私が企む話
私が目を覚ますと、視界は全て顔で埋め尽くされていた。
お、おう。怖いぜ。
全て心配している顔で、私はそれを見て泣きたくなった。
大人たちも子供たちも、みんな私を心配して、側に居てくれている。
「…おはよう」
私が笑って挨拶すると、スーフォとスーエが泣き出し、大人たちは頭を撫でたり叩いたり手を握られたり、ディスなんかは頬を引っ張ってきた。
「いひゃいいひゃい」
「うるせぇ!このバカ!アホ!心配掛けやがって!」
「…ごめんなひゃい」
「3日も目を覚まさなかったんだぞ!このバカ!スーウなんてバカに改名しろ!」
「え、それはヤダ!ごめんね、ディス!」
起き上がってディスに抱き付くと、抱きしめ返されたかと思ったら頭突きされた。
「いったぁ…」
「これで勘弁しただけマシだと思え!」
頭を抱えて悶えていると、みんなが心配して撫でてくれた。
「スーウ、まだ寝てなくて平気か?」
「おー、腫れちまってるな」
「水飲む?ボク持ってくるよ?」
「料理は…すまん、俺らには出来んわ」
「スーウが居ない日と寝てた日は地獄のような日々だったよなぁ」
「…お前ら、通してくれ」
みんなの壁の後ろから、ミゼンの声がした。
みんなの壁が割れると、その間をミゼンとヴェルトがやってきた。
「…起きたのか」
「うん。…みんな、心配掛けてごめんなさい。…ありがとう。」
私の言葉に、みんなは安心したように笑った。
「…すまない、俺とヴェルトとスーウだけにしてくれるか?」
ミゼンは本当に申し訳なさそうに言い、みんなは素直に部屋を出て行った。
私が寝かされていたのは私自身のベッドで、見慣れた子供部屋だった。
ミゼンとヴェルトは隣のベッドに座り、私と対面した。
「…まず、ヘルトモルテで何をしていたか話してくれ」
「…うん。あの山にいた闇ギルドを壊滅させてきた」
「…は?」
「あのギルドのマスター、ディグザムは私の仇?っていうの?そんなんで、前々から復讐するとは言ってたんだ」
「…1人でか?」
「まぁ、ね。あ、でも、殺してはない!。そのとき魔術師に追いかけられて泥だらけになったんだけど。というか傷の半分はその時に出来た傷だったりするんだけど…」
驚きで目を見開いていたヴェルトとミゼンは呆れたように溜め息を吐いた。
「…どうやって軍を呼んだんだ?」
「狼煙を上げて。1時間も待たずに来るから遠くに逃げれなくて…」
「…テメェ本当にガキかよ」
「酷い!見た目ガキでしょ!」
「見た目はな!」
なんだと!?精神は老いてるとでも言いたいのか!?
精神が老いてるのはミゼンで私じゃないぞ。
「…はぁ。まぁ、命に別状がなく良かった。頼むから1人で危険なことはしないでくれ。心配するのは俺だけじゃないんだぞ」
「…はい」
ミゼンは私の頭を撫で、部屋を出て行った。
…ミゼンは私がヴェルトに用があることが分かっていたらしい。
ヴェルトは顔を両手で覆って呆れかえっていた。
「…ヴェルト、話があるの」
「…復讐は終わったんじゃなかったのかよ」
「終わったよ。今からの話はね…ヴェルトと私についての話」
ヴェルトは両手から顔を上げ、不思議そうな顔で私を見た。
何から話そう。
私が転生したこと?
でも、そんなことヴェルトに話したってしょうがないし。
うー、あーと唸りつつ悩んでいると、ヴェルトが頭を撫でてきた。
「…すまんな、俺はロリコンじゃないんだ」
「…うるせー!誰がヴェルトに告白するって言ったよ!」
勘違いを盛大に披露してくれたヴェルトの足を蹴った。
何がウザいってその生暖かい目!
子供は年上の人に最初は恋しちゃうよね、みたいな目を止めろ!
「ってぇ!テメェと俺の話なんて言うからだろ!」
「だからってこの流れで告白するか!?」
「いや、ミゼンも居なくなってるしよ」
「…はぁ。もういいや。単刀直入に言うよ」
私は意を決して打ち明けた。
「…実はね、私がヴェルトの探してる人なの」
「…は?」
「だから!ヴェルトを助ける人は私なの!…最初に会った時に気付いてたんだけど、何となく言い辛くて」
「…嘘だろ。おいおい、いくら振られたからって嘘は」
「嘘じゃねー!だったら神様(笑)に聞け!」
「…ちょっと待て」
ヴェルトは本当に聞くのか、目を瞑って瞑想状態に入った。




