私が通う話、場所は学園
この章から主人公の恋愛も書きます。
もちろんお相手はあの方ですよね?
書いてて楽しいようななんというか…
恋愛系が苦手な方はすみません。
そこまで甘くするつもりはないんですが…
うざかったら言ってください。
甘さを控えめにします!
さて、あれから8年経ちました。
というわけで、18歳です。
「ヴェルト!!」
「…なんだよ。ここはガキの来る場所じゃねぇぞ」
で、私は今酒場に来ている。
というか、二階は宿になってるし女の人がいっばいいるから半分は娼館か?
その酒場でヴェルトは周りに女の人を5人ほど侍らせている。
女の人たちは私を見て鼻で笑った。
私はそれに対しては優しく笑いかけ、ヴェルトには冷たい視線を送ってやった。
「んなこと分かってるわ!!学園長が来てるんだけど!ちゃんと連絡してたって言うし…会うのが嫌だからって私に丸投げするの止めてよ!ほら、さっさと帰るよ」
「…知るか。俺は会わねえぞ」
「…ふーん?そうなんだ。分かった、ヴェルトには今後一生ご飯作ってあげないから」
私がそう言って出て行こうとすると、強い力で肩を引っ張られた。
「悪い、今日は帰るわ」
「えぇ、ヴェルト様ぁ」
「そんなぁ」
「あらあら」
「ふふ」
「またいらしてね」
ヴェルトの反応に私を睨む人や笑う人や様々な反応を見せた。
最後の人なんか私に向かって手を振ってたし。
ヴェルトは私の肩を掴んだまま、店を出た。
「また特別講師しませんかってお誘い?」
「まぁな…」
「やればいいのに。時給銀貨一枚とかめっちゃいいのに…」
「…」
ヴェルトは私の言葉にふいっと顔を背けた。
明らかに不機嫌そうである。
…お前は子供か!!
「いんちょー先生ー」
「おかえりなさい!」
「いんちょーせんせ、お客さん!」
「あー、はいはい」
孤児院では50人ほどに増えた子供たちが私とヴェルトを迎えてくれた。
ヴェルトは寄ってきて抱っこやおんぶをせがむ子供たちの頭を撫で、応接室に入って行った。
「シスター!」
「おかえりなさい!」
「いんちょー捕まえた?」
ヴェルトの後ろから入ってきた私に他の子供たちが寄ってくる。
私は苦笑いして子供たちの頭を撫でる。
「まぁね。私はお茶を用意するから、今日の当番は手伝って」
「「はぁーい!」」
私は応接室へ持って行くお茶を用意するために食堂へ向かった。
あれから八年経ち、「一生ここでお世話になろうぜ!」と言っていた大人たちはみんな結婚した。
ほとんどがギルド関係者と結婚し、王都に住んでいる。
はじめにいた子供たちもそれぞれ職場を見つけたり働いたりしていて、ソラは王都の料理屋で料理人見習いをして、アンナは花屋の跡取りと婚約し、移り住んでいる。
屋敷で働いているグループでは、ミゼンとメアリアが結婚した。
ミゼンは持ち前の運動神経の良さを発揮し、マナーやダンスを完璧にしてみせた。
…ただ、発言が天然だったり、言葉遣いが悪いので社交の場では喋らせない、とメアリアと私は決めている。
アルバをはじめとした他のメンバーもみんな結婚していて、幸せな生活を送っているらしい。
また、サーレスト家は両親が帰ってきて、家族仲良く暮らしているらしい。
たまに遊びにくるマリアナが教えてくれた。
元暗殺組織組の中には子供がいる者もいて、この孤児院に子供を預けていくやつらもいる。
おかげで、孤児院の子供たちの面倒を大人たちが見てくれるので私はとても助かっている。
え?トーマ?
あー…まぁ、結婚はしたけど、相変わらずって感じで、奥さんもこの孤児院で働いてくれている。
…奥さん良い人過ぎて感動したけどね。
お茶を届けた子供が、お盆を持って帰ってきた。
子供は私の服の裾を掴み、引っ張った。
「シスター」
「はいはい。なに?」
「いんちょー先生が酒ーって言ってた」
「…はぁ、分かった。お手伝いありがとう。飴あげるからまたお手伝いしてね」
「わぁーい!ありがとう!」
子供の口に飴玉を放り込み、私は水を持って応接室に向かった。
子供はお手伝いをすると飴を貰えると分かっているので、みんな手伝いを率先してやる。
お手伝いの取り合いがあったので、仕方ないから当番制にしてみた。
私は応接室の扉をノックして、中に入った。
中にはふんぞり返ったヴェルトとお茶を飲みニコニコしている老人がいた。
その老人こそ、魔術学園の学園長である。
魔術師らしく三角帽とロープ、赤い石の入った杖を付き、白い髭が眩しいお爺さんである。
「失礼します。こんにちは、学園長先生」
「急にお邪魔して申し訳ないのぅ」
「いえ、私に何の用でしょう?ヴェルト、ほらお水。あと酔い止めの薬ね」
「…悪い」
ヴェルトは二日酔いで体調が悪かったからふんぞり返っていたらしく、私の差し出した薬と水を飲むと、ぐったりと私にもたれ掛かってきた。
そんなヴェルトを放っておいて、学園長に向き直る。
「ほう、ほう。賢者様はシスターを大変大切に思っているようですのう」
「10年も一緒にいれば情の一つでも湧きます。それで?私に何の用ですか?」
「まあまあ、そう急がなくてもいいと思いますがのぅ」
「……ハッキリ言いましょう、嫌です!」
「…まだ何も話してないんじゃが…」
学園長は困ったように眉を下げた。
一見穏やかそうに見える彼だが、先代から受け継いだ学園長の座を何度も奪われそうになりながらも涼しい顔で乗り越えてきて、あまつさえ政敵さえも潰したという、能力の高い人なのだ。
困ったように見せているが、彼はさぞかし機嫌が良いのだろう。
「何か嫌な予感がするので、話を聞くまでもないですね!嫌です!」
「…とは言われましてものぅ。もう遅いのじゃが…」
学園長はそう言いながら私に一枚の紙を差し出した。
私はそれを恐る恐る見た。
そこには、以下のようなことが書かれていた。
『サーレスト領孤児院、シスター・キリヤ
魔術学園への転入を命ずる。
アルテルリア王国国王、レオナルド=フォン=アルテルリア』
そして、少し下の方に、
『ごめんなさい』
と書かれていた。
その日、応接室から学園長とヴェルトが出てきたのを見た者はいない…




