私が働く話、それから新たな生活 パート③
私たちが孤児院を始めて数ヶ月。
門の前に赤ちゃんが三人、自力で来たのが二人、親が預けに来たのが四人。
合計で九人。
正直ビックリした。
まだ数ヶ月だ。半年も経ってない。
なのに九人…
大人たちが相手をしたり勉強を教えてやったりするのはいいが、赤ちゃんは無理。
大人たちにそんなこと期待してはいけない。
…ヴェルトもな!
仕方ないから大人に教えてつつ赤ちゃんの世話は殆ど私がやっている。
自力で来た子供の1人…ソラは私より一つ年下の9歳だが、料理が出来るとのことなので料理は任せた。
それに、子供たちには内職を覚えて貰うことにした。
簡単なアクセサリーや籠を作り、それを商業ギルドに許可を得て売る。
勿論売るのも子供たちだ。
最初は大人と一緒に、それから段々子供たちだけで。
私は彼らから「シスター」と呼ばれることになった。
…うーん、まぁ孤児院だからシスターなのは分かるけど、キリスト教じゃないぞ?
ヴェルトは「院長先生」、他は「先生」、らしい。
「いんちょーせんせー」
「シスター、いんちょーせんせーがまた居なくなったー」
ヴェルトは最近、酒場によく出入りするようになった。
王都に住む大人組たちの様子を見に行ったり、情報収集をしているらしい。
でも、よく香水の匂いとか白粉の匂いをさせて帰ってくるので、そう言った話に詳しい子供の1人が「いんちょー先生は大人の遊びをしてるんだ」と他の子に話し、女の子たちから反感を買っているらしい。
「えー?ヴェルトはお仕事じゃない?」
「違うよー!きっと大人の遊びしてるんだよ!!」
「…アンナ、ヴェルトが泣いちゃうから止めてあげて」
「えー!!でもいんちょー先生から甘い匂いしてるよ!」
「いや、そりゃ酒場行けば匂いくらい…」
「いんちょー先生にはシスターがいるのに…」
特に、女の子たちはヴェルトと私が付き合うんだか結婚するんだかと思っているらしく、仕切りに私のために怒ってくれるのだ。
…ヴェルトは大人だから10歳のガキに興味はないと思うよ。
「シスター!ここはハッキリと言ったほうが!」
「そうだよ!」
「…落ち着こう。もしヴェルトが私のこと好きなら犯罪だから。というか年離れ過ぎてて洒落にならないから」
「だいじょーぶ!190歳差なんて気にしたらダメだよ!」
「…うん、そこで覗いてる大人組!頷いてんじゃねーぞ!」
廊下から私たちを見ていた大人組に叫んだら大人組は逃げて行った。
「シスター、先生たちは何で逃げたのー?」
「私が怖いからじゃない?家事してるの私だしね」
「ふぅーん?あ!そうだ、お兄ちゃんたちは次は何時来るのー?」
お兄ちゃんたちとはメアリアの屋敷で働くフィルマたちのことだ。
メアリアも遊びに来たりするので、子供たちはメアリアたちが大好きだ。
メアリアの妹、マリアナも来る。
同い年の子供というのが珍しいのか、私によく話し掛けてくる。
…まぁ、こう、高飛車な感じで面白い。
それに、めったに食べられないお菓子が貰えるというのもある。
…こっちの世界のお菓子はあんまり美味しくないんだよね。
砂糖とか少ないっていうのもあるんだろうけど。
一度メアリアにケーキを見せて貰ったけど、生クリームとか無いし、本当にパウンドケーキとかだけ。
…それもあんまりおいしくなかったけど。
「お兄ちゃんたち?そうだなぁ…早くて来月かな?」
「そっかぁ…」
寂しそうにするアンナの頭を撫でた。
「アンナたちが私のお手伝いを頑張ると早く来てくれるかもよ?」
「本当!?」
「うん」
「お手伝い、頑張る!」
よしよし、私が転移陣であいつらを連れてきてやろう。




