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最強な賢者様と私の話  作者: 天城 在禾
学園、もしくは再会
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私が通う話、場所は学園 パート⑪

 



正直、このまま襲ってもいいかと思った。


寝ているフリをしていると、キリヤの腹に回した腕にキリヤの手が添えられ、こちらに体を預けてくる。

既にそれだけでも襲いたくなるのだが、理性を総動員して抑える。

その後の、キリヤの独り言。

今が夜で、月光が俺の顔を陰にしていてよかったと心底思った。


「…私が一番気に食わないのはね、ヴェルトが嫌な思いすることだから…ヴェルト、今は幸せ?それだけ長く生きてると、大切な人だってもう…それに、周りは酷い言葉を投げつけてくるでしょ?…本当にヴェルトを助けるのは私なんかで良かったのかな…」


そう言うと、キリヤは体の向きを変え、こちらを向いた。

赤くなっている顔が見えてないことを祈った。

そして、キリヤはこちらに体を預けて眠ってしまった。


「……はぁ。頼む。これ以上喜ばせないでくれ…それに、キリヤ以外には助けて貰おうと思わねぇよ」


学園でカンニング騒ぎがあった時、キリヤのところへ行けば完全にキレていた。

もっと寂しそうな顔をしているものだと思えば、本気で怒っているんだから、対応に少し困る。

それからあの発言。

キリヤがキレていたのは、俺のためだった。

あれほど嬉しかった時はない。

偽善者っぽいが、キリヤは本気で、賢者様ではなく俺を想ってキレていた。

どうしろと?

脈アリだと思ってもいいんだよな?


「……二十歳までって決めてたが…我慢は体に毒だよなぁ?」


なぁ、俺の唯一の人。






それから一週間。

そろそろ調査が終わったことだろうと私たちは学園を訪れていた。

学園長室へ行くと、そこには学園長以外にサイアス先生、トーマ、他に何度か見たことのある先生方が二人。

トーマはあれから学園に残り、学園の先生の調査をしていた。

ミーナ先生は洗脳の能力を申請していなかったので、そういった先生が他にもいないかトーマは調べていた。

トーマはヴェルトを見ると直ぐにヴェルトの背後に控えた。

うん、素早いな!!


「おはようございます。学園長、先生方」

「おはようございますのう、キリヤさん、賢者様。先に謝罪をさせて貰ってもよいかのぅ…不快な思いをさせて、本当に申し訳なかった…」

「…謝罪は受けましょう」

「すまないのう…ミーナ教諭じゃが解雇と同時に牢獄へ送られた。洗脳を使って学園の物を売ったり犯罪に手を染めていたらしいんじゃ。また、洗脳能力を申請していないという罪もある」


学園を卒業した生徒は能力の申請が義務づけられている。

新たに能力が発見されればそれも国へ報告しければならない。

…当然私もヴェルトもトーマもそんなことしないが。


「それと調査の方じゃが筆跡鑑定の結果キリヤさんの前席の生徒の物だと分かった。彼女は本当にカンニングをするつもりで持ってきていたらしいのじゃが、どうやら落としてしまったようじゃのぅ」

「…え、あの子本当にカンニングするために持ってきてたの…?あの程度の問題で!?」


私は呆れてしまったが、先生たちの苦笑いでどうやらあの問題が相当難しいんだと気づいた。

私は顔をひきつらせた。

…でもあの問題、私が12歳でトーマに教えられたやつなんだけど。

「この程度の基礎中の基礎が出来ないなんて、貴方の頭はどうなってるんですか?」みたいなことを言われた気がする。

…言っておくがあれは挑発で、私は勉強という単語がいやだったからやらなかっただけである。

曾々祖父母からの知識は神様並みなのだ。


「…その生徒の処分じゃが、キリヤさんに決めて貰ってもいいかのう?」

「嫌です。私にそんな権利はないから」

「というわけじゃ。やはりお前たちが決めるしかないじゃろう」


学園長は私の答えが分かりきっていたらしく先生方に直ぐに言った。

先生方は戸惑っていたが、サイアス先生は「分かりました」と言って二人の先生と話始めた。


「…で?この事はどうすんだよ。大々的に集会でも開いて貰わねえとなぁ。俺は納得出来ねえぞ」

「賢者様の言う通りじゃの。明日、昼食時に集会を開こう」

「分かった。俺も話したいことがあるしな」

「…賢者様も話されることがあるのかのぅ?」

「まぁな」


ニヤリと、ヴェルトは悪人顔負けの顔で答えた。

 

 


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