私が働く話、それから新たな生活
孤児院が建った。
そう連絡が来たのはメアリアとの契約から4ヶ月。
本来なら半年は掛かるところをメアリアの人徳で早く済ませたらしい。
父親の代わりに領地を統治しているのはメアリアだ。
だから土地もあんなに早く貰えたんだけど。
その領地で、メアリアは慕われているらしい。
何度か建設現場にメアリアと行ったところ、食べ物や装飾品を貰っていた。
オマケで私にまでくれるし。
メアリアのところで働くことになったのはミゼン、ノーヴェ改めパトリス、ディス改めフィルマ、スーエ改めシェル、スートレ改めジョン、スーフォ改めゼクス、アルバ改めセロンの7人。
ミゼンは自分の名前を覚えてないので名前はそのままになっている。
彼らは住み込みで雇って貰っている。
子供が多いのはなるべく良い職に就いて貰いたかったから。
孤児院経営は彼らの給料を使うので、なるべく良い職に就いて、孤児院の子供を養って貰わなければならない。
私は当然、孤児院の経営を手伝わないといけない。
家事は相変わらず私の仕事だ。
…トーマは書類とか経営の方は出来るのだが家事は出来ないことが判明した。
お前ら少しは頑張れよ!
その他の大人は皆ギルドに入った。
ギルドとは所謂何でも屋。
依頼を受けそれをこなすというシステムで、魔物の討伐から調理場の皿洗いまで様々な仕事を請け負う。
ついでに私も入れて貰った。
本当は15歳からなんだが私も稼ぎたいなーと思い無理を聞いて貰った。
ヴェルトは王に会いに行った。
メアリアも同伴し、今後の話をしてきたんだとか。
ヴェルトは何も話してはくれなかったけど、メアリアに聞いたところ1ヶ月に一度王様に会って相談に乗る約束になったらしい。
子育てとかも大変なんだってさ。
それと、メアリアにアルベルト様の様子をそれとなく聞いた。
忘れてる人も多いだろう、オルディーティ=アルベルト。
私の住んでた村の領主様でハルトを養子として引き取ってくださった方だ。
アルベルト様は村を焼かれた後、奴隷として売られた村人たちを探して保護してくれてるらしい。
この三年で半数は取り戻したという話だから、アルベルト様の能力の高さが伺える。
ハルトは神童として有名になったらしい。
…元気でいてくれればそれでいい。
お父さんとお母さんらしき人の話は出てこなかったからまだ見つかってないのか…
「というわけで、ここを出て孤児院に移ります!」
食堂に集まった大人に私はそう言った。
孤児院が建ったことを説明し、この基地を捨てることを説明する。
ヴェルトの力で元の山に戻して貰う。
…ヴェルト君、それ何てチートですか?
大人の中には王都に部屋を借りてる人もいるから、現在この基地に居るのは私とヴェルトとトーマを除いて5人。
彼らもギルドに登録はしてあるが、仕事を終えるとこの基地に必ず帰ってくる。
「もう完成したのかー」
「早いなぁ…」
「ここの設備はヴェルトが破壊するんだっけ?」
「違ぇよ。山に戻すんだ」
「すげぇ!そんなこと出来るのかよ」
ワイワイ楽しそうに騒ぐ彼らをヴェルトも楽しそうに見ている。
トーマは相変わらずヴェルトの後ろに控えている。
…ヴェルトのこと熱い目で見過ぎてトーマ気持ち悪い…
「何ですか?」
「いや、気持ち悪いと思って」
「燃え滓にして差し上げましょうか?」
「ヴェルトが泣くからやめた方がいいよ」
「…」
私の視線に気付いたトーマが手に炎を持って挑発してきたが適当に流しておいた。
ヴェルトはトーマをあまり好きではないようだが、私は結構彼が好きだったりする。
向こうは私が嫌いみたいだけど。
「…でも、なんか寂しいなぁ」
「そうだなぁ…」
「スーウ、じゃねえキリヤが来てから騒がしくなってあれから毎日楽しかったもんなぁ」
しみじみとし始めた彼らはしきりに食堂のテーブルをなで始めた。
「…食堂のテーブルは持ってくからそのつもりで」
「え、マジか?じゃあ俺らのベッド撫でてこよう!」
「それも持ってくけど」
「…じゃあ箪笥!」
「それも」
「…」
何言ってんだ。使える家具は持ってくに決まってんだろ。
「じ、じゃあ床撫でとこうぜ!」
「そ、それがいい!」
「あ、壁!壁!!」
彼らは床に這いつくばって頬擦りをした。
壁にすがりついてるやつもいる。
「…そろそろ行くよー」
私の言葉に彼らは慌てて立ち上がり、私に着いて会議室へ向かった。
私は巨大な転移陣の上に乗り、全員が乗ったのを確認して転移陣を起動させた。
着いた先はメアリアの屋敷の裏。
ここには転移陣があり、行き来が出来るようにしてある。
私たちが着くことを予想して、転移陣の前にはメアリアとミゼンたちがいた。
「遅かったわね。ちゃんと全員いる?」
「おはようございます、メアリア様。ちゃんと居ますよ。孤児院が完成したんですよね。一緒に行きますか?」
「ええ、元からそのつもりよ。わたくし主催の孤児院なんだから」
孤児院建設にはメアリアからの資金援助があった。
それに伴い、メアリアが孤児院の計画の発案者としたのだ。
ヴェルトはこの孤児院の責任者ではあるが、ヴェルト1人の孤児院ではないことになっている。
メアリアが話しているからか、スーフォ…ゼクスたちが私たちと話したそうにしているのが見えた。
悪いが、もう少しそのままで居てくれ。
私はメアリアと孤児院について話しながら、孤児院に向かう為の馬車まで向かった。
孤児院へはメアリアとアルバ…セロンとヴェルト、私が乗る。
その他は走ってくる。
…いや、本当は私たちは走ったほうが早いんだよね。
そうして、私たちは孤児院へ向かった。




