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最強な賢者様と私の話  作者: 天城 在禾
復讐、もしくは出会い
23/134

私が見つける話 パート③

 

 


自称ピーターが寝たのを確認し、私はランプの炎を消した。

この様子なら朝まで起きないだろう。

ピーターには申し訳なかったが、膝の代わりに布を丸めた物を枕にして私は抜けた。

膝枕をしたのはピーターの意識が浮上するのが分かったからで、意識のない今は正直どうでもいいことだ。

私は病人食を作るための材料とみんなの朝食のための材料を探した。

あー、材料が無くなってきた。

早く買い出しに行かないとな。

ガサガサしていると食堂の扉が開き、ミゼンが入ってきた。


「…スーウ」

「うん?何ミゼン。喉でも渇いた?」

「…いいや。あの男の容態はどうだ」

「へーき。それにこの人死なないし」

「…死なない?」


魔力の量が多いモノは総じて長命だし、怪我も病も掛かりにくく治りやすい。

当然ピーターも当てはまる。

それどころかピーターの魔力量は神様(笑)にも匹敵するものだから、死なないと言っても過言じゃないのだ。


「…男はまだ起きないか?」

「さっき起きて水飲んだから平気。名前はピーターさんらしいよ」

「ピーターか…」

「…ミゼン、本気にしないで。どう考えても偽名だから」

「だがピーターという人名は存在するぞ」

「ピーターだったら引くよ」


ミゼンは暗殺だけで生きてきたからたまに世間に疎いところがある。

ノーヴェ曰く、そこがいいんだそうだ。

あいつらアホだから。


「熱は下がりそうか?」

「もちろん」


この世界は医術が発達していない。

地球に比べ薬草や薬は発達しているものの、高熱で命を落とすことは少なくない。

ミゼンは私の答えを聞いて安心していた。

スーフォとスーエを見つけ、取れ掛かっていた布団をかけ直してあげるあたり、ミゼンがみんなのことを大切な仲間だと思っているのは間違いないのだが…

口下手で無表情、行動にも表せないミゼンは未だディスたちに距離を置かれている。

それに気づいているミゼンからは偶に哀愁が漂っている。

ミゼン以外もに大人みんなだが。

私が来たことで少しだけ仲が良くなったやつらもいるが、お互いうじうじして…


「…気持ち悪い」

「大丈夫か?」

「ミゼンたちが気持ち悪いってことだから大丈夫」

「…」


子供がうじうじしているならまだ可愛げがあって許せるが、ミゼンたちを見ていると本気でイラついてくるのだ。


それからミゼンは哀愁を漂わせて食堂を出て行き、私はスーエとスーフォの間に潜って寝た。







朝、先に起きたスーフォとスーエに起こされ、私は朝食を作った。

その朝食を大人たちが食べ終わるころにピーターは起きた。

ぼーっとしているピーターを椅子に座らせ、スープを出す。

大人たちは遠巻きにピーターを観察し、子供は扉からこっそり覗いていた。


「…あー、なんだ。そんなに観察されても困る。別にお前らを害するつもりはねぇよ」


ガシガシと頭を掻いてピーターは周りを見渡した。

子供たちは視線が合うと逃げて行った。

面倒臭そうにピーターは溜め息を吐くとスープを口にした。

私もスープを持ってきて、ピーターの目の前に座った。


「…テメェが昨日のガキか。確か…」

「スーウ。熱はどうですか?」

「まだ少しあるな。まぁ大したことはねえ。…てーか、テメェ女だったのか!」


気付かれてはいないだろうと思ったが、ピーターは驚いていた。


「はい。若い女の子の膝枕。喜んでくださいね」

「アホか。それで喜んだら俺は変態だ」

「よかった。喜ばれたら席変えようと思ったんです」


苦い顔をしたピーターに私はスープを食べながら話かけた。


「名前は本当にピーターさん?別に偽名でもいいんですけど、ピーターはやめたほうがいいと思いますよ。今後それで呼ばれることになるので」

「そりゃ心配どうも。だが俺はもう出て行くつもりなんだ」

「えー。やめてください。迷惑です」

「悪いが人探しの途中でな。俺にはこんな首輪も腕輪も通用しない」


当然だろう。

ピーターは神様(笑)並みなのだ。

彼が本気を出せば私達だって一瞬で灰になる。


「…やばい、どうしよう。やっぱりピーターはやめましょう。ちょっと笑えてきちゃって」

「テメェ失礼なやつだな…」

「だってピーター最強とか…ダメだ。なんか笑える」


笑う私の頭を彼はペシリと叩いた。


「痛いですよ。あ、逃げないでくださいよ?逃げたら私が殺されるんですから」

「知るか。テメェが人のこと笑うからだろ」

「やだなぁ。あなたはピーターさんじゃないんだから、あなたのことじゃないですよ」

「…どうして確信をもってピーターじゃないと言い切れる」


声を低くした彼によって、部屋の空気が冷たくなる。

大人たちは臨戦体勢になるが、私は相変わらずスープを食べていた。


「名前を教える時、躊躇しませんでしたよね?子供でも、敵か味方か分からないのにあっさり名前を教えるなんて、相当お人好しか馬鹿だけですよ」


私が答えると、彼は殺気を仕舞い、スープを食べるのを再開した。


「…テメェ本当にガキか?成長止まってるとかねぇよな?」

「…これで成長止まってたら泣きますよ」

「…そうだな」


彼は残念そうな顔をした。

…どうやら、彼は私を探しているらしい。



 

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