私が送る話 パート⑤
あー…ストックが無くなってきました…
なので、次回以降本当に不定期更新になることが予測されます…
いや、予測っていうかマジで…
登場人物多すぎて本当にすみません!
それに特徴もないし!←
多分ほとんどの登場人物は忘れていただいて平気かと。
たまにチラッと出てくる程度だと思います。
その日はアリアさんのご厚意でお城に泊めて貰った。
レィティアは暫くこのお城に残るらしい。
私とヴェルトは明日には孤児院に帰ろうと決めていた。
深夜、寝静まった城の中を私は歩いていた。
眠れない。
アルルさんを助けるのを妨害したのはきっと神様だろう。
ヴェルトは「テメェは神じゃねぇんだぞ」と言ったが、もし私が神様だったなら、当然アルルさんを助けてはいなかった。
…私は神様じゃないからアルルさんを助けたかったのに。
「…はぁ。本当、嫌になる…」
神様は私になにを求めているのか。
…やめよう、きっと“神”にでもしたいに決まっている。
それより、エレンはいつ回復するのだろうか。
それまで精霊帝王は不在になる。
別にそれは構わないのだが、エルフに加護をどう渡すつもりなのか。
それに、エレンが機能していない今、エルフの里は無事なのだろうか。
…まぁ、きっと何とかなるだろう、うん。
サフラはああ見えて切れ者だし、ハウエルさんが里の結界を維持するに違いない。
レィティアとは暫くお別れだが、レィティアの探し人を見つけたらきっと紹介しに孤児院に遊びに来てくれるだろう。
うーん、とりあえずレィティアのために魔具を作っておこう。
翌朝、朝食を食べているとソラが考え事をしながら部屋に入ってきた。
「ソラ、どうしたのかしら?」
アリアさんが訝しんで尋ねる。
ソラは視線を上げ、部屋にいる私たちの顔を見た。
「…昨日シスターに教えて貰ったローロパイを作ってみたんですが…シスターのもののように上手く作れなくて。この場にお持ちしてもよいのかと…」
「いいわ、持ってきなさい。キリヤ様にこき下ろして貰いなさいな」
「…はい」
ソラは神妙に頷いて、一旦部屋から出て、直ぐに戻ってきた。
「お待たせ致しました。期待外れになると思いますがご賞味下さい」
ソラがローロパイを切り分け、私たちの前に並べていく。
私はまず見た目から判断していく。
「…んー、まぁ見た目はそこそこかな?別にこの格子型に拘らなくてもいいし。あー…なるほどね。カスタードがちょっと多いか…」
フォークを入れ、中を見ればカスタードがべっちゃりとしている。ローロがハッキリ言ってどこかに消えてしまっている。
「…ん、味はいいけど。ローロパイじゃなくなってるね。カスタードパイかな。ま、試行錯誤してみなよ。これはこれで美味しいし」
私がそう評価を下すとソラは敬礼した。
…おーい、何故敬礼した?
