私が通う話、場所は学園 パート⑳
王都の中心部には、装飾品、食料、雑貨、服…そういった物が世界各地から集まる場所がある。
中央広場と呼ばれる大きな広場があり、その周りに店が軒を連ねている。
レイ=シャルディン街、王都の要である。
その街に私はハルトと…何故かついてきた特殊クラスのその他6名と一緒に来ている。
特殊クラスは総勢10名と少なく、そのうち7人が揃っているとなると、中々壮観である。
あの後、ハルトと共に出てきていた特殊クラスのメンバーが私とハルトを囲んできたのだ。
特殊クラスは仲が良く、ハルトと話しているのが私だと分かるとわいわいはしゃぎ始めた。
それで、街について行こうという話になり、用事のあった他3名以外全員ついてきたというわけである。
…街の人みんなビビってるよ…
「なぁなぁ!ハルトの姉さん!」
「ちょっと!あたしが先に話してるのに!」
「み、みなさん…街の人たちに迷惑ですよ…」
「お前らうるさいぞ」
「全く、あなた達は子供ね」
「…」
個性的なメンバーで、それぞれ魔力の量、質と共に素晴らしく、また善良なのか彼らの周りは精霊だらけだ。
…見てて目がチカチカする。
「ごめん、姉さん。帰らせようか?」
「別にいいよ。こんなにはしゃいでるんだから。にしても、みんないい人みたいだね」
「あぁ。姉さんは精霊が見えてるんだよな?」
「もちろん。目がチカチカする」
「そうか。俺は慣れてたからあまり気にならなかったが…」
なるほど、だから彼らを平然と見てるのか。
私なんて目を細めて見てるのに。
「ハルトの姉さん!魔力って調節できるもんなのかよ」
「ちょっと!あたし先!ハルトのお姉さんっていくつ属性持ってるの?」
前者の彼はルーク=サンドラ。金髪で空色の瞳で、先程から私に必死に話し掛けてきている青年である。
後者の彼女はリナ=フレイム。赤髪赤眼の彼女はサイアス先生の姪御さんである。
「私は自分で調節してるわけじゃないから。賢者様は自分で調節してるけどね。百年くらい訓練すればできるんじゃない?私は全部の属性持ってるよ」
「そうか…」
「全部…」
私の言葉に二人は難しい顔をして黙り込む。
「ふむ、全てか。何か一つ秀でているわけではないのか?」
「へぇ~。じゃあどうやって調節してるのよ?」
グレーの髪と瞳の青年と黒髪で深緑の瞳の美女が次に質問してきた。
青年はカータス=シュバルツ。偉そうな喋り方だが嫌味には感じない。
美女はエスメラルダ=クロウリー。ちょっと目のやり場に困る格好をしている妖艶な美女である。
「よく使うのは水と炎と風だけど、特に秀でるとかはないかな?私はこのブレスレットで調節してる」
カータスは興味深そうに一人頷き、エスメラルダは私のブレスレットを見たそうだったので、貸してあげた。
エスメラルダはキョトンとした顔をしたが、恐る恐るブレスレットを貰うと、色々と観察し始めた。
「あ、あの…それじゃあ闇と光を同時に使えますか…?」
「……………不思議」
白髪に黄緑の瞳の少女と黒髪黒眼の少年が最後に喋る。
少女はシルヴィア=レイウェル。おどおどとしたところは初めて会った時のアリスに似ている。
少年はソロモン=ラァクス。正直私は君のほうが不思議そうに思えるけどね。
「使えるよ。…あぁ、みんなは使わないほうがいいよ。多分死んじゃうから」
珍しく闇と光の両方を持っているらしいカータスが使おうとしたのを止めた。
闇と光は反発が強すぎて人間には扱えない。
私は神様の庇護を受けているからできることで、もしただの人間ならば闇と光に飲まれて死んでいるだろう。
「あ、あぁ…」
「闇と光を同時に使うと新しい属性になる。それが無。使ったら最後、自分が消える。何もかも無かったことにしてね」
「な、何もかも無かったこと、ですか?」
「そ。存在が消えるの。今までの積み重ねが全て無くなるから、オススメしないな」
ルークが「怖ぇ…」と呟いた。
魔力とは恐ろしいものなのだ。
私はニッコリと笑ってカータスの腕から手を放した。
「じゃ、ハルト!案内よろしくね」
私がそう言うと、ハルトは茫然とするのを止め、慌てて私の前に出た。
レイ=シャルディン街はあまり来ない場所だ。
何故ならここは学生や多少金持ちの商人や貴族の訪れる場所で、私たちの孤児院ではここで買えるものなんてないからだ。
ただし、ギルドもこの街の中にあるので全く来たことがないというわけではない。
それに、確か大人たちはこの街に住んでるわけだし、アンナやソラの職場もこの街にある。
…だから、隣で案内してくれるハルトには悪いが、分かっているのである。
優しい姉なので何も言わないけどね。
ハルトの興味は本みたいで、稀にある古本屋に立ち寄ったりした。
面白い本があると買うので、興味のなさそうなルークやリナがつまらなさそうにしていた。
「それで、あっちには…」
「シスター!」
背中に主な衝撃を喰らい、私は倒れた。
「…アンナ…」
「もう、シスターってば持ちこたえてよね。まるで私が重いみたいでしょ?」
「あのね、ぶつかってきてそれ言うか?」
「だって、見つけたから」
私はため息を堪えて立ち上がった。
…何だろう、最近の若者は背後から人を押し倒すのが挨拶だとでも思ってるんだろうか?
私はアンナに引っ張られ、アンナと顔を寄せ合った。
「ねぇ、この人たち何?」
「学園に通ってるんだけどね、その学園の生徒さんたち。あ、孤児院のことは黙っててね」
「ふーん…分かった。ね、院長とはどうなってるの?」
「あー…」
私とアンナがこそこそと喋っているのが気になったらしく、ハルトたちは聞き耳を立てていた。
アンナとの話を止め、ハルトたちに向き直る。
「この子、妹みたいに思ってる子なんだ。ほらアンナ、挨拶して」
「はーい、こんにちは。シスターのことよろしくね」
「…アンナ」
「だってー。シスターお友達少ないじゃん」
「…」
アンナを半眼で見てしまったのは仕方ないことだろう。
友達が少ないのは事実だが。
ハルトたちも軽く頭を下げた。
私はまた後でアンナの住む花屋に行くことを約束して、ハルトたちとの街探索を再開させた。




