あたしをどうこうすることなんて不可能よ。リタの心配は取り越し苦労だわ」

「ナーダはシスターのこと知らないからだよ!シスターはさいきょーなんだから!」

「あたしは魔族でも五つの指に入る実力者よ。リタは私が守るわ」


なんとなく噛み合わない会話を聞いていて、私は苦笑をより深くする。

てか、ナーダってリタのこと大好きだな、おい。


「そんなに大好きなら契約すれば?リタはそこそこ魔力持ってるし」

「けいやく?」

「そ。ナーダさんとずっと一緒にいられるよ。但し覚悟はいるけど」


私が笑顔でありながら真剣に問うたことが肌で感じられたのか、リタはぶるりと震えた。


「リタ?」

「…ナーダと一緒?ずっと?」


ナーダが何か言おうと口を開いたが、私たちのやり取りに何故か黙り込む。

それを視界の端に入れつつ、私は優しく見えるように笑みを深くした。

孤児院にいる子は皆賢い。

リタももちろん、私の問いに深い意味があることをわかっている。

私がこの表情を浮かべる意味もきっとわかっているだろう。


「…シスター、けいやくって、何?」

「相手と信頼関係があって、対等な立場を手に入れることができるものだよ。意志の強さによって、感覚を共有したり力や能力を強くすることもできる」

「…けいやくしたら、どうなるの?」

「普段とはそう変わらない。契約した相手とどこまで離れても平気だし。だけど、相手が死ぬと、自分も死ぬかもしれない。確率的には半々だけどね」

「リタが死んじゃったら、ナーダも死ぬってこと?」

「そう。だから良く考えないとね」


きっと、リタはナーダと契約することを望むだろう。

…うん、これで魔族にも伝手が出来そうだ!



 




 

すみません、訂正です!


人間やエルフ→人間


読み返して思い出したのですが、エルフって魔術とか魔法とか使わないんですよね!

だから魔力は持ってるけどそこまで多くは持ってない、はずです!



(…あれ…設定をまとめたノートどこいったかなー…)


 

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