「キリヤの作ったもんに勝とうなんて百年掛かっても無理だろ。…だが、これくらいなら院の料理長任せてもいいけど、」
「いんちょー!」
「ぐっ…」
ヴェルトが遠回しにソラを褒めると、ソラが感激してヴェルトに抱き付いた。
私たちは思わず生暖かい目を向けた。
あぁ、うん…ヴェルトが照れと、抱き付かれるのが嫌らしくソラを引き剥がそうとしているが、ソラは渾身の力を入れてるらしく引き剥がせない。
私は黙ってお茶をすすった。
「…いいのか?」
「うん。うちのコミュニケーションだから」
「こみゅ…?」
「えっと、親好を深めてるってこと。そうだ、後でレィティアに渡したいものがあるんだー」
「何だ?」
「レィティアって旅に出る予定なんだよね?」
「あぁ」
「レィティアはもう魔力ほとんど持ってないでしょ?剣とか護身術とか出来るかも知れないけど不安だから魔具を渡しておこうと思って」
私がそう言うと、レィティアは酷く驚いた顔をした。
「…私のために、か?」
「もちろん。だってレィティアと私は友達でしょ?」
「…あぁ、そうか…ありがとう」
ふっと笑ってくれたレィティアに私も笑い返した。
それからローロパイを食べ終わり、私とレィティアは席を立った。
アリアさんにヴェルトとソラは任せ、私とレィティアは私が借りていた部屋に向かった。
私が作った魔具は3つ。
レィティアを守る結界を張るネックレス、私の魔力を込めた銃、怪我や病気を治す指輪。
それらは全てレィティアにしか使えないように作ってある。
銃はこの世界に無いものだから、使い方を教えておく必要がある。
部屋に着いて、私はそれらをレィティアに差し出した。
「こんなにくれるのか!?」
「うん。レィティアは護身術とかって使える?」
「まぁ…かつてはよく命を狙われていたからな」
「…」
私は苦笑いをして、話を逸らすために魔具の説明をした。
「このネックレスは結界を張ってくれる。ただし身につけてる時だけね。手に持ってるだけでも効果はあるよ。この指輪は病気とか怪我したときに治してくれるやつ。で、これは銃っていう武器。筒の先を標的に向けて、この引き金を引くと弾が出る。後で少し実践してみよっか。あぁ、それと全部レィティアにしか使えないようになってるから」
「…」
「レィティア?」
私がレィティアをのぞき込むと、レィティアは想像以上に呆けた顔をしていた。
「…こんな、こんな…こんなもの、受け取れない!」
「え、気に入らなかった?」
「そうじゃない…私には勿体なさすぎる。それにキリヤにここまでしてもらう理由はない…」
私は俯くレィティアの手に魔具を握らせた。
レィティアは拒もうとしたが、私はそれを拒絶した。
「レィティア、これはね、私の勝手な自己満足なの。友達であるレィティアに生きてほしい、無事でいてほしい。また会いたい。だからこれをレィティアに渡すの。言っておくけど、受け取って貰えなくても私はそれを返してもらうつもりはないよ?だってレィティアにしか使えないし」
私は笑ってレィティアを見た。
「だから、何も言わないで受け取って」
「…」
レィティアは複雑そうな顔で渋々私からのプレゼントを受け取った。
それから少しだけレィティアに射撃練習をさせた。
…うん、レィティアもチートだった。
なんではじめて使う武器をあんなに易々と扱ってしまうのかねー?
ほとんど的を外すことなく放たれる弾を見て、私は呆れていた。
まぁ、レィティアにとって使い易そうな武器でよかった。
「…もう行ってしまいますの?」
「はい、すみません。子供たちが待ってるので…」
「…子供?」
見送りに来てくれたアリアさんとフェルドレグさん、レィティアと別れを惜しんでいる最中だった。
私の発言に3人が首を傾げる。
「…あれ?」
私とヴェルトも首を傾げた。
「…二人に子供が居たのか?」
「…は?」
「…賢者様…結婚もしてないのにそれは…」
「…まて、誤解だ!」
胡乱げな視線を向けられ、ヴェルトは顔を青くして首を横に振った。
「えーっと、私たち孤児院経営してるんですよ」
「あぁ、昨日ソラは息子って言っただろ。あいつも孤児院出身なんだよ」
私とヴェルトが慌てて弁解すると、三人は安心したように息を吐いた。
「そういう意味だったのか。私はてっきりソラ殿は賢者殿の本当のご子息で親子揃ってキリヤに迫ってるんだと…」
「レィティアさん、それどんな昼ドラですか!?」
「ひるどら?」
「ともかくお前らのそれは誤解だ。ソラとは血のつながりはねぇし子供ってのも孤児院のやつらのことだ」
「それはよかったわ。そう、孤児院を経営してらっしゃるんですのね。今度少し物資を送りますわ」
「助かる、ありがとな」
誤解の解けた私たちはお互いに安堵してそれぞれ握手を交わし、今度こそ私とヴェルトは城を後にした。




