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最強な賢者様と私の話  作者: 天城 在禾
事件、もしくは秘密
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私が聴く話、来るは妖精の王

 

 

 

人間の国は五つある。

そのうち一番力を持つのは私たちの住むアルテルリア王国で、だからこそ私たちはアルテルリア王国にいると言っても過言ではない。

その王国の唯一の魔術学園はそれはそれは権力を持っている、下手な貴族より余程、だ。


だから、先日のディグザムの襲撃事件はたいそうな動揺をもたらした。

人間の持ちうる力を注ぎ込んだ学園の結界が破られたのだ。

ディグザムの侵入経路を調べたところ、相当な魔力を使った転移であることが分かった。

私やヴェルト、トーマは転移に陣を使うが、人によっては詠唱だったりして、転移を行った場所が把握できないでいる。

…正直、あの後直ぐに私たちが調べていればよかったのだが、私はハルトにバレて動揺していたし、ヴェルトは阻害を受けたらしい。

強行突破してくれよ。面倒臭いだけだろ、と言ったら視線を逸らされた。

…また、学園内に協力者がいる可能性が非常に高い。


ここで、少しだけ結界について紹介しておく。

私やヴェルトが作る結界は純粋な魔力のみで、属性の色は付かない。

というか、全ての色が付いて透明化したというほうが正しい。

火は赤、水は青、土は茶、風は緑、雷は金、闇は黒、光は銀…といったように属性には色があり、魔力にも色がつく。

では、学園の結界はどうなっているかと言えば、一つの属性に特化した人を呼び、その人に結界を張って貰う。

全ての属性を張り終わると、不思議と結界は絡み合い混じり合い透明化するらしい。


「へぇー。賢者様知ってた?」

「知らねぇ。何の話だよ。急に喋んな」

「あ、すみません。続けて下さい」


急に話し出した私にヴェルトはそこそこな反応を返してくれた。


今、私たちは国際会議に出席している。

今回の国際会議は臨時かつ機密で、しかも珍しく人間以外も出席している。

場所は魔術学園。

各国の王と学園長、種族の王、私とヴェルト…という不思議なメンバーになった。

尚、東国は来ていない。龍族やドラゴン族ですら行けないという珍しい国なので、国交は断絶している。

どうして私の祖先はこの国に来たのか未だ謎である。


「…ゴホン…結界の強化が課題と思われる。今回の襲撃の目的はそこの少女である可能性が高い…というのがアルテルリアの考えだ。何か質問は?」


今喋ったのが、アルテルリア王国国王、レオナルド=フォン=アルテルリアである。

彼はアルベルト様より年下で、お父さんより年上…だから多分今四十代だと思う。

多分ね!

彼は私に負い目を感じているので、目が合わない。

そこまで露骨に避けられると悲しくなるんだけど…


「…名前は紹介されましたが、その少女は何者ですか?賢者と仲が良さそうですが」

「おい、賢者様を馴れ馴れしく呼ぶでない」

「はっ。賢者を敬うことしか出来ないから貴殿の国は魔術の発達が遅いのですよ」

「何?」

「やめてくれない?貴男たちのつまらない話を聞きに来たわけじゃないの」

「全く、人間は短気で困る」


最初に言い合いを始めたのがフローゼルク国王、ダーラン=フローゼルクと曜然国王、栽嵐。

二人を咎めた?のがセェルリーザ国王のアリア=ヴェン=セェルリーザ。

最後が龍族の王、彗である。

フローゼルクは曜然国と国力の差がほとんどないため、お互い意識し合っているらしい。

セェルリーザは二番目の国力で、アルテルリアとの繋がりがとても強い。


「では、改めて自己紹介しましょうか?キリヤです。平民ですので姓はありません。賢者様に助けて頂き、魔術の才を見出され側に置いて貰っています」

「…君から魔力はほとんど感じられませんが?」

「賢者様からもそこまでの魔力は感じられないのでは?」

「それは賢者だからでしょう。魔力を調節…もしや、君もできると?」

「まぁ、少し」


私は笑った。

ダーランは私を睨むかのようにこちらを見たが、直ぐに視線を逸らされた。

…なにこれ、私と視線を合わせちゃいけない暗黙の了解でもあるのか?


「おい、本当にキリヤが狙われたのかよ」

「…私に聞かないでくれますか。彼女が一番わかっているだろうに」

「あー…別に私が狙われたわけではないと思いますよ。ただ、襲撃者が私がその場にいることは知っていました。だから送った人は私を知っているみたいですね」


ディグザムは私がいることを知っていた。

それはあの登場のシーンからよく分かる。

ただ、私を狙っていたのかと聞かれると確証はない。


「我々はあの場におりませんでしたからのう。あの場にいた生徒や教師には話を聞きましたがキリヤさんと戦っていた、としか答えてくれませんでしたからのう」


ディグザムとの再会を思い出す。

あいつの最期の言葉を聞いて、復讐したときに殺してあげれば良かったと後悔した。

…他のメンバーはどうなっているんだろうか?


「レオナルド国王、ヘルトモルテにいた闇ギルドはどうなってますか?」

「唐突だな…あれなら八年前に何者かが拘束したため、国が引き継いだ。それがどうしたんだ」

「そのギルドの頭の名前は」

「ディグザムだが…」

「いますか?」


レオナルド国王は私の言いたいことを把握したらしく、口元を押さえた。


「その襲撃者がディグザムだったと…?」

「闇ギルドを拘束したのは私ですから。よく覚えてますよ」

「少し席を外す」


レオナルド国王は言い終わる前に会議室を出ていた。

会議の進行役が居なくなってしまったので、手持ち無沙汰な私はとりあえず学園長と今後について話すことにした。


「試験も終わりましたし、あのクラスには課題をちゃんと出しておいたので私もう止めていいですか?」

「それは困りますのう。賢者様がいらっしゃらないことになりますからの」

「賢者様、お金のために頑張って」

「ふざけてんのか」

「というわけですからの、キリヤさんにもまだ席を置いていただかなくては…」


私はヴェルトを睨み、とりあえず椅子ごとヴェルトから離れた。

隣の学園長の横に椅子を寄せ、祖父と孫のようにくっついてみせた。

そこにちょうどレオナルド国王が帰ってきた。


「…何があったか知りませんが、賢者様が謝ることをお薦めします。闇ギルドだが…ディグザムは死亡届が出されていたが、死体は確認されていない。他のメンバーは精霊使いと剣使いが死亡届が出されていた、が死体は確認されていない」

「…ランドさんとバーンさん、かな?」

「…確か、そのような名前だった」


私は苦笑した。

どうやら、敵は私のことをストーカー並みに知っているらしい。

私が名前を覚えている三人を引き取っていったらしいから。

ヴェルトがこちらを睨んでいたので、後で色々と話さなきゃいけないんだろうな、と思った。


 

 


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