私が見つける話 パート②
初めてキリヤ以外の人の視点が入ります。
深夜、暗くなった食堂にランプだけを置いて、私は男の人の世話をしていた。
彼の周りにはスーフォとスーエが寝ている。
スーエは14歳ほどの少年で、今晩の世話係に立候補した子である。
2人は疲れて寝てしまったので、布団を掛けて木箱にもたれかかるように男の人の側に寝かせてある。
「…熱が上がってきた。熱冷ましの薬あったっけ?」
調理場を探り、薬を探したが見つからなかった。
今採りに行くわけにもいかないし、冷たい水でひたすら頭を冷やすしかないだろう。
水を入れたたらいと水差しを側に置き、たらいには綺麗な布を入れる。
男の人の頭を持ち上げ太股の上に乗せ、水を含ませた布を額に乗せた。
男の人は30代前半に見える。
それくらいの歳で成長が止まったのだろうか?
それとも、この人は未だ自分が不老長寿と知らないかもしれない。
男の人は赤み掛かった銀髪で、整った顔をしている。
けど、なんだろう…
そう、おっさんっぽい。
…やー、寝てるのに何言ってんだって話ですよね。
男が最初に感じたのは額に感じる冷たい物。
視界は暗いので、自分が目を閉じていることは分かった。
頭は何か柔らかいものの上に乗せられ、横たえられている場所は固い。
近くに人の気配は3つだが、離れた場所に13の気配を感じる。
全て、一般人の気配ではない。
「…おはようございます?あれ、今晩はかな?」
頭上から声がした。
高い子供の声だ。
目を開けることは億劫だったが、ゆるゆると目を開ける。
視界に入ったのは黒い絹糸で、それは直ぐに避けられ子供の顔が見えた。
一般人の気配ではないことはわかっていたが、予想以上に優秀な暗殺者らしい。
「大丈夫ですか?水飲みます?」
「…あぁ」
掠れた声が出た。
子供は水差しを口元に持ってきて、少しずつ傾ける。
水を飲み、また目を閉じた。
「おじさん、名前は?」
「…テメェから名乗れ」
「うーん…2つあるんですけど、どっちがいいですか?」
「知るか」
「えー…じゃあ、私はスーウって呼んで下さい。それで、おじさんの名前は?」
「ピーター」
「…そうですか、ピーターさん。楽しい名前ですね」
「そうだろう。俺は眠い。寝かせろ」
男はそう言って子供のことを意識から消した。
混乱しているが、記憶を失う前のことを思い出そう。
確か、アルテルリアの貴族の1人に呼び出され、王の相談役になってくれと頼まれた。
そんな面倒なことはしたくなかったし、何より、男は人を探していた。
貴族はその日、贅を尽くしたもてなしをしてくれ、泊めてくれるという。
昼間からベッドに入って眠りこけていると、夕方ごろか、侵入者があり面倒だからと寝ていたら…
気づけば、この場所にいる。
首に違和感を感じたが、多分服従の首輪という魔具がはめられている。
魔力封じの腕輪も手首にあることから、何者かに捕らわれているらしい。
せめて柔らかいベッドに捕らえて欲しかった。
そういえば、枕だけ異様に柔らかく気持ちいい物だが…
「わっ。ピーターさん、くすぐったいんですけど」
手を伸ばして触れてみれば、どうやら子供の脚だったらしい。
なるほど、それなら柔らかいのも頷ける話だ。
納得していると額の冷たい物がどけられ、また冷たい物が乗せられた。
「…なんだ、それは」
「何って。ピーターさん熱出てるんですよ。だから氷代わりに水を含ませた布を乗せてるんです」
熱?
だからか、あの貴族の家にいた時から動くことが億劫だと思っていたが、熱だったのか。
「…氷は無いのか」
「ありません。あ、でも、頂上の泉は冬になると氷が出来るから…朝になったら取ってきますよ」
だから今は寝ていて下さい、と子供は言った。
魔術を使えば簡単なんだが、この子供からは魔力のまの字も感じられない。
男ができれば早いのだが、今は熱で魔力のコントロールが上手くできないだろうから、男は大人しく意識を闇に沈めた。
スーエは中国語でスーが10でエが2です。
男、自称ピーターさん(笑)
キリヤの太もも触るとか変態ですよね。




